
好きです
…うどんが
■バツイチ出戻りの村田チカ(35)の仕事は、学食の「うどんのおばちゃん」をやっている。ここのところ連日で、うどん…それも素うどんオンリーの男子学生がおり、なんだか気になっている。それになんだかよく目も会うような。。。ビンボーなの?うどんが死ぬ程好きなの?それとも私のこと…!?考え出したらキリがない。そして今日も彼は来る。。。一方そのうどんオンリー学生・木野もうどんのおばちゃんが気になり…。
BLで人気のえすとえむ先生のフィールヤングでの連載作品になります。ちょっと前に発売されて、周りで好評だったのですが、なかなか近所で売っておらず。やっと手に入れて読みましたよ。。。ありがとうございます、丸善お茶の水店さん。さて、内容ですが評判に違わぬ面白さ。というわけで早速ご紹介致しましょう。
舞台となるのは大学の学食。この学食で働く村田チカは、バツイチ出戻り35歳。学食というのは大抵麺類だとか丼ものだとかで様々分かれているのですが、彼女はうどんラインを担当しています。そんな彼女には、最近気になる存在が。それが、毎日毎日かけうどんのみを頼んでいく青年。栄養を沢山とらなくてはいけない若者が、来る日も来る日もうどんだけ。。。ビンボーなの?うどんが好きなの?それとも、私のこと…!?そんなことを考え出したら、目が離せなくなってしまった。そして一方のうどんの学生・木野も、彼女の視線を感じるようになり、なんとなく相手のことを意識。さてさて、二人の関係は一体…というお話。

かけひきはもちろんうどんです。うどんで何を注文するか。逆に、うどんの列に並ばなかったり。そんな一つ一つの行動が気になる気になる。
学食が舞台で、しかもうどんっていうところが非常にユニーク。入り口からそれなのですが、話運びもまた独特でとっても面白かったです。お互いに交わす言葉なんて、「うどんお願い」「どうぞ」くらいなもの。お互い意識して、ちょっと顔見知りになったところで、名前も知らないからお互いに相手の認識は「うどんの人」。別になんてことないけれど、何だか気になる、でもうどんの人くらいしか情報がない…となれば、進むのは妄想ばかり。お互いに変な想像を膨らませ悩む、「うどんの人」同士のくだらない攻防が、やけにリアルだったり生々しかったりして笑えてきます。
一番大きな壁は、お互いの年の差になるのですが、いかんせん駆け引きする場が学食なのでそのやり方がシュール。そもそも気になり出すきっかけも、ヒロインが心配して素うどんにプラスして色々乗せてあげたりしていたところだったり。ちょっと勇気出して話してみても、「やばい、変だったかな…」なんて遠慮しちゃって、翌日以降うどんのラインに並ばずにカレーを注文しちゃったり。ほんとくだらないのですが、注文する側とされる側という定型的なやりとりの中に、お互いの心情の変化を落とし込んで印象的に仕上げるってのはなかなかできるやりかたじゃないよなっていう。

挙げ句こんなことに。
うどんにヒロインを重ねすぎてしまって、うどんを見ると若干性的興奮を覚えてしまうようになるとか。いいなぁ、って。確かにうどんって官能的ですよね。白い柔肌とうどんを重ねるって、すごく共感できるというか。ただあの絵に関して言えば、わかめは髪の毛じゃなくて陰毛じゃないのかしらっていう、そこだけ引っ掛かりました(読めばわかる、どうでもいい話です)
また単なるラブコメってだけではなくて、ちゃんと年の差ならではのやきもきだとか、遠慮だとかいった双方の悩みも落とし込まれていて、恋愛ものとしてもちゃんと楽しめるようになっています。方や草食系男子の大学生、相手はバツイチ35歳、しかもさらに手を出しづらい事情があって、縮こまるのも当然。方やバツイチ35歳、前夫は割と積極的な相手だったのに、今度は消極的な草食系男子、しかも10歳以上も年下!そりゃあ自らアプローチだなんて無理な話です。その双方の気持ちは通じてるのに表に出せないやきもき感が、ホントたまらないのですよ。フィールヤングの1巻完結ものは毎年素敵な作品を送り込んでくるのですが、今年はやまがたさとみ先生の「12」(→レビュー)と並んで抜けて面白かったです。
【男性へのガイド】
→これは読んで欲しい。草食系だろうと、そうじゃなかろうと。ちょっと変わった恋愛模様が見たいという方に。
【感想まとめ】
→ここまで変な方向に持っていってるとは想像してなかったので、良い意味で予想外で面白かったです。個人的にうどん派ということもあり、ここは推したいところ。
作品DATA
■著者:えすとえむ
■出版社:祥伝社
■レーベル:フィールコミックス
■掲載誌:フィールヤング
■全1巻
■価格:648円+税
■購入する→Amazon