
お姉ちゃんごめん
あたし
やりたいことがある
■4巻発売しました。
小学校6年生の千早は、モデルをしているお姉ちゃんが大好きで、お姉ちゃんが日本一になることが夢。そんな千早はある日、福井からやってきた転校生の新と仲良くなる。大人しくて無口、学校でも避けられ気味の彼だったが、意外な特技を持っていた。小倉百人一首競技かるた。ひまつぶしのトランプや、ボードゲームみたいなもの…かるたにそんなイメージを持っていた千早だったが、新のかるたを払うスピード、真剣さ、そして迫力に圧倒される。あっという間に夢中になった彼女は、競技かるたの道を歩み始めた
競技かるたに打ち込む少年少女を描いた、青春ストーリーです。新は各学年で全国優勝しているかるたのエリート。そんな彼と出会うことで、かるたの道を歩み始める千早。単純にかるたの魅力に惹かれ始めた千早ですが、そこで意外な才能を見せます。反応の早さ。それは全国一の腕をもつ新をも驚かせるほどでした。やがて千早は、メキメキ実力を上げていきます。

まぎれもなく"ゾーン"。やはりかるたはスポーツかと。
題材はかるたですが、青春スポーツマンガっていうジャンルが一番しっくり来る気が。ここから得られる感動や興奮は、まさにスポーツ漫画のソレ。かるたに傾ける情熱が、ストレートに伝わってきて、とにかくアツい。ここまで真っ直ぐに、打込むモノへの真剣さや情熱を描き出すのは、少女マンガというよりはむしろ少年マンガ的と言えるかもしれません。ただそれだけでなく、人の心の動きもしっかり描き出しているので、単調になることもありません。山手線の中で読んでいて、思わず泣きそうになったのは良い思い出です(笑)
作者さんの他作品のレビュー(→末次由紀「ハルコイ」)でも触れましたが、トレース発覚前後では作品の出来が雲泥の差。売れっ子だったとはいえ、なぜあそこまで講談社がサポートするのか不思議に思っていたのですが、結果的にそれが大正解。まさかここまでの作品を仕上げてくるとは…驚きです。
それまでの作品の印象としては、雰囲気として「優しさ」が感じられるのだけれど、軸がなく、なんとなくふわふわした感じでした。それが今作では、かるたとそれに懸ける熱情を軸に据えたことで、作品の印象もハッキリ。そこに本来持ちたる優しさがマッチして、結果的に少女マンガでありながら、少年マンガのような雰囲気を持つ作品が出来上がっているんじゃないのかな、と。また恋愛要素が邪魔しがちな少女マンガにおいて、その割合をかなり抑えているのも好印象。あくまでメインはかるただということですね。
【オトコ向け度:☆☆☆☆☆】
→少女マンガのエッセンスが苦手だと元も子もないワケですが、それがないのであればぜひ一度読んでいただきたい作品です。むしろノリは少年マンガ。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→ここまで真剣で、アツい作品はなかなかありません。かるたという企画ありきの話ではなく、ちゃんと物語として機能。ぜひ一読をお勧めします。
作品DATA
■著者:末次由紀
■出版社:講談社
■レーベル:コミックスビーラブ
■掲載誌:BE・LOVE(2008年第2号~連載中)
■既刊4巻