
人を好きになるのは
なんでこんなに
■酒飲みの父、貧しい家…。不幸を仕方ないとあきらめ過ごす高校生の敦子は、ある日自分とは真逆の世界に済む大金持ちの男子たちに出会い、その運命を大きく変えていくことになる。乃木グループの跡取り息子・至が失踪し、パニックにならないようにと代役として白羽の矢がたったのが敦子だった。男装すると至に瓜二つである彼女は、遼によって至の身代わりに仕立て上げられ、豪邸での暮らしをはじめることになるのだが…
BLで人気の山中ヒコ先生のARIA連載作品でございます。一応少女漫画ということなのですが、テイストはBLに近いかも。ヒロインは、貧乏な家に生まれ育った敦子という女子高生。働かずに酒ばかり飲んでいる父のせいで、女子高生らしい生活は全く送れず、学校でもその存在を疎まれていました。あの手この手で日銭を稼ぐのが精一杯…ところがとある出会いが、そんな彼女の人生を一変させることになります。コンビニで出くわした、同い年くらいの少年3人組。どうやら彼らは、自分達とは住む世界が違う、御曹司たちらしい。関わるのもこれが最初で最後…と思っていたら、そのうちの一人で一番の御曹司が失踪。顔立ちがソックリということで、彼が見つかるまでの間、敦子が男装して身代わりとなって欲しいというのだ。普通であれば引き受けない。けれども家を飛び出してしまい、そのタイミングで報酬100万円と聞かされれば、引き受けないわけにはいかない。敦子の、身代わりとしての生活がはじまる…

男装しての赤ら顔はもうこれ山中ヒコ先生のBLのそれですよねっていうか。この顔好きなんですよ、はい。
現実ベースのストーリーかと思いきや、さすがARIA連載というところでしょうか、ガッツリ非日常を取り込んだストーリーとなっています。突然身代わりとして御曹司に…という急展開。しかも取り巻く人々の想いもまた複雑で、物語の彩りもどこか灰色(タイトルすごくしっくりきます)。読む人によっては序盤で振り落とされそうな感じすらありますが、BLベースでの山中ヒコ先生の作品て、基本こういうファンタジックな展開なので、既存ファンの方からすると安心の山中ヒコ節だと受け取れるかもしれません。借金を背負いお金持ちの家に…というのは「王子と小鳥」であったパターンですし、女装(こちらの場合男装ですが)してというのは、「丸角屋の嫁取り」であったパターン。
イケメン男子3人が登場するわけですが、一人は早々に失踪。あとの二人も一癖二癖あるキャラで、簡単に恋愛展開には至りません。そもそもヒロイン自身が人間不信であり、そのリハビリ的な部分が、序盤で大きなウェイトを占めることになります。髪の毛だけが取り柄であった彼女が、髪の毛を切り落とし全てを無にして再スタート。ありえない新生活ながら、今までに受けたことのない感謝の言葉や優しさに、少しだけ自分の居場所や安心感を見出していくその過程が、仄暗い物語の中に淡く優しい光を灯します。
結果的に全員男の子の格好していて、すごくBLっぽいのですが、じゃあ男装しなかったら少女漫画的に成り立つのかと言われるとそれもまた微妙で。狙っているのか違うのか、ヒロインの女の子時が本当に色気がなく、逆に男装すると謎に色気アップ。山中ヒコ先生の作品に出てくる中性的な男の子って、妙に色っぽいというか、普通の女の子より女の子っぽい匂いを感じることがあるのですが、今回もそんなイメージ。簡単に言うなら、すごく…かわいいです。
【男性へのガイド】
→これは女性が…というか山中ヒコ先生ファンが…。無論男性は…BL基準で語るのでなく、少女マンガとして語るのであれば。
【感想まとめ】
→またすごくクセのあるお話ですな。山中先生の作品は好きなので色々読んでご紹介もしてきたのですが、これが一番クセあるというか、扱いに困るというか。私は続き読みますよ、もちろん。
■作者他作品レビュー
山中ヒコ「丸角屋の嫁とり」
山中ヒコ「森文大学男子寮物語」
好きになったのは、世界で一番優しくて残酷な人:山中ヒコ「エンドゲーム」
山中ヒコ「王子と小鳥」
作品DATA
■著者:山中ヒコ
■出版社:講談社
■レーベル:ARIA
■掲載誌:ARIA(連載中)
■既刊1巻
■価格:562円+税
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