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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2012.12.06
1106228721.jpg池ジュン子「BEAR BEAR」(1)


これって恋だよね
前に進めたよね



■渕中春佳、高校1年生。彼女が今夢中なもの…それは、ローカルでパートの屋上にいる熊野着ぐるみ♡男の人が大の苦手で、今まで触れたことはおろか、話をしたこともない。可愛い物が大好きな春佳は、“彼”にどんどん惹かれていく…。顔もみたことがない彼への想いは報われる!?着ぐるみ男子との初恋物語が、今始まる!!

 白泉社の新人さん、池ジュン子先生のデビュー単行本になります。白泉社なので「新人さん」と言っても、ザラにデビューから5年6年経ってたりすることがあるわけですが、こちらの池ジュン子先生は、雑誌初掲載が2010年ということで、かなり早い時期での単行本でビューでございます。おめでとうございます。
 
 さて本作ですが、ちっちゃいロリっぽい女子高生が、屋上の着ぐるみに恋してしまうというお話でございます。「着ぐるみとの恋」とだけ言うとなんだか突飛なお話に思えますが、着ぐるみの中身は同じ高校の同級生の男の子でした、というオチ。しかしながら着ぐるみに恋してしまった背景には、ヒロインの男性に対する強い恐怖心というものがあり、いざ仲良くなっても、頭の被り物がなくてはまともに会話もできない状態。そのため、外にデートに行く時も、相手役の男の子は被り物常備という異様な光景が繰り広げられます。


bearbear1-1.jpg
これが日常風景。異常です。異常なんです。けれどもこれが、一つの愛の形なんです。


 白泉社デビュー間もない作者さんにお決まりのパターンですが、早々に恋人の関係になって、そこからどう仲を深めて行くかというところが、物語のミソになります。本作も1話目にしてつき合うことになるのですが、着ぐるみなしでは会話もできないという異常っぷり。付き合いたての第一段階はまず手をつなぐことだったりするものですが、本作の場合はまず、被り物を取った彼の顔を直視して、言葉を交わすことというのだから、どれだけ奥手なんだよ、と。なおクラスメイトからは初めて手をつなぐまでどれくらいかかるか、という賭けで、“年”単位で出される程度には、周囲にもそれを認識されているようです。


bearbear1-2.jpg
 着ぐるみに恋してしまうくらいですから、ヒロインの春佳はとっても純粋で可愛らしい女の子です。身長も145センチ程度と、とってもミニマム。男性恐怖症でおどおどしつつも、一度思い込んだら突っ走ってしまう単純さを持ち合わせていて、クルクル変わる表情を見ているだけでも飽きないタイプかと思われます。実際可愛らしい描写がたくさん出てきて、既に管理人、心を掴まれてしまいました。

 
 一方の着ぐるみ男子・犬飼くんは、そんな彼女の心を理解して彼女のペースに合わせます。怖がらせないように、外に行く時もクマの被り物をするという献身っぷり。そのため素顔を拝める機会があんまりないっていう。こんな不遇な相手役いますかね。これだけでも相当な努力だと思うのですが、更に物腰柔らかく、基本敬語で話すというオプション付き。この丁寧さが非常に好印象なんですよね。奥手×奥手の奇妙で清い交際は、非常に微笑ましくて安心感があります。この先少しずつステップアップしていくのだと思うのですが、変わった彼女を優しく見守り合わせてあげる、犬飼くんであれば、きっと大丈夫だろうと思えるのでした。巻数表示ありということで、2巻も発売されるはずですので、今から続きが楽しみでございます。


【男性へのガイド】
→このヒロインは絶対かわいい。そして相手役も物腰丁寧な感じがよし。着ぐるみかぶってるしね。
【感想まとめ】
→久々に白泉社っぽい新作を読めたな、という感じです。これは続きも期待。面白かったです。


作品DATA
■著者:池ジュン子
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:ララDX
■既刊1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazon

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