作品紹介→目が覚めたら私、超嫌われ者でした…:池谷理香子「シックス ハーフ」1巻
2巻レビュー→記憶喪失だけでなく、兄妹での恋愛まで:池谷理香子「シックスハーフ」2巻
3巻レビュー→2度目の否定の残酷さ:池谷理香子「シックスハーフ」3巻
関連作品レビュー→池谷理香子「微糖ロリポップ」
池谷理香子「シックス ハーフ」(4)
あたしが一番やりたいことは…
■4巻発売です。
事故で記憶を失ってしまった詩織は、実の兄・明夫への恋心に悩む日々を送る。ある日、過去の自分が読者モデルのオーディションに応募していたことを知った詩織。明夫への想いを紛らわせるためにも、オーディションに挑戦することにしたのだけど…?審査に進むうちに、嫌われ者だった詩織の周囲に変化が訪れて…!?
~一つの大きな武器~
4巻発売してます…だいぶ前に。そういえば感想書くの忘れていたな、なんて思い出したので今更。というか最近そういうパターン多いですね、はい。巻数重ねるごとに面白くなって来ている本作ですが、そろそろ記憶が戻るという爆弾が爆発しそうで、よりドキドキ感も増して来ています。これの恐ろしいところは、作者さんの裁量次第でいつでも発動できるっていうところで、その使いどころ次第で名作にも駄作にもなり得るんですよね。4巻では未だ発動せずでしたが、さていつ来るのやら。。。
~オーディション結果~
さて、今回の見所は読者モデルのオーディションの結果についてでしょう。「自分にはなにもない。からっぽ。」という漠然とした感覚を審査員にさらけ出したあの日から少し経ち、ついに結果が。全然ダメだったという詩織の実感とは異なり、結果は最終審査に残るという快挙。結局最終審査で落選してしまいましたが、記憶喪失後に何もなかった彼女にとって、一つ大きな“形”が残りました。そしてその後物語は意外な方向に。とある芸能事務所が、彼女をスカウトに来たのです。

オーディションが終わっても、そのことばかり考えてしまう詩織。スカウトの誘いに乗るか悩む彼女でしたが、その内心は明白でした。記憶喪失になって以降の彼女は、自身が言う通り「空っぽ」。その空っぽさを埋めるには、何かしらの経験や他者からの承認が必要になってきます。彼女がまず恋したのは、記憶喪失後の自分を一番最初から受け入れてくれた、兄の明夫です。このモデルという仕事は、その二つを満たしてくれる最良の仕事。誰にも認められずにいた宙ぶらりんの自分が、この仕事を通して誰かに受けとめてもらえるのかもしれないのですから。それでも結局、彼女はスカウトの誘いを断ってしまいました。
~本当に認められたい相手に認められるために~
彼女がスカウトの話を断ったのは、明夫の親友の話を聞いてから。物語後半の詩織の想いは、この親友・大ちゃんの一言一言によってふらふらとブレることになります。彼女がスカウトの話を断ったのは、好き勝手やって散々兄の明夫に迷惑をかけて家庭をぶち壊したという話を聞いてから。自分の進みたい道を選んで再び迷惑をかけるのは、絶対に避けたいこと。自分を受け入れてもらいたい、認めてもらいたいという根底にある願いの一番の向け先は、他でもない明夫なのです。

しかしまたしても大ちゃんの一言で、今度は一転スカウトの話を受けることに。それは、明夫が瑞希と付き合っていて、よろしくやっているという話を聞いてから。一番認められたい相手には、恋人がいて、自分はそこには座れない。ならばなんとか諦めて、他の誰かに受け入れられなくては。そんな心理が働いているように映りました。物語ラスト、「あたしこの仕事やりたい」と涙を流しながら明夫に話したシーン。とりようによっては感動的かもしれないですが、その実ものすごく切なくて悲しいシーンなんですよね。もう読んでて辛くて辛くて。そして間髪入れずにあの大オチ。いやいや、もしかしたらとは思ってましたが、マジですか。。。そういえば詩織は、記憶喪失後明夫のことを兄と思えないと確信したように話していましたが、それまでの家族として築いてきた時間をリセットし、遺伝子レベルで他人と印象づけさせるための仕掛けが、そこにはあったのかもしれませんね。
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2巻レビュー→記憶喪失だけでなく、兄妹での恋愛まで:池谷理香子「シックスハーフ」2巻
3巻レビュー→2度目の否定の残酷さ:池谷理香子「シックスハーフ」3巻
関連作品レビュー→池谷理香子「微糖ロリポップ」

あたしが一番やりたいことは…
■4巻発売です。
事故で記憶を失ってしまった詩織は、実の兄・明夫への恋心に悩む日々を送る。ある日、過去の自分が読者モデルのオーディションに応募していたことを知った詩織。明夫への想いを紛らわせるためにも、オーディションに挑戦することにしたのだけど…?審査に進むうちに、嫌われ者だった詩織の周囲に変化が訪れて…!?
~一つの大きな武器~
4巻発売してます…だいぶ前に。そういえば感想書くの忘れていたな、なんて思い出したので今更。というか最近そういうパターン多いですね、はい。巻数重ねるごとに面白くなって来ている本作ですが、そろそろ記憶が戻るという爆弾が爆発しそうで、よりドキドキ感も増して来ています。これの恐ろしいところは、作者さんの裁量次第でいつでも発動できるっていうところで、その使いどころ次第で名作にも駄作にもなり得るんですよね。4巻では未だ発動せずでしたが、さていつ来るのやら。。。
~オーディション結果~
さて、今回の見所は読者モデルのオーディションの結果についてでしょう。「自分にはなにもない。からっぽ。」という漠然とした感覚を審査員にさらけ出したあの日から少し経ち、ついに結果が。全然ダメだったという詩織の実感とは異なり、結果は最終審査に残るという快挙。結局最終審査で落選してしまいましたが、記憶喪失後に何もなかった彼女にとって、一つ大きな“形”が残りました。そしてその後物語は意外な方向に。とある芸能事務所が、彼女をスカウトに来たのです。

オーディションが終わっても、そのことばかり考えてしまう詩織。スカウトの誘いに乗るか悩む彼女でしたが、その内心は明白でした。記憶喪失になって以降の彼女は、自身が言う通り「空っぽ」。その空っぽさを埋めるには、何かしらの経験や他者からの承認が必要になってきます。彼女がまず恋したのは、記憶喪失後の自分を一番最初から受け入れてくれた、兄の明夫です。このモデルという仕事は、その二つを満たしてくれる最良の仕事。誰にも認められずにいた宙ぶらりんの自分が、この仕事を通して誰かに受けとめてもらえるのかもしれないのですから。それでも結局、彼女はスカウトの誘いを断ってしまいました。
~本当に認められたい相手に認められるために~
彼女がスカウトの話を断ったのは、明夫の親友の話を聞いてから。物語後半の詩織の想いは、この親友・大ちゃんの一言一言によってふらふらとブレることになります。彼女がスカウトの話を断ったのは、好き勝手やって散々兄の明夫に迷惑をかけて家庭をぶち壊したという話を聞いてから。自分の進みたい道を選んで再び迷惑をかけるのは、絶対に避けたいこと。自分を受け入れてもらいたい、認めてもらいたいという根底にある願いの一番の向け先は、他でもない明夫なのです。

しかしまたしても大ちゃんの一言で、今度は一転スカウトの話を受けることに。それは、明夫が瑞希と付き合っていて、よろしくやっているという話を聞いてから。一番認められたい相手には、恋人がいて、自分はそこには座れない。ならばなんとか諦めて、他の誰かに受け入れられなくては。そんな心理が働いているように映りました。物語ラスト、「あたしこの仕事やりたい」と涙を流しながら明夫に話したシーン。とりようによっては感動的かもしれないですが、その実ものすごく切なくて悲しいシーンなんですよね。もう読んでて辛くて辛くて。そして間髪入れずにあの大オチ。いやいや、もしかしたらとは思ってましたが、マジですか。。。そういえば詩織は、記憶喪失後明夫のことを兄と思えないと確信したように話していましたが、それまでの家族として築いてきた時間をリセットし、遺伝子レベルで他人と印象づけさせるための仕掛けが、そこにはあったのかもしれませんね。
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