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Tag [続刊レビュー] 2012.04.11
作品紹介→ここは男が絶滅してから2000年後の世界:阿仁谷ユイジ「テンペスト」1巻



1106133412.jpg阿仁谷ユイジ「テンペスト」(2)


私のものにしたい


■2巻発売しています。
 かつて、ほぼ男女同数であった地球に突如として出現し、人類のY染色体を滅亡させたサキュバス現象。2000年の時を経て、今度は女性滅亡(フィメールロスト)が起ころうとしている。人類を救う唯一の方法として、人工的な男性創出実験が繰り返される一方、サキュバス予備軍として隔離された皇…。愛する人を救うため、世界唯一の男性、姫が選ぶ道とは…。
 

〜2巻発売しています〜
 本作については販促のポスターなどにコメント書かせていただいたのですが、目にされた方いらっしゃいましたでしょうか?発売からしばらく空いてしまいましたが、レビューのお届けでございます。
 
 1巻は設定といい展開といい、久々に女性向けの本格SFを読むことができたな、と非常に衝撃を受けたのですが、2巻もまた印象的でした。ただ1巻とは異なり今回受けた印象は、1巻にも増して女性作家さんらしい色が濃く出てきたというもの。1巻は世界観と主人公たちが置かれた状況の説明が主で、そのスケールも非常に大きなものでした。一方で2巻は、舞台設定が整ったところでその解決にあたります。そのアプローチが「男性の人工的な創出」になるわけですが、背負っている責務・プレッシャーとは裏腹に、ミクロな世界での試行錯誤かつ密室で動きの少ない中での展開となるので、スケールダウン感は否めません。けれどもその分溢れ出てくるのは、当事者たちの単純でない、そして美しくもないいやらしい感情です。


〜マッドサイエンティスト月小路霧江〜
 2巻で最も印象的なキャラクターと言えば、誰が何と言おうとプロジェクトの責任者・月小路霧江でしょう。もうこの人のおかげでどれだけ生臭い物語に仕上ったか!
 
 
テンペスト2−1
 1巻の時から「男性は家畜」「完全に御してみせる」と、ちょっとした異常性めいた部分を覗かせていた彼女ですが、2巻にて本領発揮。もちろん「男性創出=人類の存続」という大義名分がそこにはあるのですが、彼女の場合自身が持つ歪みが表に出過ぎてしまっているために全くそう感じられないという(笑)
 
 体外受精が上手くいかないので体内受精に切り替えるという命令も、普通に考えればあり得る選択だとはおもうのですが、1巻にて皇が姫に対し「私の子供を生むの」と言い放っていたことを考えると、精子バンクの精子を使って皇が別の男の子を孕むというのは、姫にとっては堪え難い未来であることは想像に難くなく、「あー、ほんとこの人鬼畜やわぁ」と。またその後、姫に対して抱く感情が明らかになるのですが…
 

テンペスト2−2
歪んでる歪んでる


 男性的な部分を目の当たりにしてもなお「手に入れたい」と思うこの気質は、この作品の誰よりも男性的なように映ります。「月小路の人間には愛よりも優先すべきことがある」とかつて姫に言い放った彼女は、今では「愛よりも優先すべきこと」よりも優先して、自らの独占欲に正直に行動しています。この見境のなさであるとか、嫌らしさ、そして力の強さ…想像されるのはラスボスのイメージ。たぶんこの物語における当面のラスボスは、フォトンベルトからの脱出によるフィメールロストなんかではなく、月小路霧江という存在そのものなんだろうな、とちょっとだけ思った2巻でした。
 
 
〜女性向けだからこそ読める作品じゃないか〜
 生殖が一つ重要なファクターとして描かれている本作ですが、男性としては出産や生殖と言ったところはちょっとしたタブーのような存在で、話題として非常に扱いにくいという印象があります。何年か前に「女性は生む機械」発言で大きく批判を浴びた厚生労働大臣がいましたが、この作品ではフィクションとはいえ同じようなことを真っ正面を切ってしているわけで。これ男性が描いてたら割としゃれにならない気がします。そして。女性が描いているということがある種の免罪符になっているのかな、とすら。何はともあれ、これは女性向け雑誌だからこそ読める作品であるし、女性だからこそ描ける作品なんだな、と改めて思います。先にスケールダウンと書きましたが、それはあくまで物語の大枠での話であって、人間の感情の掘り下げといった濃度の部分は1巻の比にならない程濃くなってきています。今後どういった路線を辿るのかはわかりませんが、どちらにせよ目の離せない展開になることは間違いなさそうですね。楽しみです。
 

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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
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2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




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