作品紹介はこちら→*新作レビュー* ろびこ「となりの怪物くん」
2巻レビュー→《気まぐれ続刊レビュー》ろびこ「となりの怪物くん」2巻
3巻レビュー→三者三様の考え方…女の子たちがとっても魅力的です《続刊レビュー》「となりの怪物くん」3巻
4巻レビュー→あさ子の可愛さに、目が離せない!《続刊レビュー》ろびこ「となりの怪物くん」4巻
5巻レビュー→あなたがわたしにくれたもの:ろびこ「となりの怪物くん」5巻
6巻レビュー→頑張る女の子は、かわいい:ろびこ「となりの怪物くん」6巻
7巻レビュー→それでも、人を求めてしまう:ろびこ「となりの怪物くん」7巻
8巻レビュー→はじまりはいつもこの階段で:ろびこ「となりの怪物くん」8巻
9巻レビュー→選択したときの後悔を無くすために:ろびこ「となりの怪物くん」9巻
ろびこ「となりの怪物くん」(10) 
多分僕は
きっとずっと溺れてる。
■10巻発売しました。
長いすれ違いの末に付き合い始めることになった水谷雫と吉田春。なかなか付き合った実感を得ることができなかった雫…。だけど高2の夏休みにやっとハルと一緒にいる良さが実感できて順調な日々。でも、吉田家に何かあったらしく、今まで聞きたくても聞いてこなかったことが気になりはじめ…。
〜アニメ化です〜
この度アニメ化が決定しました!いつかあるんじゃないかと思っていたのですが、ついに!すごく嬉しいです!公式サイトを見ると、そこには色付きの彼らが。なんだかタッチがろびこ先生のものと違って少し違和感はありますが、それはアニメ化された際の通過儀礼みたいなもの。ヒロインの雫役は、戸松遥さんがつとめるのだそう。個人的には大島さんの役を花澤香菜さんがやられるという所が楽しみでございます。放送開始は今年の10月から。テレビ東京系で放映となるようです。「好きっていいなよ。」(→レビュー)といい、デザート乗りに乗ってますな。
〜今まさに佳境を迎えている〜
さて本作も10巻という大台に乗りました。本ブログでも単行本1巻からずっと追いかけているわけですが、もう10巻ですか…。すごく勝手に、感慨深いものを感じています。さてそんな中本編の方はと言うと、今までにない程にシリアス。それぞれメインキャラのバックグラウンドが徐々に明らかになり、不穏な空気が流れはじめています。恐らく現在が一番の佳境になるのではないでしょうか。「怪物くん」と揶揄されるハルが相手役である以上、ありがちな事故や転校なんていうイベントは物語的に全く意味はなく、他でもない彼の内面理解といったアプローチからの救いが大きな意味を持ってくるイメージ(あくまで個人的な予想というか概観でしかありませんが)。そして今まさに、そこに近づかんとしているような感じがあります。これから雫とハルはどうなるのか…を考える前にですね、とりあえず雫の弟の隆也くんが10巻では無性に可愛かったということを書かねばなるまい。
〜弟ちゃんがかわいい〜
今までその存在は認識してはいたものの、無愛想でクールな男の子という印象しかなかった隆也くん。お姉ちゃん好きで、ハルのことは少し苦手と言った感じだったのですが、優山に対しては違う印象を持ったようです。というのも、分かりやすい形で…

食べ物に釣られる
こんなホクホク顔今まで見たことないですよ。明らかにテンションが上がっているのがわかります。どちらかというと感情を閉じこめがちであった彼が、ここまで出すとは。作中でハルは雫のことを「わかりやすい」と言っていましたが、この愛でつつ見守る感じ、すごくハルの気持ちがわかった気がします(笑)その後は割と普通のテンション。文化祭に訪れても、ハルの誘いに対して目も合わさず「いらない」とばっさり斬り捨てるあたりはさすがでございます。
〜雫とハルの価値観を形成するもの〜
さて、先にも書いた通り、現在物語は佳境を迎えておりまして、なかなか重苦しい雰囲気となっています。ハルと雫の関係が、少しずつ変質していく様子が描かれており、決定打となったのは雫の一言。

私はハルとは違う
分かり合えると思っていた、どこかで一緒だと思っていた二人の間に生じた、自覚出来る差異。その根源になっているのが、二人の価値観の違いでした。優山の誕生パーティーで、ふとハルが雫に問いかけた質問。「自分の価値を決めるのは誰か」。それに対し、雫と貼るの意見は真っ向から対立しました

雫は「自分」だと言い、ハルは「他人」だと言った
これは二人の価値観を端的に示していて、今回はそのルーツとなる部分が双方描かれています。まずは雫ですが、彼女の「価値を認めるのは自分」という発言は少し捻ったもので、基本的には「他人から認められたい」という願望がそこにはあるようです(直後の発言からもわかりますが)。けれども、他人に認められるにはまずそこに、かけられる期待がないといけない。元々彼女が勉強を始めたのも、母が家を離れたことをきっかけに、「ただ振り向いて欲しかった」と思ったから。誰かから何か期待をかけられ、それに応えるという形で努力をしたというわけではありません。それゆえに、もう認めてあげられるのは自分しかいないでしょうと、今のような発言をするようになったようです。
一方のハルですが、元々は優山をすごく慕っている快活な男の子でした。幼少期の彼の価値観は、イコールで優山の笑顔。けれども優山は、自分にないものを持っているハルに嫉妬し、ハルを拒絶してしまいます。ハルは一番信頼を置いていた人物に拒絶され、今なお新たな居場所を探し出せていない状態。彼はなお、新たな居場所=他人からの承認を求めて日々を生きているのでした。彼にとっての「他人」というのもまた厄介で、恐らくこれはそれなりに距離が近い人物でないとダメ。また表層的な承認ではなく、心の底からつながれるような人を所望しているような感があります。
お互いに求めているのは誰かからの承認のはずなのですが、「かけられる期待の有無」そして「近しい人物からの拒絶の有無」によって、少しずつ拗れてしまった。それぞれが無い物ねだりというか、だからこそ相手が羨ましいし、腹がたつ。
さて、これからお互いに違いを自覚しあい、それを受け入れる過程が待っているかと思うのですが、割と頑固そうなこの二人、どう歩み寄って行くのでしょうか。気になるのは優山とハルの関係なんですよね。ハルにとっての承認欲求の向け先である一番の「他人」が、雫に置き換わるだけで、優山との関係は修復されないまま、とかだと結構悲しいというか。ここまで描かれているんだからさすがにこのままおざなりということはないと思いますが、果たして。あと何気に気になるのが、夏目さんとササヤンですってば!今ではこの二人が一番のニヤニヤポイントというね。11巻は、出来れば楽しい雰囲気の中物語が進んでくれるとちょっと嬉しいです。
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2巻レビュー→《気まぐれ続刊レビュー》ろびこ「となりの怪物くん」2巻
3巻レビュー→三者三様の考え方…女の子たちがとっても魅力的です《続刊レビュー》「となりの怪物くん」3巻
4巻レビュー→あさ子の可愛さに、目が離せない!《続刊レビュー》ろびこ「となりの怪物くん」4巻
5巻レビュー→あなたがわたしにくれたもの:ろびこ「となりの怪物くん」5巻
6巻レビュー→頑張る女の子は、かわいい:ろびこ「となりの怪物くん」6巻
7巻レビュー→それでも、人を求めてしまう:ろびこ「となりの怪物くん」7巻
8巻レビュー→はじまりはいつもこの階段で:ろびこ「となりの怪物くん」8巻
9巻レビュー→選択したときの後悔を無くすために:ろびこ「となりの怪物くん」9巻

多分僕は
きっとずっと溺れてる。
■10巻発売しました。
長いすれ違いの末に付き合い始めることになった水谷雫と吉田春。なかなか付き合った実感を得ることができなかった雫…。だけど高2の夏休みにやっとハルと一緒にいる良さが実感できて順調な日々。でも、吉田家に何かあったらしく、今まで聞きたくても聞いてこなかったことが気になりはじめ…。
〜アニメ化です〜
この度アニメ化が決定しました!いつかあるんじゃないかと思っていたのですが、ついに!すごく嬉しいです!公式サイトを見ると、そこには色付きの彼らが。なんだかタッチがろびこ先生のものと違って少し違和感はありますが、それはアニメ化された際の通過儀礼みたいなもの。ヒロインの雫役は、戸松遥さんがつとめるのだそう。個人的には大島さんの役を花澤香菜さんがやられるという所が楽しみでございます。放送開始は今年の10月から。テレビ東京系で放映となるようです。「好きっていいなよ。」(→レビュー)といい、デザート乗りに乗ってますな。
〜今まさに佳境を迎えている〜
さて本作も10巻という大台に乗りました。本ブログでも単行本1巻からずっと追いかけているわけですが、もう10巻ですか…。すごく勝手に、感慨深いものを感じています。さてそんな中本編の方はと言うと、今までにない程にシリアス。それぞれメインキャラのバックグラウンドが徐々に明らかになり、不穏な空気が流れはじめています。恐らく現在が一番の佳境になるのではないでしょうか。「怪物くん」と揶揄されるハルが相手役である以上、ありがちな事故や転校なんていうイベントは物語的に全く意味はなく、他でもない彼の内面理解といったアプローチからの救いが大きな意味を持ってくるイメージ(あくまで個人的な予想というか概観でしかありませんが)。そして今まさに、そこに近づかんとしているような感じがあります。これから雫とハルはどうなるのか…を考える前にですね、とりあえず雫の弟の隆也くんが10巻では無性に可愛かったということを書かねばなるまい。
〜弟ちゃんがかわいい〜
今までその存在は認識してはいたものの、無愛想でクールな男の子という印象しかなかった隆也くん。お姉ちゃん好きで、ハルのことは少し苦手と言った感じだったのですが、優山に対しては違う印象を持ったようです。というのも、分かりやすい形で…

食べ物に釣られる
こんなホクホク顔今まで見たことないですよ。明らかにテンションが上がっているのがわかります。どちらかというと感情を閉じこめがちであった彼が、ここまで出すとは。作中でハルは雫のことを「わかりやすい」と言っていましたが、この愛でつつ見守る感じ、すごくハルの気持ちがわかった気がします(笑)その後は割と普通のテンション。文化祭に訪れても、ハルの誘いに対して目も合わさず「いらない」とばっさり斬り捨てるあたりはさすがでございます。
〜雫とハルの価値観を形成するもの〜
さて、先にも書いた通り、現在物語は佳境を迎えておりまして、なかなか重苦しい雰囲気となっています。ハルと雫の関係が、少しずつ変質していく様子が描かれており、決定打となったのは雫の一言。

私はハルとは違う
分かり合えると思っていた、どこかで一緒だと思っていた二人の間に生じた、自覚出来る差異。その根源になっているのが、二人の価値観の違いでした。優山の誕生パーティーで、ふとハルが雫に問いかけた質問。「自分の価値を決めるのは誰か」。それに対し、雫と貼るの意見は真っ向から対立しました

雫は「自分」だと言い、ハルは「他人」だと言った
これは二人の価値観を端的に示していて、今回はそのルーツとなる部分が双方描かれています。まずは雫ですが、彼女の「価値を認めるのは自分」という発言は少し捻ったもので、基本的には「他人から認められたい」という願望がそこにはあるようです(直後の発言からもわかりますが)。けれども、他人に認められるにはまずそこに、かけられる期待がないといけない。元々彼女が勉強を始めたのも、母が家を離れたことをきっかけに、「ただ振り向いて欲しかった」と思ったから。誰かから何か期待をかけられ、それに応えるという形で努力をしたというわけではありません。それゆえに、もう認めてあげられるのは自分しかいないでしょうと、今のような発言をするようになったようです。
一方のハルですが、元々は優山をすごく慕っている快活な男の子でした。幼少期の彼の価値観は、イコールで優山の笑顔。けれども優山は、自分にないものを持っているハルに嫉妬し、ハルを拒絶してしまいます。ハルは一番信頼を置いていた人物に拒絶され、今なお新たな居場所を探し出せていない状態。彼はなお、新たな居場所=他人からの承認を求めて日々を生きているのでした。彼にとっての「他人」というのもまた厄介で、恐らくこれはそれなりに距離が近い人物でないとダメ。また表層的な承認ではなく、心の底からつながれるような人を所望しているような感があります。
お互いに求めているのは誰かからの承認のはずなのですが、「かけられる期待の有無」そして「近しい人物からの拒絶の有無」によって、少しずつ拗れてしまった。それぞれが無い物ねだりというか、だからこそ相手が羨ましいし、腹がたつ。
さて、これからお互いに違いを自覚しあい、それを受け入れる過程が待っているかと思うのですが、割と頑固そうなこの二人、どう歩み寄って行くのでしょうか。気になるのは優山とハルの関係なんですよね。ハルにとっての承認欲求の向け先である一番の「他人」が、雫に置き換わるだけで、優山との関係は修復されないまま、とかだと結構悲しいというか。ここまで描かれているんだからさすがにこのままおざなりということはないと思いますが、果たして。あと何気に気になるのが、夏目さんとササヤンですってば!今ではこの二人が一番のニヤニヤポイントというね。11巻は、出来れば楽しい雰囲気の中物語が進んでくれるとちょっと嬉しいです。
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