
それでもいつか私にも
魂が宿ったら…いいな
■何かの欲望を抱く者の前に突如現れるという「あかりや」。この店では、どんな願いも叶えるという普通とは違う、特殊な“あかり”を売る…。その“あかり”を手にした者の運命は…。あなたの願い、この”あかり”が叶えます。照らすのは、希望?それとも絶望…?
久々にネムキの作品のご紹介です。赤美潤一郎先生が描く、とある「あかりや」のお話。どこかにあるが、どこにもないそのお店“あかりや”は、欲望を持つ人間の前に突如現れます。普通の照明とは異なる、お客の願いを叶える特殊で様々な“あかり”を提供。死者の世界への道を開く“死人のランプ”、その人の本音を全て聞くことができる“真実のランプ”、見えないものが見れるようになる“不可視可視のあかり”…古今東西、その効用は様々です。そのあかりを手に入れた者は、その道具を使って希望を見るのか、絶望を見るのか。。。切り盛りするのは無愛想な男と、ひょんなことから店員になった女の子の二人。まるで正反対の性格の二人が、“あかり”を手に入れたお客のその行く先を見届けます。
作者の赤美潤一郎先生は、商業誌で言うとスクウェア・エニックスで活動をされている作家さんで、そちらでも主にオカルト色の強い作品を描かれているそうです。こちらの掲載誌「ネムキ」はまさにそういった作品ばかりが展開される雑誌ですから、まさにうってつけという活動場所なのかもしれません。

あかりやには、ここを訪れた客の欲望を叶えるあかりが必ずある。但しその結果訪れる未来までは補償しない。あくまで必要とされるものを売るだけです。店主はそのことを分かっているけれど、店子はあまりわかってないご様子。
物語は1話完結形式で進行。あらまし紹介でわかる方もいるとは思いますが、所謂「願いを叶える道具と、その使いよう」を描いたお話で、使い方を間違えると途端に地獄へ…というような、割と救いのない話もちらほら。半ば異常とも思えるような欲望であったり、ちょっと聞くと気持ちの悪くなるような悪趣味な趣向を持つ者が登場したりと、オカルトホラー色強めです。ただ結末として、ちゃんと希望のあるお話か、そうでないものかはハッキリとさせてくれるので、読み終わっての言いようのないやるせなさみたいなものは感じることはありません。純粋に物語を楽しめたという感覚。
また救いのある話は個人的にはどれもかなりお気に入りでした。“あかり”というのが暗闇の中で使われるものであるように、例え希望のある話でも、それは多くの絶望や不条理の中に浮かぶもの。その対比があるからこそ感動できるのかな、とも思います。特に「渡りの光」のお話はちょっと泣きそうになりましたもの。その物語の内容に似つかわしくなく、意外とデフォルメキャラの描き出しがやたらとかわいかったりと、変な所にギャップがあって面白かったです。これもまた、魅せる手法の一つなのかもしれません。人物画は冬目景先生っぽい雰囲気です。
なおあとがきに書いてあったのですが、この1巻が出るまでの間に20回以上も入退院を繰り返されていたそうです。なんとも厳しい状況の中産み落とされた本作、時間はかかりましたが、その時間に見合うだけの内容になっていると思います。面白かった!2巻が出るのがいつになるかはわかりませんが、オススメですよ!
【男性へのガイド】
→作者さん自身男性ですよね?(追記:女性とのこと。びっくり。)ならばやっぱり。またこのレーベルはそもそも男女共に読みやすい作品は多いと思いますよー。
【感想まとめ】
→これは面白かったです。良い作品を読ませて頂きました。あれやこれや心が晴れないものも落とし込まれていますが、そういうのもまた一興。闇に光る一筋の光、という意味合いでもこの作りは秀逸だと思います。
作品DATA
■著者:赤美潤一郎
■出版社:朝日新聞社
■レーベル:ネムキ
■掲載誌:眠れる夜の奇妙な話
■既刊1巻
■価格:600円+税
■購入する→Amazon