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Tag [新作レビュー] 2012.04.10
1106128622.jpg信濃川日出雄「茜色のカイト」


私たち家族になるんだから


■2年間俺は君に嘘をついてきました。さよなら。
 プロポーズから約半年間、両親への挨拶から週末ごとの式場見学と、結婚への準備を着々と進めてきた、ななこと遥哉。しかし、式場契約の当日、遥哉は彼女の前から突然姿を消してしまう。残された手紙、元恋人の存在、登山ガイドの母。失踪後に知る彼の“真実”にななこは…。

 信濃川日出雄先生がフィールにて連載していた作品になります。信濃川日出雄先生というと「Fine」が個人的に印象的で、そのイメージが強いのですが、まさか女性向けの作品を描くとは。先々レビューすることもないと思っていたので、その名前を見た時とても驚きました。本作「茜色のカイト」は、結婚前の男女の姿を描いた作品。プロポーズから半年、結婚式場を探しまわっていたある日、契約目前になり突如、彼がとある書き手紙を残し、忽然と姿を消してしまいます。なぜ彼が消えたのか、残されたメッセージの意味とは、そして自分はどうするべきなのか、一人残されたヒロインは、先の見えない中懸命に過去と、そして未来を模索していくことになります。
 
 残されたメッセージは「2年間俺は君に嘘をついてきました。さよなら。」というもの。それまで突然姿を消してしまうような素振りは一切見せていなかったので、当然ヒロインは困惑します。また手紙と言っても、便せんに丁寧に綴ったようなものではなく、銀行封筒の余白欄に書かれたもので、本当に「思い立って即座に」というような感じ。そんな中、唯一のヒントとなるのは、契約しようとしていた結婚式場のプランナーで、相手役の元婚約相手だったという人。彼の過去を知るその人に少し嫉妬しつつも、現状と、そして少しずつ明らかになってくる彼の過去と背負っているものを受け入れ、改めて彼との未来について考えるようになっていきます。


茜色のカイト
思い返せば思い当たる節もある。ただ優しいだけではだめなのか、見て見ぬ振りをするのはダメなのか、嘘をつくのはダメなのか。。。相手に、自分に、様々な想いを巡らせる。


 描こうとしているのは何なんだろう。結婚することとは、家族になることとは、ということか。そこに確かに救いはある。けれども相手役の心情が間接的にしか描かれることはないので、本当の意味での真実は闇の中。そういう意味ではどこかスッキリとしない感はあるのですが、結婚ってそもそもそういうものなのかな、という気もするのです。全て分かり合った上で結婚することなんて到底出来ないし、けれども相手のことを何も知らずに結婚することだってできない。その二つのライン内での若い男女の葛藤と行動が、この一冊の中に落とし込まれています。
 
 より大きな枠での救いが訪れたのは間違いなくヒロインでしょうが、わかりやすく救われているのはむしろ相手役で、これを好意的に受け取れる女性読者ってどれだけいるのかなぁとちょっと思ったり。女性の包容力というか寛容というのは当然のことながら大事ではあるのですが、にしてもヒロイン任せな感が。相手役自身も、何かヒロインが抱えているものを少しでも背負えれば、ギブアンドテイクで本当にスッキリしたのですが、そこは1冊というボリュームでは描けないか。というわけで、よくあるフィールヤング作品とはちょっとテイストの異なった趣のある一冊となっております。気になる方は手に取ってみては。

 
【男性へのガイド】
→表向き女性向けですが、根本は男性向けのテイストが強いように個人的には感じました、はい。
【感想まとめ】
→双方の暗い部分を掘り下げるようなものにしたらバランス取れたかな、とは思うものの、現状十分読み応えのある内容。1巻完結でちょうどよい読みやすさ。


作品DATA
■著者:信濃川日出雄
■出版社:祥伝社
■レーベル:フィールコミックス
■掲載誌:フィール・ヤング
■全1巻
■価格:933円+税


■購入する→Amazon

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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。
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