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Tag [新作レビュー] 2012.05.08
1106143463.jpg斉藤倫/道尾秀介「光媒の花」(1)


遠い遠い家まで…


■認知症の母と暮らす男の、忘れがたい遠い夏の痛み。幼い兄妹が草叢に隠した、赤く汚れた罪…。絶望から希望へとグラデーションを描く、珠玉の物語たち。山本周五郎賞を受賞した、道尾秀介渾身の連作群像劇を完全漫画化。儚く美しく、不穏な愛に揺れる第一集登場!

 原作となっているのは、第23回山本周五郎賞を受賞した小説「光媒の花」。作者は道尾秀介先生とのこと。正直全く原作は存じ上げなかったのですが、専用ページが設置されているなど、集英社としてはなかなかの力の入れようであることが窺えます。Amazonでの評判も上々です。そんな作品をコミカライズしたのは、「僕の部屋へおいでよ」(→レビュー)などを描かれている斎藤倫先生。個人的にとても好きな漫画家さんなので、いつもとちょっと雰囲気の違う表紙とタイトルに、すごく興味惹かれました。
 
 原作は6篇なのですが、1巻に2篇毎収録の全3巻の予定とのことです。1巻には原作の1〜2篇までが収録されています。1話目は、認知症の母親と一緒に暮らす男性の、封印された過去が、母親の描く絵によって思い起こされるというお話。2話目は、ホームレス殺害に手を染めた小学生の幼い兄妹のお話。どちらも“殺人”が主人公の今を形成する大きな出来事として描かれており、非常に仄暗く寂しいストーリーが展開されます。


光媒の花
2章「虫送り」より。思っても見ない形で人を殺めたという十字架を背負うことになる兄妹。雰囲気としては透明だけれどもどこか薄暗く、冷たい、そんなお話となっています。


 どこに向けることもできない怒りだとかやりきれなさのようなものが残る点で、1章と2章は共通しており、1巻としての感想としては少なからず気持ちの良いものではないかもしれません。これが2巻、3巻と経るにあたり救いのある方向へ進んでいくのか、はたまたより救いのない話になるのかは原作未読である以上わからないのですが、帯の「絶望から希望へとグラデーション」という言葉を信ずるならば、きっとこれから希望あるお話へと移ろっていくのでしょう。
 
 1話目「隠れ鬼」は単発の読切りとしてはありがちなお話に見えたのですが、2話目「虫送り」は主人公の兄妹二人があまりに不憫というか、救いようのない話で色々な意味で印象に残りました。「ホームレス殺害に手を染めた小学生」というフレーズからまず、小学生なのに殺害?なんて違和感を感じるわけですが、本編を読んでびっくり。時に人間というのは容赦ない鬼のようになるのですね。1話目、脇役とも言えない程度のモブとして登場し、希望に溢れる象徴として描かれる少年が、2話目にてこんな絶望を見ることになるとは。

 斉藤倫先生の絵はかわいい子供(女の子は特にかわいい)とちょっとだらしないダメな若い男がしっくりくるイメージなのですが、2話目はその組み合わせがズバリ出てくるため、余計に印象に残った部分もあるのかもしれません。原作の装丁を見るに、多分こんなキャラ造形は想像しないでしょうから、確実に原作イメージとは異なる絵で魅せていると思われ、原作既読、未読どちらもそれなりに楽しめる作りになっていると思います。作りは原作未読向け。


【男性へのガイド】
→原作者は男性ですし、主人公も男性ですから。もちろん読みやすいと思います、はい。
【感想まとめ】
→普通に面白いし楽しめます。ただ3巻揃えて2000円オーバーの一方、原作小説であれば2000円出してお釣りが来るかつ一気に読めるということを考えると、コストの面でどうなんだろうという気もします。ただ原作に漫画家さんならではの色がついているのは確実で、そういう意味では双方比べることにあまり意味はないのかもしれませんが。


■作者他作品レビュー
*新作レビュー*斉藤倫「誓いの言葉」
*新作レビュー*斉藤倫「宙返りヘヴン」
恋に芸術に悩む美大生:斉藤倫「Juicy」


作品DATA
■著者:道尾秀介/斉藤倫
■出版社:集英社
■レーベル:レーベル不明
■掲載誌:Cookie
■既刊1巻
■価格:781円+税


■購入する→Amazon

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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。
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