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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2012.02.17
1106111640.jpg尾崎あきら「あたしのバンビ」


熱血不器用女


■真面目で地道な努力がモットーの七瀬春子。小学校までは何をやってもダメダメで、けれども頑張って勉強をして、地元でも有数の進学校にトップ入学。これからの高校生活は順風満帆…に思えた春子だけど、隣の席になった男子・八谷千晴はやる気ゼロの超問題児で…!?トップ入学のクソ真面目女子と、補欠合格のクソ不真面目男子が出会って起こる、凸凹ラブコメディ!

 人気小説のコミカライズである「武士道シックスティーン」(→レビュー)の連載を先日完結させた尾崎あきら先生のオリジナル連載作になります。舞台となるのは地元でも有数の進学校。制服を見れば、「あ、あの集徳。いかにも真面目そう…。」てな感じで一目置かれるような、そんな高校。そこに今年トップの成績で合格したのが、ヒロインの七瀬春子。血の滲むような努力で勉強のできる子へと生まれ変わり、高校生活も順風満帆かと思いきや、思わぬ存在にその道を邪魔されることになります。それが隣の席の八屋千晴。補欠合格で入学したという彼は、早々に授業もサボり気味で、テストを受ければ追試の嵐。クラスメイトとの折り合いも悪く、気がつけば隣の席ということで、春子は体よく彼の面倒を押しつけられることに。けれども今まで人付き合いなんてろくにしてこなかった春子、とにかく不真面目な彼とどう付き合ってよいか分からず、いつもペースは乱されっぱなしで…。


あたしのハ#12441;ンヒ#12441;1
熱血クソ真面目と、脱力クソ不真面目が出会う。当たり前のように折り合い悪いのですが、それでも一緒にいなくてはいけないのはメインキャラゆえの宿命でありまして…。やがてお互いの価値観を、ぶつかり合いの中で享受していきます。


 1月はマーガレットの若手作家さんたちの単行本が多く発売されたのですが、「王子様カルテット」と銘打たれてそれぞれのヒーローが紹介されています。こちらのヒーロー・八谷千晴は「バカ王子」とのこと。…いや、かわいそうだろ、腐っても名門校の生徒ですよ…。なんてフォローもなんのその、ほんとにバカキャラなんです、彼。「努力は受験の時にしきった」「退学にならない程度に適当にやり過ごせればOK」そんな心構えで学校に通い、授業はサボり、通う先はゲーセン。補欠合格という過程も相まって、早々に負け組の構えでいたりします。コミュ力はあるので要領が良いかと思いきや、テストを受ければ基本追試。要するに、不真面目さという不器用さを抱えた人間なのです。
 
 そんな彼のお相手をするのが、見るからに真面目そうなヒロイン・春子。今でこそ進学校のトップを張っていますが、小学校時代は運動も勉強もまるでダメな落ちこぼれ。そんな自分に嫌気が差し、また先生の助言によって奮起、努力によってここまで成り上がってきました。努力こそが彼女の正義であって、まだなお上を見続けている高い志向の持ち主。けれども人付き合いが苦手(というか多分経験がそんなにない)であるため、空気を読めずにズバッと思ったことをそのまま言って場を凍らすことも。そのためクラスでは浮きがち。こちらもまた不器用さを持ったキャラと言えるでしょう。


あたしのハ#12441;ンヒ#12441;2
二人の他に、もう一人脇役が。口の悪いモテ系女子キャラ。とってもかわいいのですが、お顔は読んでからのお楽しみということで。


 親しくなるきっかけは、八谷のテスト対策に巻き込まれるというところから。正反対の価値観を持つ相手ということで、お互いぶつかり合うこともありますが、なんだかんだで絆のようなものは芽生えてくるもの。気がつけばお互い一緒に過ごす時間が増えていきます。双方共に不器用であるため、まぁとにかく行き違いが多い。真逆すぎていい塩梅で折り合えるポイントというのがなかなかないからなのかな、という気がします。
 
 勉強が出来て人付き合いがヘタなヒロインといえば、「君に届け」(→レビュー)であるとか「となりの怪物くん」(→レビュー)などがあり、本作もそれらのエッセンスを落とし込んだ作品の一つと言えると思います。ただ先の2作が、こと恋愛本面においてヒロインがその魅力を発揮し出すのに複数巻かかったことを見てもわかる通り、この手のヒロインは甘さ(恋愛的魅力)が出るまでにとっても時間がかかる!本作は1巻完結ということで、結果やや早足で完結することになったのですが、やはり恋愛的な甘さが出るまでには至らず、個人的にはもうちょっと続きを見てみたかったです。ただ作品としてもの足りないわけではなく、尾崎先生の持つ独特のテンポの良さと軽さ(バカさ)によって、軽快な青春物語へと仕上っています。なんて言うんですかね、品の良さはないんだけどきれいにまとまってる人っているじゃないですか、そういう人といる心地よさみたいなものがあるんですよね(わからない例え)。
 

【男性へのガイド】
→恋愛的な甘さがあまりないことが逆に読みやすさにつながるかもしれません。変キャラの集う青春バカコメディが見たい方は。
【感想まとめ】
→続きを読みたかったと思いつつも、ここまででも充分楽しめた一作。尾崎先生の長期連載に期待です!



作品DATA
■著者:尾崎あきら
■出版社:集英社
■レーベル:別冊マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■全1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazon

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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
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2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
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売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




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池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。