潮見知佳「七つのくるり」(1)
なりたいんです
人々を救えるように■死か、鬼か!?運命の“くるり”が回る
愛や願いや欲望が“7つのくるり”を回す時、人間は鬼と化す。人を死へと導く菫丸は、美しき死神なのか救いの主か…?ここ最近数を増やしている“鬼”を狩る、“鬼狩り”の命を受けた3人の怪しき男たち、向かう崎に待つものは…!
潮見知佳先生のITANでの連載作になります。潮見知佳先生というと、白泉社メインで「らせつの花」(→
レビュー)など、秋田書店にて「KEY JACK」(→
レビュー)などを連載していたりと、実績十分の少女漫画家さん。満を持してのITAN登場です。物語の舞台となるのは、戦国モノのファンタジー…というコンセプトからスタートした、陰陽師が活躍する鬼退治もののストーリーです。帝より“鬼狩り”の命を受け旅をしている一行が、この物語の主人公たち。何やら特殊な能力を持っている優美な見ための陰陽師・菫丸。ぶっきらぼうな物言いの、隻眼の侍・曲(まがり)と、無口な僧侶・蓮慈。職業も見ためもその性格も全く異なる3人が、行く先々で出会うのは、人に鬼に、鬼になろうとしている人…

表紙からもわかるかと思うのですが、絵柄の美麗さはさすが。大ゴマで映えるし、アクションシーンも多いため、見ているだけで楽しいです。
時代背景等はあまり説明されていないのですが、帝が最上位にいて、かつ陰陽師がしっかりと活躍していることから、平安時代とかその辺りになるのでしょうかね。物語のスタートは、“鬼狩り”というわかりやすいミッションがあり、それをこなすことで物語は進行。この中で、“鬼”になるメカニズムと、“くるり”という存在が明らかになります。人の魂には7つの“くるり”という心の素のようなものが回っており、死ぬ際はこれがゆっくりと動きを止めるのだそう。けれども稀に、想いが強すぎたためか動きを止めないくるりがあり、結果それが身体を動かし、人を鬼とするのでした。そんな鬼となってしまった人間をのくるりを止め、殺してあげるのが、陰陽師の菫丸。女とも男ともとれぬ美麗な風貌で(あ、男性ですよ)、鈍臭いばかりの菫丸ですが、いざ鬼を前にした時は、その優しさで鬼を包み葬り去ってあげる神秘的な存在に。「人々を救えるようになりたい」と願った者が、「人を葬り去る」という一件相反する形で救いを与えるという、その単純でない行動。イメージ通りの曲と蓮慈に対して、どこか掴みどころのない菫丸の存在が、物語に一層の深みを与えています。
また上手いのが、“鬼狩り”というプロセスは明確になっているのに、その本来の目的は明らかにされていないという所。帝の命ということで、大層な理由があると思うのですが、これから物語が進むにつれて明らかになっていくのでしょう。また基本的には数話完結で、読み終わり毎に何かしらのカタルシスが得られるようになっています。ここで用いている手法・構成は、「らせつの花」などと同じ印象で、読みやすさは抜群。「それをどこで展開するか」の違いくらいで、既存のファンの方にとっては鉄板と言えるのではないでしょうか。
加えて個々人の過去も気になるところ。1巻にて明らかになったのは、曲の過去のみで、菫丸と蓮慈はこれから描かれるはず。正直曲の過去編はもうちょっと後出しでも良かったんじゃないのかなぁと思えるくらいに盛り上がりのある話だったので、他の二人も楽しみです。菫丸は1話では捌ききれないんじゃないかってくらいの過去があるのでしょうが、むしろ個人的には蓮慈がですね。こういう寡黙なキャラってのは得てして切ない過去を持っていたりするものなのですよ!(決めつけ)
【男性へのガイド】→この美麗さは女性がお好きなほうだと思うのですが、物語自体の作りが良いので、広く読める仕上がりかと。
【感想まとめ】→さすがの安定感と言わざるをえないです。既存のファンの方にはもちろんオススメですが、潮見知佳先生をご存知ないかたも、ここから入って全然問題ないかと思いますよー。
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僕の前世は花魁だった…!?:潮見知佳「ゆかりズム」1巻作品DATA■著者:潮見知佳
■出版社:講談社
■レーベル:KC ITAN
■掲載誌:ITAN
■既刊1巻
■価格:562円+税
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