サマミヤアカザ/岩城広海「王子はただいま出稼ぎ中」第1巻
塵も積もれば借金完済■21億5千22万グランという、気絶寸前の借金を背負う小国・フォーレの武芸に秀でる王子・ユートは、あの手この手で借金返済に駆け回る日々。身分詐称してバイトするなんてもちろんのこと、もっと大きな儲け話はないかとアンテナを張り巡らせています。そんなある日、懸賞金5千万グランの凶悪盗賊団の存在を知ったユートの脳内で、算盤が弾かれる…。それもこれも全て、借金返済のため、今日も王子は稼ぎます!
角川書店ではおなじみの、ライトノベル原作のコミカライズになります。タイトルは、「王子はただいま出稼ぎ中」。正直全く聞いたことがなかったのですが(そもそもラノベに疎い)、シリーズ6作が刊行されている人気シリーズのようです。物語の主人公は、とある世界にある莫大な借金を背負った小国・フォーレの王子・ユート。金銭意識と危機感の高いユートは、その地位に溺れることなく、日々どのようにして借金を返済するかを考えて生きています。しかしこれといった収入もなく、また日々の生活費すら危ないと言う状況で、借金返済にまで回すお金を捻出するのは難しいもの。そこで自ら稼ぎに出て、なんとかお金を返すという考えに至ります。時には身分詐称で危険な仕事を請け負うことすら。頼りない部下に、頼りがいがあるけれどどこか変わっている他国の王子などのサポートを受けつつ、今日もまた一つ美味しい仕事を見つけてきた王子ですが…というストーリー。

金第一主義。とにかく儲け話があれば危険であろうとなんであろうと出向く。
冒険ものかと思いきや、借金返済に美麗な顔をしたかわいい王子が駆け回るというややホームコメディよりの内容。こういう軽いお話、大好きです。国が抱える借金は21億5千22万グランということですが、“グラン”を“円”で置き換えて見ればおおよそイメージ通りになるはずです。日本の借金に比べれば屁でもないような額ではありますが、これといった強みもない小国からすれば大借金であることに変わりはありません。この危機を打開するために、税収云々…なんて発想になれば良いのかもしれませんが、いかんせん王子は顔と運動神経は良くとも、頭の方にそれが回らないようで、自ら働きに出るという選択を選んでしまいます。要するに正義感とエネルギーを持て余した筋肉バカということになるのですが、見ためも相まってその様子が実に可愛らしい。
今回コミカライズを手がけているサマミヤアカザ先生は、原作の挿絵もご担当なさっていたということで、原作とのイメージギャップに苦しむことはそんなになさそうですね。女性向け作品でかつ角川ですから、登場人物皆々見目麗しい容姿をしているのですが、それでも主人公の女性っぽい見ためは作中でもきっちり描き出されていて、さすがです。なおホームコメディに終始するのではなく、とある金稼ぎに首を突っ込むことをきっかけに、より大きな物語の枠に引きずり込まれるという展開を用意。決してこじんまりした印象は与えません。しかし原作6作出てるってことは、そうそう簡単に借金返せないんだな、、、と。参謀に恵まれなかった主人公が不憫で不憫で…でも窮地に陥って困るその表情もまた可愛いんだな(変態とかじゃなく、みんな絶対そう思ってる)。
【男性へのガイド】→女子キャラゼロも、主人公がかわいいのでそういうの好きな人(どんな人だよ)は。中日の浅尾選手を見守るような気持ちで読みましょう。
【感想まとめ】→このくらいの軽さのあるお話の方が、個人的には読みやすいです。ストーリーも単純明快でわかりやすいですし。テンポも良く、親しみやすい仕上がりに。
作品DATA■著者:サマミヤアカザ/岩城広海
■出版社:角川書店
■レーベル:ASUKA
■掲載誌:ASUKA
■既刊1巻
■価格:560円+税
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