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Tag [続刊レビュー] 2012.06.07
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1106133380.jpgろびこ「となりの怪物くん」(9)


どうしてハルの答えは
いつも明快なんだろう



■9巻発売しました。
 高校2年に進級した水谷雫と吉田春は、長いすれ違いの末に付き合い始めることになったが、雫はなかなか付き合った実感を得ることができない。そしてハルと何も変わりがないままの夏休み。ついに2人にも、そして周りにも大変化が!?
 

〜祝・アニメ化!!〜
 先日驚きのニュースが飛び込んできましたよ!なんと「となりの怪物くん」アニメ化決定です!

人気コミック『となりの怪物くん』が今秋アニメ化


 デザート誌上で何か「大発表」があるとされていましたが、こちらがそれだったようです。デザートの作品はアニメ化しない印象だったので、まさかの展開にとっても驚いています。いやぁ、嬉しいですね。さて、既に制作や各キャラクターの声優さんも決定しており、監督は「君に届け」の監督さんとのこと。声優さんはドラマCDからがらりと変更してのキャスティングとなっています。
 
役名:ドラマCD版キャスト → アニメ版キャスト
水谷雫:伊藤茉莉也 → 戸松遥
吉田春:鈴村健一 → 鈴木達央
夏目あさ子:巽悠衣子 → 種崎敦美
ヤマケン:浪川大輔 → 寺島拓篤
ササヤン:岡本信彦 → 逢坂良太
大島千づる:早見沙織 → 花澤香菜
みっちゃん:小野大輔 → 樋口智透
吉田優山:梶裕貴 → 中村悠一

 私は声優さん殆ど知らないので、どっちが良いとかわからないのですが、普通に変えてくるものなのですね。戸松遥さんは「ここはグリーンウッド」のドラマに出ていたので知ってます(浅い知識)。何はともあれ非常に楽しみです。
 

〜後悔のない選択〜
 さて、アニメ化の話はほどほどにしておいて、本編の話に移りましょう。前回から夏休みとなっている本編ですが、9巻も夏休みメインで進行します。付き合うことになったものの、未だ付き合っている実感の湧かない雫。自然な形で二人いられるのはある意味理想的な状況であるとは思うのですが、雫からすると「付き合っているのだからそれらしく見えたり感じたりするもの」という先行した感覚があったのだと思われます。そんな中、キャンプの最終日に少しだけ付き合っていることを実感することに。まず感じたのは、付き合っている実感ではなく違和感でした。


となりの怪物くん9−1
ハルが前にいること


 いつもは後ろからついて回るハルが、この日は恋人として自分の前を歩きます。いつもとは違う景色、感覚。けれどもこれは、あくまで自分の中で感じるもの。恋人然とした感覚でもなく、ましてや周りから見たらまるで恋人になんて見えないのではないか。そんな獏とした不安のような感覚が、雫の脳裏をよぎります。けれどもそれは、優山の言葉によって払拭されることに。
 

となりの怪物くん9−2
ちゃんと立派な恋人同士に見えるよ
(中略)
選択に後悔がないのなら
きっとそれは正解なんだよ


 「なるようになっただけ」そう謙遜した雫の背中を、優山の「選択した結果」という言葉がさらに後押しします。欲しかった言葉。けれども安堵よりももっと、取捨選択の結果である、「捨てた選択肢」がよりハッキリと目に映るように。そう、ヤマケンの存在です。「友達にはなれない」とハッキリ言われた手前、雫としてもどうすることもできません。「友達になれないのなら仕方ない…」口では言ってはみるものの、どこか歯切れが悪く、後悔していないとは言い切れない状況。ハルとの付き合い、ヤマケンとの付き合い、そのどちらもハッキリと向き合いきれないままに続く此の状況は、果たして正解と言えるのか。
 
 優山が提示した「正解」を手に入れるには、選択への後悔を無くすことが必要になってきます。自分が優柔不断だからかもしれませんが、後悔のない選択なんて、ないです。そうでしょ?それでも優山は「後悔の無い」と言う訳ですよ。要するに、必ず生まれる後悔をどう消化するかという話。そして、そのためのアプローチとしては、基本的には二つ。一つはヤマケンとの関係をきっぱり割り切ること。そしてもう一つは、後悔も掻き消えるほどに、選んだ方の選択肢での幸せを実感すること。後悔の種を取り除くか、溶かして飲み込んでしまうか。どちらを選ぶかは当人の性格次第だと思うのですが、結果的に雫が選んだのは後者でした。
 
 あれこれと考えを巡らせて、頭の中がこんがらがっていた彼女とは対照的に、ハルの想いはこんなにもシンプル


となりの怪物くん9−3
「…もしかしてハルは私が好きだから毎日来るの」
「うん」



 あまりに明快な回答に、雫も思わず顔を赤らめます。これが決定打。思わず手をつなごうと提案した雫は、ハルと手をつなぎ並び歩きながら、付き合うことの幸せを実感することになるのでした。一緒に並んで歩く景色は、冒頭と殆ど一緒。けれども今度は違和感ではなく、心いっぱいの幸せを感じることになりました。経った時間は僅かの期間。けれどもその間に多くの人の言葉を聞き、考え、整理して、やっとここまで。とんとん拍子に進むことこそありませんが、ゆっくりと歩むからこそ、そこから進む足取りは確かで、やっぱりすごく素敵というか微笑ましいですね。


〜ササヤンと夏目さんもまた…〜
 さて、雫たちの恋模様も素敵なのですが、何といっても目を離せないのはササヤンと夏目さんですとも。やっぱりササヤンペースで進むんですね(笑)どうあがいたって、夏目さんじゃあササヤン相手に勝ち目はありません。ただ今までちょっと弱みというか、歳相応の情けなさみたいな部分が見えてなかったササヤンに、そういう面が見え始めて、なんだか新鮮というか安心というか。力関係の構図は変わらずとも、だんだんと透明になって中身が見えてくると、また違った感想が持てます。きっと次の巻もニヤニヤで読み進めること必至。楽しみですな。
 
■購入する→Amazon

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