
救うよ
翔は
私が救う
■「過去にいる10年前の私。
あなたはこの先たくさんの喜びや幸せが待っています。
どうかその幸せに気づいて。
どうかその幸せをこぼさないように…」
高2の春。菜穂の元に1通の手紙が届きます。差出人は…10年後の自分。そこに書いてあるのは、これから菜穂に起こる出来事と、そのときに取って欲しい行動。そしてそれは次々と現実になり…。
「夢見る太陽」(→レビュー)を完結させた高野苺先生の新連載作品です。いやこれがなかなか面白かった。物語の舞台となるのは、長野県松本市。そんな甲信越の地方都市で、ごくごく普通の高校生活を送っている菜穂が、物語のヒロインです。16歳の春、彼女の元に1通の手紙が届きます。差出人は、10年後の自分。そこに書かれていたのは、これから起こる出来事とその時に自分が取った行動、そしてその時どう想い後悔し、今の菜穂にどう行動して欲しいか。そしてその大半は、東京から転校してくる一人の転校生・成瀬翔についてのもの。10年後の自分が叶えて欲しい願いとは、果たして菜穂はそれを叶えることができるのか、キラキラ輝くちょっと不思議で切ない青春物語がはじまります。
10年後の自分から届く手紙には、これから起こる事が書いてあり、そして起こして欲しい行動が書いてある。わざわざこんな手紙を送ってくるのは、転校生の成瀬翔が、不慮の事故で亡くなってしまうことをなんとか食い止めて欲しいから。そのことを知って、菜穂は手紙に書いてある通りに行動するのですが、その要求はなかなか勇気の要るものもあります。

「お弁当を作ってあげて欲しい」「ちゃんと話しかけてあげて欲しい」。誰にだって、あのときああしておけばよかったという後悔はあるはずです。けれどもその時を生きている自分達は、その結末を知らないし、その時が精一杯。簡単にできることだったら、きっとその時やっているはずなんです。この物語で面白いのは、未来の自分から指示があっても、勇気が出なくて結局できなかったりすることがあること。ただ未来を知っているというだけで、中身はそのまま自分なんですよね。叶えられたり叶えられなかったり、菜穂のイレギュラーな行動は、物語における不確定要素となり、物語を思わぬ方向へ動かして行きます。

物語は菜穂と成瀬翔の二人だけで回るのではなくて、菜穂が属している仲良しグループという単位で描いて行きます。そういう意味では、ちょっと青春群像的な要素も含んでいるのかも。この辺はいかにも別冊マーガレットという感じで、きっと物語が進むにつれて、脇役達も一層自分達の色を出して物語を彩ってくれることでしょう。
松本市ってなんだか青春群像と好相性なイメージが強いのですが、たぶんそれってドラマの
絵柄は前にも増してちょっと眠たげ(瞼重ため)な感じになった印象。巻末にて、敢えて前の絵柄に戻したみたいですね。シャープさがない丸みを帯びた描線が、懐かしさを生み出しているような気がしなくもありません。とにかくこれは期待できそうな一作。「君に届け」(→レビュー)や「アオハライド」(→レビュー)など、厚みの有る連載陣が揃っている別冊マーガレットですが、本作の登場によって一層厚みが増しそうな勢いです。オススメ!
【男性へのガイド】
→こういう話好きな人多いとおもうんですよ。女の子視点であろうとなんだろうと。青春群像的に描かれているので、きっととっつきやすいはず。
【感想まとめ】
→これは期待の新作。舞台が長野というひいき目を差し引いても、余り有る面白さだと思います。
作品DATA
■著者:高野苺
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■既刊1巻
■価格:400円+税
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