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Tag [オススメ] 2009.03.18
is.jpg六花チヨ「IS―男でも女でもない性」


IS
2000人に1人の確率で生まれると言われる
男でも女でもない性
それが俺なんだ



■15巻発売しました。
 男女両方の器官を持って生まれた「IS」(インターセクシャル)の春。志向は男子、しかし体は女性化が進んでいく。心と体のギャップに苦しみつつも、常に周囲の人々に支えられながら成長してきた。男でも女でもなく、「IS」として育ててくれた両親に、明るく元気づけてくれる弟妹、そしてクラスメイトたち…。いつも立ちはだかる、性別の壁は、ときに春を深く傷つけた。けれど、春はいつだって家族や仲間と共に乗り越える。2000人に一人の確率と言われるインターセクシャルの春の成長を、家族の愛、そして淡き恋で、感動的に綴っていきます。
 
 「インターセクシャル」というと、勘違いされやすいのが「性同一性障害」。性同一性障害というのは心と体の性別が一致しないことで、最近でははるな愛さんや椿姫彩菜さんなどが話題になっていますね。それに対しインターセクシャルというのは、体の性別がないというか、男でもあり女でもあるという、グレーゾーンの性別の状態のことを差すため、性同一性障害とは全く異なります。半陰陽とか両性具有などと表記されることもあります。例えは悪いですが、エロ系の話でみられる「ふたなり」というとイメージしやすいかもしれません(実際はそんなセンセーショナルなものではないですが)。発症確率は2000人に一人と、決して少ないわけではありませんが、その多くは表に出ないようです。そんなISの春の成長を、真っ正面から描いているのが本作。偏見や自分自身のギャップに苦しみながらも、周囲の人物に支えられながら真っ直ぐに成長していく春の姿には、誰しもが感動を覚えるでしょう。


IS_20090318211213.jpg
ISであることを完全に承認し、全てを受けとめてくれる母。実際の家庭はどうなのだろうか。

 
 扱っているテーマがテーマだけに、決して軽い気持ちで読めるものではありません。当然感動や切なさに溢れており、素晴らしい作品になっているのですが、読むのにはなかなか気力が要ります。純粋な物語というよりは、ISを認知・理解してもらうためのテキストといった感覚もあり、やや雰囲気として敷居が高い印象があります。病院とか図書館に入ってそうな。漫画という枠を超えて、ぜひとも読んでいただきたい作品です。
 
 ちなみにISを題材にした漫画としては、「性別が、ない!」という作品もあります。こちらはどちらかというと、ISをネタとして扱っているので、よりライトに読めるかもしれません。また「IS」は現在15巻まで出ていますが、メインである春のお話が始まるのは2巻から。ISの知見を深めたいというのならば読むことをお薦めしますが、そうでないのならば2巻から読むことをお薦めします。


【オトコ向け度:☆☆☆☆ 】
→少女マンガ云々という所では語れない作品です。絵や雰囲気は少女マンガですが、テーマ自体は男女関係なく読んでほしい…ってISの話を薦めていながら、性別云々を語ってるこの状況は実に矛盾している気がします。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→ぜひ読んでおいてもらいたい作品です。面白いとか感動するとか、そういったものを越えた所にこの作品はあるような気がします。


作品DATA
■著者:六花チヨ
■出版社:講談社
■レーベル:KCKiss
■掲載誌:Kiss(2004年No.10~連載中)
■既刊15巻

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