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Tag [新作レビュー] [読み切り/短編] 2012.06.24
1106142810.jpg有永イネ「さらば、やさしいゆうづる」


ねぇ
今日からいい日になるんだよ



■小川洋子先生が描きおろし原作をつとめる「最果てアーケード」(→レビュー)で話題を集めている有永イネ先生のデビュー短編集となります。こちらはITANでの掲載作品。読切ということで、恒例のあらまし紹介はカットしております。ご了承をば。

 収録されているのは4編。どれも少しファンタジックな要素を落とし込んだお話になっています。それではタイトルと共に、少しずつ内容をご紹介しましょう。まずは「ひとつめは木曜になく」。高校生の男の子二人が描かれるのですが、彼らは木曜日限定で「一つ目」のお化けのようなものが見える体質の持ち主。見ためもグロテスクなそれは、人々のネガティブ(憂鬱)な気持ちに呼応して現れるという性質を持っており、そのことがより彼らを悩ませるのですが…というお話。人々のネガティブな感情が見えてしまい、それに対し自分達がどう対峙していくべきかということを考える内容なのですが、最後のまとめ方が意外&秀逸。雨に例えちゃったりするのは安直すぎる気もしないでもないですが、やや難解というかクセのある内容である分、バランスが取れて思いのほか爽やかな読後感です。

 2話目は表題作である「さらば、やさしいゆうづる」。個人的にはこれが一番のお気に入りでした。祖母に育てられたためかちょっと常識はずれな所があり、それにコンプレックスを抱いている女子大生が、ある日「自分の欲しい物」が出てくるという箱をプレゼントされる話。鬱鬱とした雰囲気で進んでいく物語の背景には当然のことながら重たいお話が隠れているわけで。ヒロイン視点で見ればしっかり、そして感動的に完結するこのお話も、今なお箱から折り鶴が出てくる幼なじみのお兄ちゃん視点で見ると、決して完結しているとは思えず。特に物語のタイトルに「夕鶴」が含まれている所とか、あれこれと考えを巡らさせてくれます。色々な楽しみ方のあるお話でした。


さらばやさしいゆうづる
「さらば、やさしいゆうづる」より。このお話に限らず、台詞なしのコマ多め。“間”をしっかりと取ったり、敢えて台詞なしにすることで、物語にメリハリと味わい深さが。この辺もまた新人っぽくないというかなんというか。


 3話目は「なき顔の君へ」。コンプレックスの塊のような双子の姉が、「弟の顔がなくなってほしい」と七夕にお願いしたところ、本当に弟の顔が見えなくなってしまったというお話。恵まれた隣の人を羨み、差し延べられる優しさに怒りを覚え、“持たない”自分を悲しみ諦める負のスパイラルに陥るヒロイン。そんな彼女が、とあることをきっかけに立ち直る過程(というか瞬間)を描く感動作。これも1話目、2話目と同じく自分のコンプレックスが軸になっていて、それにどう対峙するかという方向のお話かと思います。表現の仕方は違えど、根底は同じメッセージ・テーマという所を、「引き出しが少ない」と捉えるか「多彩」と捉えるかは読み手次第でしょうか。ここはもう完全に好みの問題ですので。

 そして4話目はガラリと雰囲気を変えてコメディベースのお話。若くして事故で亡くなった主人公が、なぜか心霊現象を意図的に起こすという会社に雇われて幽霊として仕事をするというお話。すごいバカなノリで、こんな話も描けるのかと感心でした。もちろん最後は感動もありです。
 
 こういう雰囲気の作品好きな人多いですよね。同じITAN発の新人さんというと田中相先生がいますが、あちらがより透明感があるというか、より淡いカラーでの作品作りという印象なのに対し、こちらは重厚感とか歪さを残しつつの印象が強いです。
 

【男性へのガイド】
→男女関係なくこういうお話好きな人は一定数いるはずでして。
【感想まとめ】
→「最果てアーケード」は原作付き、こちらはオリジナルとはいえ短編集ということで、未だ作者さんの作品を掴み切れていないのですが、とにもかくにも興味を惹かれる先生の一人です。オリジナル長編読んでみたいなぁ。


作品DATA
■著者:有永イネ
■出版社:講談社
■レーベル:ITAN
■掲載誌:ITAN
■全1巻
■価格:590円+税


■購入する→Amazon

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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
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2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




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有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
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