作品紹介はこちら→*新作レビュー* ろびこ「となりの怪物くん」
2巻レビュー→《気まぐれ続刊レビュー》ろびこ「となりの怪物くん」2巻
3巻レビュー→三者三様の考え方…女の子たちがとっても魅力的です《続刊レビュー》「となりの怪物くん」3巻
4巻レビュー→あさ子の可愛さに、目が離せない!《続刊レビュー》ろびこ「となりの怪物くん」4巻
5巻レビュー→あなたがわたしにくれたもの:ろびこ「となりの怪物くん」5巻
6巻レビュー→頑張る女の子は、かわいい:ろびこ「となりの怪物くん」6巻
7巻レビュー→それでも、人を求めてしまう:ろびこ「となりの怪物くん」7巻
ろびこ「となりの怪物くん」(8)
カチッとはまる
音がした。
■8巻発売しました。
高校2年に進級した水谷雫と吉田ハル。クラス替えで一人だけ隣のクラスになったハルは、なかなか馴染めず教室にも入れない。それでも雫の励ましもあって、徐々にクラスに溶け込むように。そんなハルと以前に比べ、通じ合うのを感じる雫だったが、意外な新入生の登場もあって、ついにヤマケンが…!?
~ヤマケンの見事なまでの当て馬としての働きっぷり~
8巻発売でございますよ。いきなり表紙に「え、誰?」ってな子がおりますが、その子については後で。まずは他でもない、ヤマケンの活躍について触れねばなるまい。初登場時から作者さんにまで「当て馬」よばわりされていた彼ですが、ついに当て馬としての仕事を全うしました(まるで死んだかのような物言い)。当て馬の生き様というのは、ヒロインに恋い焦がれてあれやこれやと献身的にサポートし、いざチャンスと告白するも、当たり前のように断られ、挙げ句それをきっかけにヒロインと相手役の仲が一層深まりゴールイン…という流れを辿るところにあります(穿った見方)。端的に言うと、告白した結果それがアシストになってしまうという流れが、大きなスパンで見た時にあるわけですが、今回のヤマケンはそれを非常に美しい形でなぞって行きました。

オレとつきあわねーか
水谷サン
このタイミングでの告白は、ヤマケンにとっても本意ではなかったような気もするのですが、勢いに任せて行ってしまうところがいかにもヤマケンっぽくて素敵。しかも「告白」と言っておきながら「好き」とは決して言わないその捻くれ方と無駄なプライドの高さがまた、実に彼らしいではないですか。「かわいい」とは言ってますが、あの言葉は雫に向けて放った言葉ではなく、ついつい漏れた独り言。無表情で冷静に見せつつの、余裕のなさが可愛かったです。普通であれば一度目の「ごめんなさい」で折れるところ。けれども今回は諦めずに頑張った。もうこれだけで本当に頑張ったな!と。
けれどもそこはかませ犬。この頑張りが丸々ライバルの頑張りへと変換されてしまうわけで…。その直後、ほんとうに直後にハルが動きます。この一拍も置かせない無駄のないエネルギー変換に、ヤマケンの噛ませ犬としてのポテンシャルの高さを感じたのでした。
~はじまりはいつもこの階段で~
というわけでハルも雫に改めて想いを伝えるわけですが、そのシチュエーションといい言葉といい、実に「となりの怪物くん」らしい場面で素敵でした。以降全編的にネタバレになるのですが、今回はある意味今までの集大成とも言える回でしたので、余すこと無くお伝えしたいな、と。
さて、今回も今回とて、ハルが想いを伝えたのは、帰り道の階段で。この階段は1巻の第1話から登場しているいわば本作の聖地みたいなもの。そして、二人が想いを相手に打ち明けるのは決まってこの場所だったりします。一番最初はハルから雫へ。

彼の涙に思わず心奪われ駆寄り抱きしめたと思ったら、「俺シズクが好きかも。性的な意味で。」こんな言葉での返し。どうにも噛み合いません。それでもハルと一緒に過ごしていくことで、雫もいつしかハルを想うように。この場所での2度目の告白は、雫からされたものでした。1度目は学校で、けれども結局「嘘」なんて言ってしまったあとの、ちゃんとした告白。
相手の気持ちは想像でしかなく、ぶつけるのは自分の想いのみ。最初のハルからの告白も、自分の気持ちだけが先行した想いの吐き出しでした。この告白は、ハルが「自分の好きとお前の好きは違う」と言い、結局白紙に戻ることになりました。「ならばちゃんとハルを好きにさせよう」と、新たな決意をする雫が、妙に清々しい表情をしていたのが、今となっては懐かしいですね。ここまでは、1巻に収録されていた出来事でした。そして時は流れ4巻。それまでも度々この階段で、二人の大切な会話が重ねられていましたが、改めて積み重ねた想いを、雫が再び伝えることになります。
「私の気持ちを伝えよう」勇気を出しての告白。もう間違えないようにと、届くようにと真っ直ぐ目を見据えて放った言葉は、嫉妬によって濁ったハルの心には届きませんでした。またしても噛み合ない。その時の状況を、雫はこんな風に語られています。

どうしてこんなに噛み合ない
多分何かがズレている
二人が真に結ばれるには、このズレの解消が必要でした。けれどもそのズレが何だかわからない。なんてったって、相手は怪物くんです。そもそも何を考えているのかもわかりません。そんな中、作中にて語られるようになったのは、ハルの出自や彼の過去。その中で度々登場する叔母の言葉に、ハルとの噛み合なさを解消させるためのヒントがありました。

あたたかさを知らない
「他人」は自分を傷つけるもので、「安心」はつねに不安がつきまとい、「あたたかい」という言葉は君のココロに冷たく響く。今のハルのことをそう言い表し、一方でこんな言葉も残していました。
この言葉は魔法となり、その後ハルの心の中に残り続けることになります。そしてそんなハルに対し、雫は3度目の告白を。その場所は、もちろんあの階段で。この時は答えを聞くこともなく、ただただ言葉として伝えただけ。けれどもその裏では、こんなことを思っていたのでした。

体温を分け合うように
彼に 伝えたい
この胸の高鳴りを
生まれた気持ちを
彼がくれたこのあたたかさを
この胸の高鳴りと熱こそが恋。はじめの頃のその想いとは、明らかに違う自分の中に渦巻く感情をもってして、やっと雫は自分の恋心を真の意味で自覚するのでした。さぁ、雫は答えを出した。ならばあとは、ハルのみです。そしてついに、ライバルの動きに焦ったとはいえ、それでも自分の意志で、自分の言葉で伝えたのです…

シズクといて
初めて俺は温かさを感じられるんだ
シズクが好きだ
俺と付き合ってください
ハルからの階段での告白は、実に第1話以来。度々好きだと伝えることはあったけれど、ここまでちゃんと伝えたのはきっと初めてでしょう。普段あれだけ暴れん坊で言葉使いも割と乱暴な彼が「付き合ってください」と丁寧語になっているところに、その本気度が現れているように想います(奇しくもヤマケンと同じような言葉なのですが、言い方が全然違いますよね)。そして何より、雫の「温かさを伝えたい」という想いが届いていたことが嬉しかった。そして、ハルもまた「好き」ということが何かわかったと話しています。このとき雫がまず想ったのは、嬉しいでも恥ずかしいでもなく「カチッとはまる音がした」ということ。これまで散々苦しんで来た「ズレ」が、ようやくなくなりました。これで晴れて恋人同士になった二人が見下ろすのは

祝福するように広がる満天の星空と夜景
ああこの場所、こんなにもキレイな景色が見渡せる場所だったのですね。いつも描かれるのは登り途中での見上げたショットか、見下ろしたとしても昼間。きっとこの日見た景色は、ずっと忘れることないんだろうなぁ。なんて、お互いのことばっかり見ていて、全く頭に入ってないかもしれませんけれど。告白したのは階段の一番下の場所だったので、その後登ってきてこの場所に腰掛けたってことなのですが、その間の二人の表情とか、会話とかどんな感じだったのかもうちょっと想像しただけでニヤニヤしてきます(笑)何はともあれ、数々の名シーンを生み出してくれたこの場所に感謝ですよっ!
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2巻レビュー→《気まぐれ続刊レビュー》ろびこ「となりの怪物くん」2巻
3巻レビュー→三者三様の考え方…女の子たちがとっても魅力的です《続刊レビュー》「となりの怪物くん」3巻
4巻レビュー→あさ子の可愛さに、目が離せない!《続刊レビュー》ろびこ「となりの怪物くん」4巻
5巻レビュー→あなたがわたしにくれたもの:ろびこ「となりの怪物くん」5巻
6巻レビュー→頑張る女の子は、かわいい:ろびこ「となりの怪物くん」6巻
7巻レビュー→それでも、人を求めてしまう:ろびこ「となりの怪物くん」7巻

カチッとはまる
音がした。
■8巻発売しました。
高校2年に進級した水谷雫と吉田ハル。クラス替えで一人だけ隣のクラスになったハルは、なかなか馴染めず教室にも入れない。それでも雫の励ましもあって、徐々にクラスに溶け込むように。そんなハルと以前に比べ、通じ合うのを感じる雫だったが、意外な新入生の登場もあって、ついにヤマケンが…!?
~ヤマケンの見事なまでの当て馬としての働きっぷり~
8巻発売でございますよ。いきなり表紙に「え、誰?」ってな子がおりますが、その子については後で。まずは他でもない、ヤマケンの活躍について触れねばなるまい。初登場時から作者さんにまで「当て馬」よばわりされていた彼ですが、ついに当て馬としての仕事を全うしました(まるで死んだかのような物言い)。当て馬の生き様というのは、ヒロインに恋い焦がれてあれやこれやと献身的にサポートし、いざチャンスと告白するも、当たり前のように断られ、挙げ句それをきっかけにヒロインと相手役の仲が一層深まりゴールイン…という流れを辿るところにあります(穿った見方)。端的に言うと、告白した結果それがアシストになってしまうという流れが、大きなスパンで見た時にあるわけですが、今回のヤマケンはそれを非常に美しい形でなぞって行きました。

オレとつきあわねーか
水谷サン
このタイミングでの告白は、ヤマケンにとっても本意ではなかったような気もするのですが、勢いに任せて行ってしまうところがいかにもヤマケンっぽくて素敵。しかも「告白」と言っておきながら「好き」とは決して言わないその捻くれ方と無駄なプライドの高さがまた、実に彼らしいではないですか。「かわいい」とは言ってますが、あの言葉は雫に向けて放った言葉ではなく、ついつい漏れた独り言。無表情で冷静に見せつつの、余裕のなさが可愛かったです。普通であれば一度目の「ごめんなさい」で折れるところ。けれども今回は諦めずに頑張った。もうこれだけで本当に頑張ったな!と。
けれどもそこはかませ犬。この頑張りが丸々ライバルの頑張りへと変換されてしまうわけで…。その直後、ほんとうに直後にハルが動きます。この一拍も置かせない無駄のないエネルギー変換に、ヤマケンの噛ませ犬としてのポテンシャルの高さを感じたのでした。
~はじまりはいつもこの階段で~
というわけでハルも雫に改めて想いを伝えるわけですが、そのシチュエーションといい言葉といい、実に「となりの怪物くん」らしい場面で素敵でした。以降全編的にネタバレになるのですが、今回はある意味今までの集大成とも言える回でしたので、余すこと無くお伝えしたいな、と。
さて、今回も今回とて、ハルが想いを伝えたのは、帰り道の階段で。この階段は1巻の第1話から登場しているいわば本作の聖地みたいなもの。そして、二人が想いを相手に打ち明けるのは決まってこの場所だったりします。一番最初はハルから雫へ。

彼の涙に思わず心奪われ駆寄り抱きしめたと思ったら、「俺シズクが好きかも。性的な意味で。」こんな言葉での返し。どうにも噛み合いません。それでもハルと一緒に過ごしていくことで、雫もいつしかハルを想うように。この場所での2度目の告白は、雫からされたものでした。1度目は学校で、けれども結局「嘘」なんて言ってしまったあとの、ちゃんとした告白。
どんなに考えたところで
他人の気持ちは想像でしかない
想像でしかないなら
ぶつかってみるしかない
他人の気持ちは想像でしかない
想像でしかないなら
ぶつかってみるしかない
相手の気持ちは想像でしかなく、ぶつけるのは自分の想いのみ。最初のハルからの告白も、自分の気持ちだけが先行した想いの吐き出しでした。この告白は、ハルが「自分の好きとお前の好きは違う」と言い、結局白紙に戻ることになりました。「ならばちゃんとハルを好きにさせよう」と、新たな決意をする雫が、妙に清々しい表情をしていたのが、今となっては懐かしいですね。ここまでは、1巻に収録されていた出来事でした。そして時は流れ4巻。それまでも度々この階段で、二人の大切な会話が重ねられていましたが、改めて積み重ねた想いを、雫が再び伝えることになります。
「私の気持ちを伝えよう」勇気を出しての告白。もう間違えないようにと、届くようにと真っ直ぐ目を見据えて放った言葉は、嫉妬によって濁ったハルの心には届きませんでした。またしても噛み合ない。その時の状況を、雫はこんな風に語られています。

どうしてこんなに噛み合ない
多分何かがズレている
二人が真に結ばれるには、このズレの解消が必要でした。けれどもそのズレが何だかわからない。なんてったって、相手は怪物くんです。そもそも何を考えているのかもわかりません。そんな中、作中にて語られるようになったのは、ハルの出自や彼の過去。その中で度々登場する叔母の言葉に、ハルとの噛み合なさを解消させるためのヒントがありました。

あたたかさを知らない
「他人」は自分を傷つけるもので、「安心」はつねに不安がつきまとい、「あたたかい」という言葉は君のココロに冷たく響く。今のハルのことをそう言い表し、一方でこんな言葉も残していました。
いつかこの手のひらが
キミにとって温もりだと感じられる瞬間が訪れるかもしれない
キミの胸を満たす何かを
見つけられるかもしれない
その時 きっとキミは
とても幸福な人間になる
キミにとって温もりだと感じられる瞬間が訪れるかもしれない
キミの胸を満たす何かを
見つけられるかもしれない
その時 きっとキミは
とても幸福な人間になる
この言葉は魔法となり、その後ハルの心の中に残り続けることになります。そしてそんなハルに対し、雫は3度目の告白を。その場所は、もちろんあの階段で。この時は答えを聞くこともなく、ただただ言葉として伝えただけ。けれどもその裏では、こんなことを思っていたのでした。

体温を分け合うように
彼に 伝えたい
この胸の高鳴りを
生まれた気持ちを
彼がくれたこのあたたかさを
この胸の高鳴りと熱こそが恋。はじめの頃のその想いとは、明らかに違う自分の中に渦巻く感情をもってして、やっと雫は自分の恋心を真の意味で自覚するのでした。さぁ、雫は答えを出した。ならばあとは、ハルのみです。そしてついに、ライバルの動きに焦ったとはいえ、それでも自分の意志で、自分の言葉で伝えたのです…

シズクといて
初めて俺は温かさを感じられるんだ
シズクが好きだ
俺と付き合ってください
ハルからの階段での告白は、実に第1話以来。度々好きだと伝えることはあったけれど、ここまでちゃんと伝えたのはきっと初めてでしょう。普段あれだけ暴れん坊で言葉使いも割と乱暴な彼が「付き合ってください」と丁寧語になっているところに、その本気度が現れているように想います(奇しくもヤマケンと同じような言葉なのですが、言い方が全然違いますよね)。そして何より、雫の「温かさを伝えたい」という想いが届いていたことが嬉しかった。そして、ハルもまた「好き」ということが何かわかったと話しています。このとき雫がまず想ったのは、嬉しいでも恥ずかしいでもなく「カチッとはまる音がした」ということ。これまで散々苦しんで来た「ズレ」が、ようやくなくなりました。これで晴れて恋人同士になった二人が見下ろすのは

祝福するように広がる満天の星空と夜景
ああこの場所、こんなにもキレイな景色が見渡せる場所だったのですね。いつも描かれるのは登り途中での見上げたショットか、見下ろしたとしても昼間。きっとこの日見た景色は、ずっと忘れることないんだろうなぁ。なんて、お互いのことばっかり見ていて、全く頭に入ってないかもしれませんけれど。告白したのは階段の一番下の場所だったので、その後登ってきてこの場所に腰掛けたってことなのですが、その間の二人の表情とか、会話とかどんな感じだったのかもうちょっと想像しただけでニヤニヤしてきます(笑)何はともあれ、数々の名シーンを生み出してくれたこの場所に感謝ですよっ!
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