
今 わからなかったあの言葉の意味が
わかりそうな兆しを感じているのは
なぜだろうか
■秀才ばかりが集う高校に、マークシートの選択運だけで奇跡の入学を果たした環。早々に勉強について行けない中、学校一の秀才・原田と出会う。人との接触を嫌い、アインシュタインを尊敬する彼と接するうちに惹かれ始める環だったが…。ごくごく普通な女の子・環と、変わり者の秀才・原田君が織り成す、凸凹ラブコメディ!
2012年最注目新人と帯にあるように、草野魚先生にとっては初の単行本となります。しかもいきなり巻数付き!すごい!作品のタイトルは「拝啓アインシュタイン」。表紙がアインシュタインをイメージしたものとなっていますが、物語は科学者が出てきたり科学的なお話が出てくる事はありません。物語の舞台となるのは、とある進学校。そんな学校に、あろうことかマークシートの選択運だけで入学してしまった女子・環が主人公になります。早速授業について行けず困っていたところ、ひょんなことから泣きつくことになったのが、同じクラスの学校一の秀才・原田君。その傍若無人とも言える態度から、周囲の人間から距離を置かれていた原田君ですが、勉強のレクチャーを請うと意外にも丁寧に教えてくれる。話を聞くと、どうも単純に人との距離の取り方がわからないだけの、変わり者のよう。そんな彼に興味を持った環は、以後ことあるごとに原田君と過ごすようになるのですが…というお話。

原田君のキャラクターをイメージしやすいのは「となりの怪物くん」(→レビュー)のハルでしょうか。とにかく勉強が出来る秀才であるけれど、愛を知らず、他人との距離の取り方がわからない。ハルの場合それゆえにとにかく近づいてくる人を信用してしまいますが、一方こちらの原田君は、それゆえに頑なに他人を拒み「人を嫌い」と言い放つような気難しさがあります。
人に触れられるのもダメで、唯一ちょっとした拍子に環のみが触れられるように。環は勉強ができないため、一方原田君は問題行動が多いために学校を辞める危機に立たされるのですが、環は原田君に励まされたからと勉強を頑張り、一方の原田君も「なぜ環のみ触れられるのか」を解明するために学校に残るという関係。この時点で二人の関係は盤石とも言えるのですが、如何せん原田君が人に対して向ける感情の様々を知らないため、なかなか関係は進展しません。
物語は、環や原田君が巻き込まれる出来事を通して、環と原田君との関係及び原田君の感情の醸成を描いていきます。環と原田君の関係の進展も良いのですが、何より原田君がひとつひとつ感情を知って行くその様子が実に微笑ましいというか。個人的にはそこが見所だと思っています。普段は無表情に冷たい事を言ったりする原田君が、環に対して時折素直で弱々しいところを見せたりするところなど、頭ナデナデしてあげたくなるような可愛らしさなんですってば!
またアインシュタインが全く関係ないかと言うとそうではなく、アインシュタインの名言を物語のシチュエーションに当て嵌めて例えるような、素敵な演出もあり。馴染み深い台詞もあったりするので、伝わりやすいです。また新人さんということもあって、最初は絵が安定しません。後半段々安定してくるので、これからも多少キャラの雰囲気は変わってくるのかも。
【男性へのガイド】
→普通の女の子視点で、変わり者の男子を見るという関係性はやはり女性こそ楽しめるものという印象が強いです。お互いにもっと主張しあうようになれば、男性も、という感じが。
【感想まとめ】
→新人さんでこれなら充分すぎるほどに面白いです。巻数つきも納得。着地点が想像しやすいので、現時点での過程をしっかり楽しめるかが鍵でしょうか。
作品DATA
■著者:草野魚
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックスクッキー
■掲載誌:クッキー
■既刊1巻
■価格:419円+税
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