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Tag [新作レビュー] 2012.02.21
1106127694.jpg小川洋子/有永イネ「最果てアーケード」(1)


この世界は「し」で始まる物事が一番多いの
「し」が世界の多くの部分を背負ってる
これは世界のヒミツなんだよ



■ここは“人生”の終わりのはじまり”。世界で一番密やかなアーケードには、ひと癖もふた癖もある店主たちが軒を連ねる。そして、彼らを見守る大家の「わたし」は、今日もお客様をお出迎え。でもなぜだかお客様は皆、「死」の匂いがして…。その理由は、アーケードにあった。。。ここは、生と死が行き交う奇蹟のアーケード。

 原作・小川洋子先生、作画・有永イネ先生で贈る、ちょっと不思議なテイストの物語、「最果てアーケード」のお届けです。原作の小川洋子先生は「妊娠カレンダー」で芥川賞を受賞されている実力派作家さん。最近だと、映画化もされた「博士の愛した数式」などが有名でしょうか。一方作画担当の有永イネ先生は、現役大学生で同人を中心に活動されてきた新人作家さんだそうです。表紙の色使いといいキャラの表情といい、とっても目を引きますよね。ベテラン×新人の組み合わせ…に見せつつ、小川先生はコミカライズ原作は初めてということで、実は初めてづくしの組み合わせだったりするのです。
 
 物語の舞台となるのは、ここではないどこかにある小さな小さなアーケード。「最果て」の名にふさわしく、そのアーケードはとても静かで穏やかで、そして同時にどこか陰鬱とした暗さが漂う場所でもありました。そこに軒を連ねるのは、業種も性格も変わった店主たち。死者にまつわるレースのみを集めた店や、剥製用の義眼を作る店、そして丸い丸いドーナツばかりを作る店…どこか「死」を感じさせるところのあるお店たちに集まってくるのは、これまた「死」の匂いがするお客たち。最果てにあるこのアーケードで、彼らが描く物語とは。そんな彼らの瞬間を、アーケードの大家である「わたし」の目を通して、見つめていきます。


最果てアーケート#12441;1
死を前にすることは多い。死に向き合うことが、この作品の大きなテーマ。


 「動」か「静」で言えば、間違いなく「静」に分類されるであろうこのお話。なんとも不思議な雰囲気を漂わせる物語です。作者さんの中には「死」を取り巻くあれこれを描こうという明確な意思とテーマがあるのだと思うのですが、それがあまりにも精緻にさりげなく落としこまれているので、読みづらいというか、理解しづらい部分が大いにあります。雰囲気で感じさせてくれて、それなりにカタルシスも得られるのですが、何も考えずに読んでいると本当にわからないまま終わっちゃいますよっていう(←それで一周目を無駄にした管理人)。とにもかくにも文学的で、面白く優しい言葉ながら難解っていう。
 
 その要因としては、この場所がどんな場所で、どんな人たちがいるのかということが殆ど説明されないことが挙げられます。わかっているのは、店の店主は皆孤独であり、儲けなど考えずに日々自分の仕事をしているということ。そしてそんなアーケードの大家である「あたし」は、父親を亡くしたばかりの少女であるということ。そして彼女には、このアーケードに関わった全ての人の最期を見届ける義務があること。。。アーケードの中では唯一「動」と言える気質を持った彼女は、子供らしくいつも無邪気に、けれども時に全てを悟ったかのように振る舞い、物語を紡いでいきます。


最果てアーケート#12441;1-2
いつも暗い表情をしているわけではありません。むしろ活発に動き回り、表情は明るいことが多いです。大家さんは暗くなりがちな雰囲気を明るくしてくれる存在でもあり。

 
 「死」と言っても、自らが迎える「死」がテーマではなく、どちらかというと残された側の人間にどのように救いをもたらすかの方に重きが置かれて物語は進んでいきます。大切な人の死に直面し、どう咀嚼して飲み込んでいくのか。大家自身もまた、大事な人を亡くして間もない人間であり、同時にここで多くの人の死との対峙を見守っていく、彼女はどんな想いでここにいるのでしょうか。2巻にて本作は完結となるそうなのですが、物語が大枠が説明的に明らかにされることはあるのか。たぶんないんだろうな。けれどもきっと、その先には静かで確かな感動が待っているのだと思います。


【男性へのガイド】
→BE•LOVEというよりもバーズとかBEAMで連載している方がしっくり来そうな作風です。よってオススメなのですが。
【感想まとめ】
→2巻まで読まないとなんとも。分かったような気になっていてその実なんもわかっていないのです。。。明るい雰囲気でもないけれど、かといって重苦しくもなく。穏やかに日差しが入る、ちょっとほこりくさい図書館にいるようなそんな感じ(どんな感じだよ)のお話でした。


作品DATA
■著者:小川洋子/有永イネ
■出版社:講談社
■レーベル:KC BELOVE
■掲載誌:BE•LOVE
■既刊1巻
■価格:590円+税


■購入する→Amazon

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