作品紹介→芦原妃名子「Piece」
3巻レビュー→「砂時計」との違いを生む相手役の性質 《続刊レビュー》「Piece」3巻
4巻レビュー→物語を構成する、異なる性質を持った“Piece”:芦原妃名子「Piece」4巻
5巻レビュー→謎が謎を呼ぶ展開に、目が離せない:芦原妃名子「Piece」5巻
6巻レビュー→脇役なんていない、全てが答えを導く欠片となる:芦原妃名子「Piece」6巻
関連作品紹介→「ユビキリ」/「蝶々雲」/「月と湖」
芦原妃名子「Piece」(7)
君に
赦されたかった
■7巻発売しました。
折口はるかが生前「便利屋NEO」の岸辺という男に依頼していた仕事…それは、かつて成海と坂田が殺しかけた丸尾を捜し出し、手紙を届けることだった。岸辺の店を訪ね、本人から話を聞き出した水帆と矢内だったが、同時に、予想すらしていなかった衝撃の事実を知ることに!ついに「はるかの元彼」に辿り着いた水帆たちは…!?
~7巻で明らかになったこと~
7巻です。巻を重ねるごとに明らかになっていく事実…以上に、わからないことが増えていって益々混迷の本作、今回もまたすごかった。恐らく、役者は全て揃ったんじゃないかと思います。そう、今まで回想でしか登場することのなかったあの人・成海比呂の登場です。

彼は住処を移し、神戸にて生活中。絵は描き続けているようですが、絵の具を買うのも自費であるため、アルバイトをしているようです。元々生活力のあまりない彼が、バイトで苦労するのも無理はなく、なかなか大変そうです。どうも皓の場合、20歳で扶養を外れるということを言っていましたから、比呂もそうなのかもしれません(過去に書いてありましたっけ?)。しかし今回は比呂の登場は核心に迫るという意味ではまだまだ。恐らく次巻以降でどんどんと明らかになっていくのでしょう。恐らく今後は収束。だんだんと、別の気持ち良さが出てくるんじゃないかと思います。
~まだまだわからないこと~
さて、今回便利屋の情報と比呂の登場により、一気に状況は変わることとなったのですが、未だにわからないことがあり。まず一つ目は、妊娠していたというはるかの相手。情報屋の話を信じるならば、相手は皓になるわけですが、正直まだ確信は持てないですよね。ここでもしそうだとしたら、どんな経緯があってどういう落とし方になるのか。正直この二人とも、セックスまでは想像できたとしても妊娠ってあんまり想像できないんですよね。っていうのも卵食べれないじゃないですか、皓って(その後、比呂も食べれないことが判明)。無精卵とはいえ生殖の象徴である卵を頑に拒む存在と妊娠って、こうあんまり想像できないっていうか。
~卵が食べれない~
さて、というわけで後半フィーチャーされていたのが、“卵”。元々皓が卵が食べれない(正確には食べれなくなった)という設定があったのですが、ここに来て比呂もまた卵が食べれないことが判明します。しかも元々食べれなくなったのは、比呂の方。元々は、子供らしいちょっとした罪悪感から食べれなかったんですね。それが母親による監視の強化と、皓及び懐いていた家政婦さんとの別離によって、トラウマの象徴のように食べることが出来なくなってしまいます。以降卵は、彼の心を表すように描かれるようになるのですが、彼の場合

「卵にこもる」という表現で、自分の心を閉ざすようになります。心の卵とでも言うのでしょうか。そして唯一それをぶつけることができるのが、絵でした。
これがどのようにして皓の方に伝染ったのかはわかりませんが、きっと気持ちの悪い過程があったのでしょう。元々母親が「お互いに影響を与えないようにするため」として隔離した中での一致。心的なシンクロって方向には考えにくく、何か作為的なものを感じるわけですが、その中で浮かぶのは、皓の回想の中での比呂の病的な表情。直前の回想で、比呂は皓に自分の母親の表情を見出していますが、絶対あのとき皓は、比呂に自分の母親の姿を見たんじゃないかな、とか思いました。なんだかんだで似てるんですよね、二人。それが母親の言う「本質」というものなのかはわかりませんが。社交的な皓に対して、内向的な比呂。一見真逆を行っているように思えるのですが、比呂の「殻にこもる」という行為と、皓の「誰にも心を許さない」というスタンスは、世界との隔絶という部分でしっかりと一致しているんですよね。そんな比呂が、物心ついて唯一心を許した存在が、はるか。卵の殻のように部屋を取り囲む絵の中、隙間から除くようにおかれた彼女の肖像画がなんとも印象的でした。「似ている」という部分だけに着目して見るならば、皓がはるかに心を許すというのも、なんとなく納得できるというもので、やっぱり父親は皓なんでしょうか。それとも比呂?
~コメントで頂いた気になる点~
さて、そういえば前回のレビューの時に興味深いコメントを頂きまして、ちょっとご紹介したいと思います。情報提供してくださったSKさん、ありがとうございます。
とのことなのですが、確かに礼美の回想では…

コウジがプレートタイプっぽいネックレスをしている
その後水帆と成海が会った時は…

こんどは同じようなネックレスを成海が。もちろん成海はコウジと接触する以前はネックレスなんてしていませんでした。これは確かに気になります。が、正直これがどんな意味を持つかとかさっぱりわからないです(笑)本当に関係あるのかもわかりませんが、ちょっとだけ期待してみたいと思います。
あ、そうそう、芦原妃名子先生の代表作である「砂時計」の映画が1/1にTBSにて放送されるようです。自分は帰省しているので見れるのかわからないのですが、これはちょっと見たいですねー。なんと杏は夏帆さんですよ!なんかちょっとイメージ違いますが、少女マンガ原作のシネマライズは割と固いと思っているので、お暇な人はいかがでしょうか?
■購入する→Amazon
3巻レビュー→「砂時計」との違いを生む相手役の性質 《続刊レビュー》「Piece」3巻
4巻レビュー→物語を構成する、異なる性質を持った“Piece”:芦原妃名子「Piece」4巻
5巻レビュー→謎が謎を呼ぶ展開に、目が離せない:芦原妃名子「Piece」5巻
6巻レビュー→脇役なんていない、全てが答えを導く欠片となる:芦原妃名子「Piece」6巻
関連作品紹介→「ユビキリ」/「蝶々雲」/「月と湖」

君に
赦されたかった
■7巻発売しました。
折口はるかが生前「便利屋NEO」の岸辺という男に依頼していた仕事…それは、かつて成海と坂田が殺しかけた丸尾を捜し出し、手紙を届けることだった。岸辺の店を訪ね、本人から話を聞き出した水帆と矢内だったが、同時に、予想すらしていなかった衝撃の事実を知ることに!ついに「はるかの元彼」に辿り着いた水帆たちは…!?
~7巻で明らかになったこと~
7巻です。巻を重ねるごとに明らかになっていく事実…以上に、わからないことが増えていって益々混迷の本作、今回もまたすごかった。恐らく、役者は全て揃ったんじゃないかと思います。そう、今まで回想でしか登場することのなかったあの人・成海比呂の登場です。

彼は住処を移し、神戸にて生活中。絵は描き続けているようですが、絵の具を買うのも自費であるため、アルバイトをしているようです。元々生活力のあまりない彼が、バイトで苦労するのも無理はなく、なかなか大変そうです。どうも皓の場合、20歳で扶養を外れるということを言っていましたから、比呂もそうなのかもしれません(過去に書いてありましたっけ?)。しかし今回は比呂の登場は核心に迫るという意味ではまだまだ。恐らく次巻以降でどんどんと明らかになっていくのでしょう。恐らく今後は収束。だんだんと、別の気持ち良さが出てくるんじゃないかと思います。
~まだまだわからないこと~
さて、今回便利屋の情報と比呂の登場により、一気に状況は変わることとなったのですが、未だにわからないことがあり。まず一つ目は、妊娠していたというはるかの相手。情報屋の話を信じるならば、相手は皓になるわけですが、正直まだ確信は持てないですよね。ここでもしそうだとしたら、どんな経緯があってどういう落とし方になるのか。正直この二人とも、セックスまでは想像できたとしても妊娠ってあんまり想像できないんですよね。っていうのも卵食べれないじゃないですか、皓って(その後、比呂も食べれないことが判明)。無精卵とはいえ生殖の象徴である卵を頑に拒む存在と妊娠って、こうあんまり想像できないっていうか。
~卵が食べれない~
さて、というわけで後半フィーチャーされていたのが、“卵”。元々皓が卵が食べれない(正確には食べれなくなった)という設定があったのですが、ここに来て比呂もまた卵が食べれないことが判明します。しかも元々食べれなくなったのは、比呂の方。元々は、子供らしいちょっとした罪悪感から食べれなかったんですね。それが母親による監視の強化と、皓及び懐いていた家政婦さんとの別離によって、トラウマの象徴のように食べることが出来なくなってしまいます。以降卵は、彼の心を表すように描かれるようになるのですが、彼の場合

「卵にこもる」という表現で、自分の心を閉ざすようになります。心の卵とでも言うのでしょうか。そして唯一それをぶつけることができるのが、絵でした。
これがどのようにして皓の方に伝染ったのかはわかりませんが、きっと気持ちの悪い過程があったのでしょう。元々母親が「お互いに影響を与えないようにするため」として隔離した中での一致。心的なシンクロって方向には考えにくく、何か作為的なものを感じるわけですが、その中で浮かぶのは、皓の回想の中での比呂の病的な表情。直前の回想で、比呂は皓に自分の母親の表情を見出していますが、絶対あのとき皓は、比呂に自分の母親の姿を見たんじゃないかな、とか思いました。なんだかんだで似てるんですよね、二人。それが母親の言う「本質」というものなのかはわかりませんが。社交的な皓に対して、内向的な比呂。一見真逆を行っているように思えるのですが、比呂の「殻にこもる」という行為と、皓の「誰にも心を許さない」というスタンスは、世界との隔絶という部分でしっかりと一致しているんですよね。そんな比呂が、物心ついて唯一心を許した存在が、はるか。卵の殻のように部屋を取り囲む絵の中、隙間から除くようにおかれた彼女の肖像画がなんとも印象的でした。「似ている」という部分だけに着目して見るならば、皓がはるかに心を許すというのも、なんとなく納得できるというもので、やっぱり父親は皓なんでしょうか。それとも比呂?
~コメントで頂いた気になる点~
さて、そういえば前回のレビューの時に興味深いコメントを頂きまして、ちょっとご紹介したいと思います。情報提供してくださったSKさん、ありがとうございます。
実はまだ6巻読んでないんですが、5巻まで読んで気になっていた所があります。
それは、コウジがしているネックレスです。
礼美の回想シーンでも、成海との再会シーンでも彼ネックレスしてるんですよ。
で、水帆を名古屋に呼び出した成海が似た様なネックレスしてるんですよね。
家を出て行った時とかコウジと再会した時にはしていない様に見えるんです。
何の関係もない事なのかもしれませんが、ちょっと引っかかってます。
それは、コウジがしているネックレスです。
礼美の回想シーンでも、成海との再会シーンでも彼ネックレスしてるんですよ。
で、水帆を名古屋に呼び出した成海が似た様なネックレスしてるんですよね。
家を出て行った時とかコウジと再会した時にはしていない様に見えるんです。
何の関係もない事なのかもしれませんが、ちょっと引っかかってます。
とのことなのですが、確かに礼美の回想では…

コウジがプレートタイプっぽいネックレスをしている
その後水帆と成海が会った時は…

こんどは同じようなネックレスを成海が。もちろん成海はコウジと接触する以前はネックレスなんてしていませんでした。これは確かに気になります。が、正直これがどんな意味を持つかとかさっぱりわからないです(笑)本当に関係あるのかもわかりませんが、ちょっとだけ期待してみたいと思います。
あ、そうそう、芦原妃名子先生の代表作である「砂時計」の映画が1/1にTBSにて放送されるようです。自分は帰省しているので見れるのかわからないのですが、これはちょっと見たいですねー。なんと杏は夏帆さんですよ!なんかちょっとイメージ違いますが、少女マンガ原作のシネマライズは割と固いと思っているので、お暇な人はいかがでしょうか?
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