作品紹介→葉月かなえ「好きっていいなよ。」
3巻レビュー→根暗と幼女とヤリマンと・・・ 葉月かなえは計り知れない 《続刊レビュー》 「好きっていいなよ。」3巻
4巻レビュー→まだまだ幅を見せつける,どんどん面白くなる 《続刊レビュー》葉月かなえ「好きっていいなよ。」4巻
5巻レビュー→努力をしてきた子は美しい:葉月かなえ「好きっていいなよ。」5巻
6巻レビュー→弱い心が人を傷つけてしまう:葉月かなえ「好きっていいなよ。」6巻
7巻レビュー→あたしは表で生きていきたいのよ:葉月かなえ「好きっていいなよ。」7巻
8巻レビュー→自分の中に“女の子”が満ちていくとき:葉月かなえ「好きっていいなよ。」8巻
関連作品レビュー→葉月かなえ「堀高ハネモノレンジャー」/ 葉月かなえ「あれもしたい、これもしたい」
葉月かなえ「好きっていいなよ。」(9) 
いつでも俺に一生懸命になってくれる
めいが好きだよ
■9巻発売しました。
黒沢大和と橘めいが付き合いはじめて1年ちょっと。文化祭でのコンテストの結果を受け、大和とめぐみがデートをすることに。平気とは言ったものの、心配を隠せないめいは、大和の兄・大地の美容室へ。そこで大和が抱えていた想いを初めて知ることに…。誰かを強く「好き」になった気持ちの行き先は…!?
〜なんとアニメ化ですって〜
驚きのニュースだったのですが、本作アニメ化されるそうです。
公式ページはこちら→http://www.starchild.co.jp/special/sukinayo/
枠的には「僕等がいた」とかと一緒になるんでしょうか?ノイタミナはなさそうと思っていたので、MXベースというのは納得。しかし公式ホームページの絵柄、めいを最初全然見つけられなかったです…。あと大和も(笑)なんか皆さん全体的に髪の毛の色に違和感が。もうちょっと明るい色なのかな、と思っていたので。そしてあさみちゃんの巨乳が一層強調されているところもちょっと気になりましたねー。公開は10月からのようです。お楽しみに。
〜めぐみの恋敗れる。そしてわかる、大和のすごさ〜
さて、そんな中本編のほうはというと、めぐみと大和の例のデートからはじまります。めぐみにとってはこれが最後のチャンスと言っても過言ではない、一世一代のデートです。自分の力で引き寄せたデートなのですから、ここはきちんと胸を張っていい所。めぐみも気合いを入れてデートに臨みますが、相手の大和はデートの体は取ってくれるものの、気持ちは常にめいの方を向いていました。好きだからこそ、そういう態度は辛いしよく伝わってくる。これはもう、自分の気持ちが入り込む余地はどこにもないと、デートを早々に切り上げ自ら身を引く事を決めます。

あまりにもサッパリとした引き際。決して軽い気持ちではないはずですが、それほどまでに大和の気持ちは頑でした。

別に邪険にするわけではないけれど、それでもめいへの想いが伝わってくるその態度。想いを寄せられるのを知っているからこそ、若干の戸惑いもあったかもしれませんが、ちゃんと自分の気持ちは返しました。こういう場面って、少しくらい八方美人的にいい顔しちゃう気もするのですが、嫌われてもしょうがないとしっかりと覚悟しているかのような、男らしい頑なな姿勢が見え隠れ。もう本当にカッコ良かったです。最近の少女マンガで一番格好いい相手役は大和なんじゃないかと、最近特に思っています。
少女マンガって付き合う以前と以降にフェーズを分けると、7:3ぐらいの比率で見どころが描かれているような気がするのですが、実際の恋愛は付き合う以前なんて割とどうでもよくて、付き合ってからの方が俄然大事なわけですよ(当たり前ですが)。付き合って以降の作中での時間の経過にも依ってきますが、そういう視点(付き合って以降重視)で見たら大和は圧倒的だな、と。あの「君に届け」の風早くんですら、ちょっと爽子とぎくしゃくしちゃったりしているし。大和のやっていることは至ってシンプル。とにかく自己評価の低い彼女を肯定して肯定して肯定して、否定する事は一切しない。ただそれが如何に大変なことか。めいの不安定さで喧嘩をすることはありそうでも、大和発進で喧嘩をする自体には、多分きっと陥らないんだろうなと、二人を見ていて思えてきます。この安定感というか、絶対的な承認装置としての存在感がとにかく抜きん出ている印象なんですよね。少しは見習いたいものです。でも難しいんだ、これが。
〜今回は大地篇〜
さて、アニメ化で物語も俄然進むかと思いきや、本編は少し寄り道をして大和の兄・大地の過去と今の恋愛について描かれました。完全に脱線と言えるのですが、お話の内容はまた葉月かなえ先生っぽいというか、好きっていいなよっぽいお話だったな、と思います。
大地の彼女(元カノ)というだけで、どんだけキレイな人だったんだろうとか思って見たら、意外や意外、非常に地味でちょっとぽっちゃりした女の子。前髪を下ろして食べ物をよく食べる姿は、めいにも重なるものがあります。兄弟で心をくすぐられるポイントが一緒なんでしょうか(笑)
このお話は、大地が死別した鈴の存在が心の中でいまだくすぶり続けている中、新たな恋愛に踏み出そうとする過程が描かれるものになっています。大地視点で描くこの物語は、割とよく見られるオーソドックスな再生物語のようなのですが、鈴と大地の過去のやりとりを見ていると、「あー、これも『好きっていいなよ。』に流れてるエッセンスと一緒だ」と感じることが。鈴と大地はつきあっていたとはいえ、イケメンでオシャレで人気者の大地に対して、地味で少し太っている鈴は、大地に対して劣等感を抱いたまま。

彼女もまた、この作品の多くの登場人物に共通する、傷を持っていたり、自己評価が低かったりする人物であるのでした。
もしかしたらこの物語で言えば、視点となるべきは大地ではなくむしろ鈴の方が自然だったのかもしれません。全く違った毛色のお話のように映りましたが、ベースを築いているのは多分一緒。ただ鈴という女性は既に亡くなっており、進まなくてはいけないのは、変わらないといけないのは大地の方であったため、ひっくり返してこんなストーリーに仕上った。そんな風に、読んでいて感じました。自分の心を隠すように、いつも前髪をたらしていた鈴の次に選んだ彼女が、今度は自分の心を剥き出しにしたようなベリーショートの女の子ってのは、“いかにも”という感じで、明るい未来が想像できます。良いお話でした。
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3巻レビュー→根暗と幼女とヤリマンと・・・ 葉月かなえは計り知れない 《続刊レビュー》 「好きっていいなよ。」3巻
4巻レビュー→まだまだ幅を見せつける,どんどん面白くなる 《続刊レビュー》葉月かなえ「好きっていいなよ。」4巻
5巻レビュー→努力をしてきた子は美しい:葉月かなえ「好きっていいなよ。」5巻
6巻レビュー→弱い心が人を傷つけてしまう:葉月かなえ「好きっていいなよ。」6巻
7巻レビュー→あたしは表で生きていきたいのよ:葉月かなえ「好きっていいなよ。」7巻
8巻レビュー→自分の中に“女の子”が満ちていくとき:葉月かなえ「好きっていいなよ。」8巻
関連作品レビュー→葉月かなえ「堀高ハネモノレンジャー」/ 葉月かなえ「あれもしたい、これもしたい」

いつでも俺に一生懸命になってくれる
めいが好きだよ
■9巻発売しました。
黒沢大和と橘めいが付き合いはじめて1年ちょっと。文化祭でのコンテストの結果を受け、大和とめぐみがデートをすることに。平気とは言ったものの、心配を隠せないめいは、大和の兄・大地の美容室へ。そこで大和が抱えていた想いを初めて知ることに…。誰かを強く「好き」になった気持ちの行き先は…!?
〜なんとアニメ化ですって〜
驚きのニュースだったのですが、本作アニメ化されるそうです。
公式ページはこちら→http://www.starchild.co.jp/special/sukinayo/
枠的には「僕等がいた」とかと一緒になるんでしょうか?ノイタミナはなさそうと思っていたので、MXベースというのは納得。しかし公式ホームページの絵柄、めいを最初全然見つけられなかったです…。あと大和も(笑)なんか皆さん全体的に髪の毛の色に違和感が。もうちょっと明るい色なのかな、と思っていたので。そしてあさみちゃんの巨乳が一層強調されているところもちょっと気になりましたねー。公開は10月からのようです。お楽しみに。
〜めぐみの恋敗れる。そしてわかる、大和のすごさ〜
さて、そんな中本編のほうはというと、めぐみと大和の例のデートからはじまります。めぐみにとってはこれが最後のチャンスと言っても過言ではない、一世一代のデートです。自分の力で引き寄せたデートなのですから、ここはきちんと胸を張っていい所。めぐみも気合いを入れてデートに臨みますが、相手の大和はデートの体は取ってくれるものの、気持ちは常にめいの方を向いていました。好きだからこそ、そういう態度は辛いしよく伝わってくる。これはもう、自分の気持ちが入り込む余地はどこにもないと、デートを早々に切り上げ自ら身を引く事を決めます。

あまりにもサッパリとした引き際。決して軽い気持ちではないはずですが、それほどまでに大和の気持ちは頑でした。

別に邪険にするわけではないけれど、それでもめいへの想いが伝わってくるその態度。想いを寄せられるのを知っているからこそ、若干の戸惑いもあったかもしれませんが、ちゃんと自分の気持ちは返しました。こういう場面って、少しくらい八方美人的にいい顔しちゃう気もするのですが、嫌われてもしょうがないとしっかりと覚悟しているかのような、男らしい頑なな姿勢が見え隠れ。もう本当にカッコ良かったです。最近の少女マンガで一番格好いい相手役は大和なんじゃないかと、最近特に思っています。
少女マンガって付き合う以前と以降にフェーズを分けると、7:3ぐらいの比率で見どころが描かれているような気がするのですが、実際の恋愛は付き合う以前なんて割とどうでもよくて、付き合ってからの方が俄然大事なわけですよ(当たり前ですが)。付き合って以降の作中での時間の経過にも依ってきますが、そういう視点(付き合って以降重視)で見たら大和は圧倒的だな、と。あの「君に届け」の風早くんですら、ちょっと爽子とぎくしゃくしちゃったりしているし。大和のやっていることは至ってシンプル。とにかく自己評価の低い彼女を肯定して肯定して肯定して、否定する事は一切しない。ただそれが如何に大変なことか。めいの不安定さで喧嘩をすることはありそうでも、大和発進で喧嘩をする自体には、多分きっと陥らないんだろうなと、二人を見ていて思えてきます。この安定感というか、絶対的な承認装置としての存在感がとにかく抜きん出ている印象なんですよね。少しは見習いたいものです。でも難しいんだ、これが。
〜今回は大地篇〜
さて、アニメ化で物語も俄然進むかと思いきや、本編は少し寄り道をして大和の兄・大地の過去と今の恋愛について描かれました。完全に脱線と言えるのですが、お話の内容はまた葉月かなえ先生っぽいというか、好きっていいなよっぽいお話だったな、と思います。
大地の彼女(元カノ)というだけで、どんだけキレイな人だったんだろうとか思って見たら、意外や意外、非常に地味でちょっとぽっちゃりした女の子。前髪を下ろして食べ物をよく食べる姿は、めいにも重なるものがあります。兄弟で心をくすぐられるポイントが一緒なんでしょうか(笑)
このお話は、大地が死別した鈴の存在が心の中でいまだくすぶり続けている中、新たな恋愛に踏み出そうとする過程が描かれるものになっています。大地視点で描くこの物語は、割とよく見られるオーソドックスな再生物語のようなのですが、鈴と大地の過去のやりとりを見ていると、「あー、これも『好きっていいなよ。』に流れてるエッセンスと一緒だ」と感じることが。鈴と大地はつきあっていたとはいえ、イケメンでオシャレで人気者の大地に対して、地味で少し太っている鈴は、大地に対して劣等感を抱いたまま。

彼女もまた、この作品の多くの登場人物に共通する、傷を持っていたり、自己評価が低かったりする人物であるのでした。
もしかしたらこの物語で言えば、視点となるべきは大地ではなくむしろ鈴の方が自然だったのかもしれません。全く違った毛色のお話のように映りましたが、ベースを築いているのは多分一緒。ただ鈴という女性は既に亡くなっており、進まなくてはいけないのは、変わらないといけないのは大地の方であったため、ひっくり返してこんなストーリーに仕上った。そんな風に、読んでいて感じました。自分の心を隠すように、いつも前髪をたらしていた鈴の次に選んだ彼女が、今度は自分の心を剥き出しにしたようなベリーショートの女の子ってのは、“いかにも”という感じで、明るい未来が想像できます。良いお話でした。
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