小山田容子「ちっちゃな頃からおばちゃんで」(1)
そうだな
同じものなんて
なにひとつない■里谷淳子28歳、銀行員、彼氏なし。休日は実家の定食屋を手伝う親元ガール。面倒見がよく、小さい頃のアダ名は「おばちゃん」。弟には甘く、自分には何かと依存する母。もちろんお世話になってきたのはわかっているけれど、こっちだってお世話している。そんな母から逃れるべく、淳子は初めての一人暮らしを決意するのだが…。心や優しき親元ガール、三十路手前の小さな反乱!
小山田容子先生のKISS連載作でございます。実家暮らし独身OLが、三十路手前であれこれと考える、そんなお話。表紙を見ると何やら体格の良い女性が描かれていますが、彼女が本作のヒロイン・淳子。表紙はちょっと変顔になっちゃっているだけで、普段はぽっちゃりした普通の女性という感じ。実家は寂れた商店街の定食屋で、土日や夜間は店を手伝い、昼間は地元の銀行で働いています。彼氏はなしで、恋人候補もなし。家と職場を行き来して、気がつけば30歳が目前に迫っていました。元来の面倒見の良さも手伝って、母は自分を手放さない気満々。家に居るのが当たりまえ、手伝ってくれるのが当たり前…そんな態度に小さな反骨心が芽生えた淳子は、密かに一人暮らしをする計画を練り始めるのですが…というお話。
作者の小山田先生自身も、金融機関で働いていた経歴があることから、このお話のベースは割とリアルな体験談もあるんじゃないかと勘ぐってしまいます。ヒロインの淳子は長女。弟が一人いますが、彼はまだ大学生で親に溺愛されて育っており、姉の淳子は彼の面倒を見たり、何かと我慢させられたりと苦労をしてきたタチ。小さな頃からそんなだから、すっかりそれが板について、ついたアダ名は「おばちゃん」。今もそれが抜けずに、何かと親の面倒を見ているのでした。所謂よくできた長女ゆえの気苦労や損な役回りを、本当にリアルな感じで描いているのですよ。

こんな表紙で勘違いするかもしれませんが、決してコメディではないんです。笑わせようという感じは全然ないです。むしろ悩みは尽きず、気が滅入るのでは…なんてテンションにすらなりかねない感じなのですが、それはふっくら体型が上手くカバーしてくれているのか。
私は長男なので、彼女の辛さが分かる部分もあるのですが、一方で大学から上京してそのままなので、真の意味では共感できていないのだと思います。「実家暮らし」「年の離れた弟がいる」なんて条件に引っ掛かる女性は、多分ド共感できるんじゃないでしょうか。反骨精神を燃やして一人暮らし…なんてあらまし紹介をしましたが、あくまで計画段階。さて、結局面倒見てしまう彼女は、一人暮らしができるのか。スケールは小さいけれど、その分等身大の目線で楽しむことが出来る一作です。
【男性へのガイド】→長男も行けるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。でも長男も割と自由か。
【感想まとめ】→全くハデさはありませんでしたが、しっかり地に足ついた面白い作品でした。安心読める安定感もあるし、だからといって凝り固まった動きのないお話というわけでもなく、良いバランスです。
作品DATA■著者:小山田容子
■出版社:講談社
■レーベル:KC KISS
■掲載誌:KISS
■既刊1巻
■価格:562円+税
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