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Tag [続刊レビュー] 2012.02.22
作品紹介→軽妙で濃密…落語界を舞台に描く人情落とし噺:雲田はるこ「昭和元禄 落語心中」
作者他作品→気になる相手は子持ちのバツイチ…けれども守ってあげたい:雲田はるこ「野ばら」




1106111604.jpg雲田はるこ「昭和元禄落語心中」(2)


できねぇ時?
そん時ゃ諸共心中だよ



■2巻発売しました。
 惚れ抜く八雲師匠の芸だが、オイラにゃできねぇ。そう気づきはじめたこの与太郎。小夏の父ちゃん・亡き助六のすげぇ落語に取り憑かれ、迎えた師匠の独演会、やっちゃいけねぇヘマをした。破門と言われた与太郎と、与太郎をかばう小夏の二人に師匠が語る約束の噺たぁ…!?
 
 
~2巻発売しています!~
 2巻が発売してしばらく経っているのに、なかなかレビューできませんでした!1月ずっと死に体で、やっとですよー。もう大事に思いすぎて全然レビューできなかったっていう(笑)昨年はとにかく本作との出会いが一番の思い出です。正直絶対この作品が「このマンガがすごい!2012オンナ編」の1位だと思ってました(2位でしたけど…)。2位に選ばれたことで、書店でも目立つ所に平積みされています。もっと知って欲しいので、嬉しい限りです。
 
 さて、2巻では与太郎の成長が…と見せかけて、八雲師匠と今は亡き助六の過去が描かれました。経緯は全く違えど、同じ境遇で同じ日に師匠のもとに弟子入りした二人には、簡単には語れない時間と出来事が重ねられていました。八雲の噺という形式で進められる本編は、「八雲と助六編」として、其の一と其の二が2巻に収録。1巻とはまた違った調子で語られるお話は、濃密さを増すばかり。いややっぱり面白い。
 

~助六と八雲~
 助六と当代八雲、二人の出会いは戦前に遡ります。親に体よく捨てられ、望んでもいないのに7代目八雲の元に弟子入りさせられたのが、当代八雲。そして一方生まれながらに親がおらず、自ら飛び込むようにして弟子入りしてきたのが、今は亡き助六でした。同い年で同じ日に入門。その生い立ちと性格、入門した際の想いは全くの正反対ではありましたが、ずっと同じ師匠のもと一緒に過ごしてきた二人は、辛いときも楽しいときも一緒に過ごし、そりゃあもう固い固い絆で結ばれるのでした。年を重ね磨き続けるそれぞれの落語。二人の性格を表すように、二人の演る落語は全く正反対なものへと仕上っていきます。とにかく豪快な助六に対して、菊比古(当代八雲の前座名)は繊細で艶っぽい落語を得意としたのでした。
 

昭和元禄落語心中2-1
 落語での雰囲気をマンガに落とし込むのはなかなか難しいと思うのですが、フォントで強弱をつけ、また背景とアングルでそのシーンの雰囲気を描き出す腕前はさすが。八雲の落語シーンでは背景が黒であることが多いのに対し、助六のそれは基本的に白い背景。またフォントも割と太めのものが多いです。わかりやすい形でのこの対比。表情も菊比古に対して非常に豊かでありました。一体どんな人物なのかと1巻の時に想像していたのですが、見れば見るほどに与太郎と似ていますね。


~これはあくまで当代八雲の噺~
 さて、そんな「八雲と助六編」ですが、いくつか特徴があってそれが非常に面白いのでちょっとお話を。まずこちら、2巻の時点では其の二…2人が二ツ目まで出世したところまで描かれているのですが、この時点で落語のシーンが描かれているのは助六のもののみ。八雲の落語は全く描かれていません。これはこの話が「八雲の噺」として描かれているからでもあり、また同時に当代八雲(当時の菊比古)が助六の落語に、いわゆる嫉妬ないし劣等感を抱いていたからでもあると思います。
 
 其の二までに描かれている、菊比古の助六に対する想いは、「落語の面白さを一番教えてくれた存在」であり、同時に「最も劣等感を感じさせた相手」でもあり。そこで描かれる助六の姿は、奔放さと豪快さで菊比古を時折困らせつつも、いつも正しい方向に自分を導いてくれる頼もしさ。嫉妬と尊敬、その二つが同居する、八雲の助六に対するその時々の想いが、非常にわかりやすいようになっています。これは「菊比古と助六」のお話ではなく、あくまで「菊比古から見た助六」のお話なんですよね。だから絶対にバイアスはかかるし、事実と異なり多少の脚色が入ることだって、絶対にあるはずなんです。それをちゃんと意識して読まないと、あっという間に八雲の世界に引き込まれてしまう。いや、これは「八雲の噺」なんだから、むしろそれで良いのか。

 これがあくまで「噺」であり、それように脚色されているように感じられたのが、こちらのシーン…
 
 
昭和元禄落語心中2-2
「どうやって買うの」
「簡単だよ 貯めりゃいいんだ そしたらいくらでも見立ててやるよ」
「ケチケチすんない買っておくれよ 古着でいいよ」
「酒やめりゃすぐだよ」
「じゃあ嫌だよ」

 
 この小気味よさ。これはあくまで八雲の「噺」。だから台詞も噺っぽい。非常に小気味よく、片っ方が言えば片っ方が同じリズムで返す。モノローグだけでなく、会話もみんな噺っぽいです。噺家同士の会話は元々こんな感じなのか、それとも八雲の噺だから、多少の味付けがあるのか。真実を知っているのは八雲のみ。噺でいくらでも情景を浮かび上がらせることができる名手ですから、今読んでいるこの情景だって、もしかしたら根多かもしれない…なんて、そんな風に思わせる八雲の食えなさがやっぱり大好きです。そしてとにかく、このおかげで読みやすく、面白いんです。


~アタシの中で生き続けている~
 さて、助六と菊比古の関係は、これから大きく動きだすようです。どのようにこじれ、どのように落ち着くのかはわかりませんが、少なくとも八雲の中では助六は成仏していないわけで。続きが気になる所であります。ともあれ八雲は助六の落語はしっかりと認めていて、けれども自分にはできない芸として認識しているようです。話は戻って「与太郎放浪篇」、一度は破門されかけた与太郎ですが、3つの約束を師匠と交わして破門は回避されました。その3つの約束の一つが…
 
 
昭和元禄落語心中2-3
アタシのと助六の落語も叩き込む
全部覚えろ



 というもの。「助六の落語を叩き込む」サラッと言っていますが、助六の落語は八雲のものとは全く別もの。そして同時に、容易に真似出来るものではありません。余程思い入れがなければ、覚えられるものではないですし、そしてまた教えられるものでもありません。自己流を貫いてこの地位を築いてきたと思わせていた八雲が、助六の落語を教える。教えられるのか…いえ、ちゃんと教えられるんです。それは1巻、小夏を前にしたときに既に描かれていました…


昭和元禄落語心中2-4
これがお前のお父っつぁんの落語
助六は いまもアタシん中でも生きてる

 

 助六の一番のファンは、八雲か小夏か。とにもかくにも、八雲の中に、助六は生き続けているようです。これが一つ、助六が成仏していない所以なのかもしれません(たぶんもっと大きな何かがあるんだろうけれども)。だからこそ、成仏させてやらなくちゃならない。八雲にとって助六の成仏とは、彼の中に生きる助六の落語を、誰かに継承すること。そのために、二つ目と三つ目の約束があるんです。この与太郎に、二つの落語を継がせようとしている。そして挙げ句目指せというのは、「自分の落語」。なかなか難しいことを言ってきます。さてどのようにして八雲が与太郎に噺を教え、そして想いを遂げるのか、今からわくわくでいっぱいですとも。けれどその前に、八雲と助六篇が何より…。あぁ、はやく3巻発売してくださいって!
 

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