
ねぇ、ロアを識ってる…?
ロアと言うのは噂話。
口から口へ伝う話だから、
真実か、虚偽か、判らないのも幾つか。
■ロアというのは噂話。口から口へ伝う物語。それを集めているサイトが”ロアの森”。誰でも辿り着けるわけではなく、何かによって選ばれた者だけが、呼ばれるようにして招かれる。そして招かれた者には、必ず不幸が訪れるというミステリアス・サイト。今日もまた、迷い込むようにロアの森に辿り着いた者が一人…。果たして、その物語は真実か虚偽なのか…!?
都市伝説などで語られる話をひっかかりとして、恐怖の物語を展開させていくホラー作品です。3話収録で、それぞれ読切りとして独立していますが、"ロアの森"というサイトを介在させることによって作品としての普遍性を保っています。それぞれの「ロア」を紹介すると、「学校のオブジェの中に死体が入っている」という学校の怪談的なものから、「かごめかごめの歌の言い伝え」や、「死者と生者の世界をつなぐトンネル」という都市伝説的なものまで、それぞれ比較的メジャーな話題が中心になっています。ただそれだけで展開・完結させるわけではなく、あくまで引っ掛かりとしてそれらを使い、そこからひと捻り・ふた捻りして読者を翻弄します。

第一話。オブジェの中に死体が入っているという噂から話を展開。
印象としては単純に「恐怖」を追求している作品ではないな、ということ。とにかくグロテスクな描写で攻めるとか、感情に突き刺してくるというような展開はなく、どちらかというと追求しているのは物語としての完成度。そのための目標として、「恐怖」というものを一応置いているんじゃないかなぁ、と個人的には思いました。それゆえに読後の感想は、「怖っ!!」ではなく「よく作られてるなぁ」だったり。
捻りを入れれば入れるほど作品は収集がつきづらくなってくるのですが、こちらは各話ちゃんとしっかり収めています。またそれだけでなく、全体として見た時に、「"ロアの森"自体がまさに"ロア"になっている」というアイロニカルな構成が仕掛けられているので、なかなか面白いと思いました。
【オトコ向け度:☆☆☆ 】
→ホラーはあまり性別関係なく読めるんじゃないでしょうか。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→完成度は高いと思います。ただホラーは単純に「怖がりたい」ってのがあるんですよね。作り手である以上、完成度の高い物語で勝負をしたいってのがあるのでしょうが、映画の「呪怨」のようなストレートな表現に勝る恐怖をなかなか作れないというのも、また事実だったりするのです。
作品DATA
■著者:イチハ
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:ザ・花とゆめ(平成20年3/25日号,9/25日号,平成21年2/1日号)
■全1巻
■価格:400円+税