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Tag [新作レビュー] 2012.07.07
1106152401.jpgユキムラ「たむらまろさん」


わはははは
明日が楽しみだな〜



■誰もが教科書で名前“だけ”は知っている、坂上田村麻呂。征夷大将軍って、一体何をした人?伝説上では、金髪碧眼の超イケメンだったとか…!?そんな“美しすぎる征夷大将軍・たむらまろさん”の日常を描く、ゆるゆる歴史コメディが颯爽と登場!こんなゆかいな日常が、繰り広げられていたかも…?

 ユキムラ先生は「カーディナルスレッド」(→レビュー)の2巻を放ってこんな連載をしていたのですね…(いきなりこんな話題)。歴史の勉強で名前は覚えているけど、具体的に何やった人かよくわからない偉人の上位に食い込むであろう、坂上田村麻呂にスポットを当てた歴史コメディでございます。歴史上の人物でありながら、各地に伝説めいた様々な伝承がある坂上田村麻呂=たむらまろさん。本作では金髪碧眼の飄々とした人物として描かれていますが、これも数多有る伝説のうちの一つ。というわけで、一応モチーフになるものはあるようです。そんな彼の働きぶりを、彼ではなく彼の部下である文室綿麻呂の視点から覗くことになります。文室綿麻呂なんて一切知らなかったですが、Wikipediaにもページがある程度には有名な人物のようですね。肖像画は坂上田村麻呂共々全然違いますが。


たむらまろさん
 基本はゆるゆるコメディ。創作も多数アリというか、大枠のみ史実に基づき、その他はほぼ創作という感じです。
 
 メインキャラは前半2人、後半3人という感じ。一人は本作のメイン中のメインである坂上田村麻呂、そして前述の文室綿麻呂。自分の世界を持っていてとにかく飄々、そして自由な田村麻呂に、真面目で長い物には巻かれたい綿麻呂が振り回されるという構図。とにかく出世したい綿麻呂と、出世にはさして興味のない田村麻呂は言ってみれば真逆の性格の持ち主で、それらが噛み合ないことで物語が進行するエネルギーが生まれる印象です。
 
 物語が中盤に差し掛かると、ファンタジー要素が投入されます。伝承の中でも鬼退治をしたというものがある田村麻呂、本作でも鬼を成敗し、鬼に好かれついて来られてしまうという流れに。このついてきた鬼が、3人目のメインキャラ・鈴鹿御前。これがくりくりしていて小さなフォルムがとっても可愛らしいのですよ。鬼ではありますが、本作唯一の女性キャラというこで、是非とも押さえて頂きたい子です。
 
 帯では「坂上田村麻呂って何をした人?」なんて煽っているけれど、この作品を読んだところで坂上田村麻呂が何をしたかはわからないという(笑)とにかくキャラを押し出したゆるゆるコメディとなっているので、史実での働き等はあまり重視されず。征夷大将軍ですが、蝦夷の阿弖流為と仲良かったりするという(歴史では坂上田村麻呂に成敗されて、阿弖流為は処刑されているみたいです)。そういうところからもわかるように、決して歴史ものとして受け取っては行けません。歴史とかの要素がちょっと入った、日常コメディとして楽しんでいただければ。脱力しつつも台詞は多く、読み応えはそれなりにあります。動きも多く、退屈するような内容にはなっていません。最後はきっちり感動要素も織り交ぜており、全1巻として起承転結しっかりと作られた手堅い作品に仕上っているのではないでしょうか。
 

【男性へのガイド】
→キャラ萌え要素の強い作品ですので、当然女性向けの側面が強いのですが、コメディかつ必要以上に腐臭くないので、読むのは余裕だと思われます。女子がいないのが寂しいところかもですが。
【感想まとめ】
→こういう脱力系の歴史コメディは好きです。もうちょっとメッセージ性強くても良かったかもですが、ゆるゆるかつ1巻完結だからそこは仕方のないところなのか。本作の田村麻呂みたいな飄々としたキャラは好きなので、終始楽しく読む事ができました。


作品DATA
■著者:ユキムラ
■出版社:エンターブレイン
■レーベル:B's-LOGコミックス
■掲載誌:ビーズログ
■全1巻
■価格:円+税


■購入する→Amazon

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