
晴れの日も
そうじゃない日も
私たちは前を見て
歩き続ける
■明るい笑い声が絶えない、女ばかりの家族・時任家。祖母に母、そしてそんな母が女手一つで育てた2人娘に、母の姉が時折訪れる。全員揃えば女ばかりが5人もいる、賑やかな家。皆がみんな仲良く明るいが、一方で、家族だからこそ口にできない複雑な想いを、それぞれが抱えていた…。晴れの日もあれば、雨の日もある。だから人生は面白い…。
「きみが心に棲みついた」(→レビュー)や「てのひらサイズ」(→レビュー)などを描かれている天堂きりん先生の、officeYOUでの連載作になります。表紙がなんともかわいらしいですね。主人公は表紙に描かれている女性…ではなく、複数人の視点がお話のたびに入れ替わって進行していく、オムニバス形式のお話となっています。彼女もまた、主人公のひとり。物語は、表紙の彼女を含む、女ばかりの家族を描いた内容。祖母、母、娘二人と叔母が一人の5人が集う、一風変わったその家は、いつも明るく笑いが絶えない家。けれどもそれぞれがそれぞれに、大なり小なりの悩みを抱えており、人知れず苦悩している…というようなお話です。

なんで女性ばかりの家かというと、3世代家族でいう“母”が、娘を二人生んでその後離婚、祖父は既に亡くなっており、出入りしている叔母は生涯独身を貫いているという状況から。一番下の娘も既に社会に出て働いており、そろそろ結婚も視野に…という年頃になっています。だから、誰を視点にしても物語が成り立つという(さすがに祖母は主人公にはならないですが)。関西弁で、より賑やかという。
離婚して苦労ばかりしてきた母に、何を思ってか生涯独身の叔母に、結婚したくても様々な理由でしない、できない妹たち…。結婚、子育て、恋愛…その歳なりの、重ねて来た過去と想いというものがあり、抱える悩みも様々です。この抱える悩みがとってもリアルというか、自分の人生に置き換え可能なもので、同時にそれを形成した過去の出来事も面白く描かれています。落語や大道芸など、落とし込むイベントやモチーフは一風変わったものが多い印象ですが、その根底にあるものは誰もが抱えうる悩み。それらが、物語の最後でフッと溶け出し、明るい日差しが差し込む。どのお話も、いい終わり方するんですよ、これが。

個人的にお気に入りだったのは、2話目ですかね。娘の窓花がかつて恋していた男子に、社会人になって久しぶりに再会し、ものすごく意識してしまうというもの。家族間のつながりを描いたお話ももちろん好きなのですが、やっぱり天堂きりん先生は恋愛だと思うんですよ(あくまで個人的な所感)。割と痛々しかったり、クセのある恋愛話が多い中、このストーリーは極めて素直。読後感も非常に良く、そして1巻ラストを美しく、そして感動的にしめる大きなきっかけにもなるわけで。
しかしこれ、最後綺麗に閉めすぎちゃって、2巻以降どうするんだろうという想いも。正直ラストの締めくくりを見ると、「あ、これで完結か。感動した、良かった。」って感じになるのですよ(笑)もちろん続きを読めるのはとても嬉しいのですが、この後どのような展開になるのでしょう。その辺含めて楽しみです。
【男性へのガイド】
→女性ばっかりで、エピソードも女性の方がより共感できるものなのだと思います。が、天堂きりん作品は男性だって楽しめるはず。
【感想まとめ】
→面白かったです。一旦落としておいて、最後しっかり温かく感動させるという。人間臭いお話というか、無駄に綺麗にしないのが素敵です。オススメで。
作品DATA
■著者:天堂きりん
■出版社:集英社
■レーベル:officeYOUコミックス
■掲載誌:officeYOU
■既刊1巻
■価格:562円+税
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