
少し意識を変えれば
…世界は違って見えたりする
■人の思念・記憶を吸い込む、テレパスの亜生。直接触れずに物を動かすことのできる、サイコキネシスの綸。そして、自分を他の誰かのように幻覚を見せることのできる少女・知那。両親を亡くし、血もつながらない彼らは、「できそこない」のサイキッカー3兄妹で…!?せつなさとはかなさが絡み合う、センチメンタル・ストーリー登場です。
週刊少年チャンピオンにて「幻仔譚じゃのめ」を連載していた梅田阿比先生の、プリンセスでの連載作になります。「幻仔譚じゃのめ」は全巻購入しているものの、未だ未読の状態にあるので(どういうことなの…)、これが初めての梅田阿比作品となります。本作で描かれるのは、できそこないのサイキッカーの少年少女3兄妹。人の思念を読み取る亜生に、物を触れずに動かす綸、そして自分を誰かのように幻覚を見せることのできる知那。元々は血のつながっていない彼らは、両親に養子として引き取られるも、今は死別したったの3人でボロボロの洋館に暮らしています。3人とも中学校に通ってはいるものの、その能力のおかげでクラスにはあまり馴染めず、いつも一緒に行動。そんな自分達を「できそこない」だと自認している彼らですが、様々な出来事を通して、自分たちの存在価値を再認識していく、そんなお話となっています。

パッと見兄妹とはわからない。血がつながっていないので、見ためも性格もてんでバラバラです。
3兄妹でありながら、全員血がつながっていないということから、それぞれ見ためも性格もバラバラ。長男としての役割は、黒髪の男の子・亜生。色白黒髪サラ毛ショタが背負う運命とも言うべき身体の弱さを持っており、相手の思念を吸い込みすぎると途端に倒れてしまうという虚弱キャラ。その分優しさと寛容さに満ちあふれたキャラクターになっているのですが、ある意味一番手のかかる子とも言えるかもしれません。弟的なポジションは、茶髪の綸。こちらは逆に元気と力が有り余っている感じで、いつもサイコキネシスが暴走して物を壊してしまう感じ。これまた手のかかる弟キャラです。そして紅一点・知那が妹&姉。割と一番まともなイメージのある彼女は、普段はアイドル的な姉という感じ。けれども、超能力で化けた相手のことを段々と忘れていってしまうという、強い副作用があるために、その実最も放っておけない存在。それぞれにどこか欠点や弱さを抱える3人は、それぞれに自分の長所を生かしてその穴を埋める関係にあり、「似ている弱さを抱えるが故に共感して依存関係に陥る」というような不健全な関係とは異なる依存関係を築いています。個人的には黒髪サラ毛ショタということで、亜生くん一択です、はい。
最初は3人の中で閉じているギブ&テイクの関係も、物語の進行と共に広がりを見せていくようになります。たまたま出会った人を通して巻き込まれる出来事で、ちょっと勇気を出して自分達の力を使い解決へ。「できそこない」であった彼らの自尊心が、段々と回復していく様子が垣間見えます。1話ごとに完結していくスタイルで、そのたびに救いを用意。またそれと同時に、彼らがどうしてこの屋敷に集められたのか、最初は明らかにされていない謎が徐々にわかっていき、物語の大きな枠も明らかになっていきます。少年誌で週刊連載をしていた実績もある通り、物語の作りやまとめ方はさすがに上手で、読んでいて安心感があります。喜びと悲しみのバランス感もちょうど良く、多くの人にとって読みやすい作品に仕上っているのではないでしょうか。少女マンガと言いつつも、恋愛要素は皆無と言ってよく、割と低年齢向けの男女両方をターゲットにした良作という感じを受けます。もちろんオススメ。
【男性へのガイド】
→少年誌での連載作とのギャップ等は読んだことないので語れませんが、少女マンガ作品全体の中で見てもこれは割と男性でも受け入れやすい作品だと思います。優しいお話ですね。
【感想まとめ】
→「幻仔譚じゃのめ」も読まないと…!表紙やタイトルから、どこか仄暗い感じのお話なのかと思っていたのですが、そこにはしっかり光が差すので暗さはあまりありません。都度都度救いを提示してくれる良い作品だと思います。
作品DATA
■著者:梅田阿比
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセス
■既刊1巻
■価格:419円+税
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