音久無「女王様の白兎」(1)
何か
何かとてつもないことが起こるんじゃないかって■平穏な毎日を満喫する高1の仁科雪兎。しかしその平穏は、あっという間に崩れ去ることになる。ある日学校の校舎の屋上にUFOと共に現れたのは、コウコラ星という星の第一王女だと名乗る少女・レイシー。地球から300光年も離れた星からやってきたレイシーは、雪兎に特殊能力のエナジー源になれと突然命令してきて、しかも召使いと共に家に居座るだなんて…!ドS女王サマに下僕高校生…振り回される運命か…!!!
「花と悪魔」(→
レビュー)の音久無先生の新連載になります。前作は悪魔と人間の触れ合いを描いたお話でしたが、今度は宇宙人と人間の触れ合いを描いたお話ですよっと。主人公は少女マンガながら男の子。平穏無事な日々に感謝しつつ、ぬくぬく生きている高校生でした(過去形)。そんな彼の平穏が壊れたのは、学校の屋上にUFOが降り立ってから。そのUFOから降りてきたのは、なんとも奇怪な格好をした少女と、その下僕と思しき男二人。少女の話を聞くと、どうやら彼女は地球から遠く離れた星の第一王女であり、後継の条件として「地球人の願いを10個叶える」という使命をこなしにやってきたのだそう。そして地球人の願いを叶えるためには、どうやら雪兎の存在は必要不可欠なようで…なぜか早々に「その身体を差し出してもらおう」とか言われるのですが…

平穏を邪魔されたくない主人公(頑固)と、自分の想いは通したい(頑固でわがまま)なレイシー。そりゃあしょっちゅうぶつかる。けれどもそんなやりとりを、レイシーは楽しんでいる節もあったり…。
ちょっと設定が色々とあるお話になっています。地球から300光年離れた星の王女が、王位継承のための試験(のようなもの)として、地球人の願いを10個叶えるというミッションを課せられ、地球に降り立ったというのが事の始まり。そしてその願いを叶えるためには、彼女が持つ特殊能力を使用する必要があり、そしてその能力を発動するためのエネルギー源として、特定の地球人の存在が必要となるのです。そしてその条件を満たすのが、主人公の雪兎。一行はシェアハウスに住む雪兎についていき、そのまま居座ってしまいます。ここまででお話の下準備は完了。ここからいよいよ、願いを叶えるための活動を始めて行くことになります。
こちらエネルギーの供給の方法がなかなか特殊で、唇に触れないとダメ。要するにキスです、はい。そのため1巻ということで恋愛要素ほぼナシで送るにも関わらず、キスシーンは頻発します(笑)コウコラ星にも一応キスの概念というのはあるようなのですが、ヒロインのレイシーはあまり気にしている様子はありません。欧米的というよりは、ミッションの方が俄然大事というスタンスだからかもしれません。王女ということもあって、のっけからかなり高飛車。またあまり人と関わらなかったということもあり、世間知らずでまた思ったことをズバズバと言ってしまう欠点もあります。言葉遣いと良い、どこか可愛げがあるわがままっぷりは、「かんなぎ」のナギを彷彿とさせます。最初はぶつかり合っているけれど、やがてかけがえのない存在になっていくのだろうなぁ、と勝手に「かんなぎ」と重ねて未来を想像してしまっています(自分気持ち悪い………)

王女と言ってもまだまだ中身は子供。高圧的な態度を取るのは、その地位ゆえ。それ以外では、実に可愛らしく甘える姿が出てきたりします。
願いを“10個”、また“第一王女”というワードからも窺えるように、割と長期での連載を見据えた土台作りになっているように思えます。1巻時点で結構動きがあるので飽きさせることはないのですが、それだけ取り出してみるとやや単調な感も。しかしお互いが少しずつ、恋愛的な感情を芽生えさせて行くため、しっかりと味わいに変化を出してきます。上手い。
前作もそうだったように、恐らく今回も王室に絡めつつ物語の枠を広げていくのかな、と思います。また一見大人びたヒーローに、わがままで子供っぽいヒロインというのは、なんだかんだで前作とも同様。今回も良い物語になりそうな予感がいっぱいです。
【男性へのガイド】→ナギっぽいヒロインとかいうとまた誤解を生むような気も…。
【感想まとめ】→1巻での感動や温かさは前作ほどではないものの、これからの展開で味わい深さをまさせるような感じが結構します。前作からのファンの方は是非とも…ってもう買っているか。
作品DATA■著者:音久無
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめコミックス
■掲載誌:花とゆめ
■既刊1巻
■価格:400円+税
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