
あえなくてもやっぱり
ずっと好きで
■御徒町と神田のあいだにある、秋葉原を訪れる若者たち。彼・彼女らは、かけがえのない瞬間を、他でもない秋葉原で過ごしていた。多感な十代の若者達が、点と線でつながる…。不思議な縁でつながってゆく、キラキラっと光り輝く青春オムニバスストーリー!
スピカで連載していた、平尾アウリ先生のオムニバスストーリーでございます。スピカはこれまでWeb媒体だったのですが、それとは別に昨年の10月に紙媒体も創刊されたのです。連載陣はなかなか味のあるメンバーで、筆頭は「トーチソング・エコロジー」(→レビュー)のいくえみ綾先生でしょうか。一応“少女漫画誌”と銘打っているのですが、そこまで女性向け感マックスの作品は少ない印象。本作もそんな中のひとつで、主な舞台となるのはメイドカフェ、そして物語を彩るのは、そこで働くメイドさんであったり、お客さんであったり。秋葉原のとあるメイドカフェを接点として、そこに関わる少年少女のつながりを、瑞々しく描き出して行きます。
メイドカフェを舞台にしていますが、メイドさんだけ描いているかと言えばそうではなく、実に様々な人物を描いて行きます。スタートはもちろんメイドさんなのですが、そこからメイドさんに恋する男の子や、メイドカフェの裏方バイトの男子だったり、メイドさんのお友達だったり…。基本的には高校生の多感な時期を過ごす少年少女が、物語の中心に据えられます。

位置付けは青春オムニバス。恋愛ネタに限るわけではないですが、やっぱりその分量は多め。高校生ならではの瑞々しい恋愛模様に、秋葉原なネタや人物像が良い形でスパイスに。
そんな彼らが抱えているのは、ちょっとした悩みや不満。もう本当に小さな、だけども彼らにとっては割と深刻な悩みなんです。例えば勉強に身が入らないとか、愛されたい願望が強すぎるとか、彼氏に言えない秘密があるとか…。1話完結の読切りタイプということで、当然の事ながら最後には救いが提示されるわけですが、それも完全なる救済というよりは、解決の糸口が見つかったり、悩みがあるべきところに落ち着いたりという程度。意外な程あっさりしているため、メイドカフェというある種色モノを用いつつも、本当にある日常を切り取っているような感覚があります。良いお話なんですけど、だからといって特筆すべきイベントとかもないしで、なかなか説明し辛いものがあるのですが、これは読んでもらわないとわからないかもです。
個人的にお気に入りだったのはラスト2話、メイドカフェのメイドさんと、そんな彼女に惚れてしまった裏方バイトくんのお話でしょうか。チャラいけれど、彼なりに積極果敢にアタックするも、二次元の方がよいと見向きもされないバイト君が哀愁と笑いを誘います。こういう積極性とバカさかげんが羨ましいというか、若くてステキだな、と。
平尾アウリ先生の作品は初めて手に取ったのですが、すごくキラキラした目を描かれるんですね。男の子も女の子もみなみなお人形さんみたいで、非常に印象的でした。
【男性へのガイド】
→スピカは割と男性でも読める内容になっているんじゃないかと思いますよ。本作も男性メインの話があったりですし。取っつきやすいと思います。
【感想まとめ】
→なんでか印象に残るお話が多かったのは、お話が面白かったからなのか、雰囲気が良かったからなのか。説明しがたい魅力に溢れる、不思議な温かさのある一作でした。
作品DATA
■著者:平尾アウリ
■出版社:幻冬舎
■レーベル:コミックスピカ
■掲載誌:comicスピカ
■全1巻
■価格:619円+税
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