
お前の心など
死んでいるのも同然だ
■楠そよは、目立たないが自他共に認める「いい子」としてすごす中学2年生。生徒会長で人気者の涼平先輩に憧れを抱いている。しかし、万能だけど空気が読めない美少女・魔美坂リサが転校してきてから、そよの生活は一変する。実はリサは魔界から、ある目的のためにやってきた魔女だった!リサの手助けをすることになったそよは、初めて知る自分の感情に直面していく。そして、そよは魔女の親友になれるの…!?
「シトラス」(→レビュー)、「もう卵は殺さない」(→レビュー)などの香魚子先生の新作でございます。以前「伯爵と妖精」(→レビュー)の原作付き作品を連載していましたが、今度も原作付き。原作者の柚木麻子先生は小説家でいらっしゃいますが、本作は小説コミカライズではなく、マンガ用のオリジナルになるようです。
表紙やタイトルからも窺えるかと思いますが、本作別冊マーガレットとしては珍しいファンタジー作品。しかも王道、魔法使いが登場します。本作の物語の主人公は魔法使いではなく、ごくごく普通の人間の女の子・楠そよ。どこにでもいるような中学生で、空気を読んでその場に溶け込む「いい子」です。女子中学生らしく、それなりに恋もしています。イケメンで優しい生徒会長の涼平先輩に憧れを抱いており、妄想に花膨らませるのが日々の楽しみ。そんな平穏な彼女の毎日が、ある日を境にがらっと変わることになります…

それが、転校生・魔美坂リサの登場。とんでもない美女でありながら、どこか言動が変わっていて、クラスの中心的人物に楯突いたりと、見ていて危なっかしい。どうにもおかしいと思っていたある日、彼女が魔界から来た魔法使いで、魔界を救うために人間界に来ていることを知ってしまいます。魔界を救うには、心が綺麗なプリンセスを探さないといけないらしく、お誂え向きに、そよはリサの手伝いをさせられることになってしまうのですが…というお話。いやーリサさん、かわいい、美しい。
あらましを読んでも分かる通り、割とオーソドックスで、すこし懐かしさを感じるようなストーリーとなっています。これが終始王道を辿るのだとしたら、ヒロインがそのプリンセスになるのですが、今のところそんな兆候はなし。ヒロインは確かに「いい子」ではなるのですが、空気を読んでいい子にしているというのは、魔界的な尺度で言うと決して美徳ではないようです。むしろ自分の意志をしっかりと持ち、正直さと純真さに溢れた女性こそがプリンセスに相応しいようです。プリンセスか否かを量るのが、心に咲く花。リサは魔法を使ってその花を見出し、そよはそのサポート(雑用?)をあれこれするという役回りです。
とことん空気を読む気弱なヒロインと、とことん空気を読まないゴーイングマイウェイな相手役ということで、ある意味相性は良し(物語的に)。当人たちの相性は知らないですが、お互いに足りない部分を補い合って、テンポよく物語は進んでいきます。これからシリアスな部分が出てきた時にどうなるかはわかりませんが、今のところコメディ要素も多く明るい雰囲気での進行で、香魚子先生のオリジナル作品とは少し印象が異なります。なんかわけわからんマスコット的なキャラクターとか出てくるし。原作付きだと、漫画家さんの違った一面が見れて良いですね。

わけわからんマスコットキャラクター。一応これも魔物的なやつです。本来は彼がサポート役だったのですが、この世界で読んだ本に感銘を受けて、小説家を目指しはじめます。てかブログのコメントすごすぎです。うちも肖りたいものです。
なんかこうお話的にはりぼんとかなかよしとかに載ってたら一番しっくりくるような感じです。主人公達が中学生って所や、マスコットの登場などの要素などがあるところから。しかしながら掲載誌は別冊マーガレット…ということで、この後もうちょっと大人な展開になってくるのかもしれません。また本格的な恋愛物語になる感じは今のところなし。主人公とリサとの百合めいた友情…ってところが本線でしょうか。何はともあれ、2巻以降本格的に動き出してきそうで、楽しみです。
【男性へのガイド】
→ちょっとファンタジー少女マンガのそれっぽすぎて辛い方もいるかも。とはいえ香魚子先生の作品は男女共にファンが多く、既存ファンの方は問題なしかと。ご新規さんはわからんです。
【感想まとめ】
→香魚子先生の原作付きは手堅い…ということで当然オススメしますが、本作は前作よりもより個人的な期待値高めでございます、はい。
作品DATA
■著者:香魚子/柚木麻子
■出版社:集英社
■レーベル:別冊マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■既刊1巻
■価格:400円+税
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