咲坂伊緒「ストロボ・エッジ」(1)
胸がキューってなって
切なくなって
意味もなく泣きたくなったり
胸に何か刺さったみたいに苦しくて
だけどイヤじゃないの ■5巻発売しました。
仁菜子は素直でおっとりした性格の高校生。中学から一緒の大樹とは仲が良く、周りから付き合っているとまで言われるが、本人には恋の自覚はなし。そんなある日、帰り道の電車の中で学校で人気の男子・蓮と出会う。少しの会話や笑顔だけで、初めての気持ちを感じる仁菜子。そんな矢先、大樹に告白される。それをきっかけに、仁菜子の蓮への気持ちが恋であることを確信。しかし、蓮には年上の彼女がいて…!?
ヒロイン仁菜子の初恋を、とにかく丁寧に一つ一つ描いたラブストーリーです。正直話の流れだけ書こうとすると、実にありきたりな内容になってしまいます。けれど、他の作品と決定的に違うのは、恋したときに感じる感情を、余す事無く丁寧に一つ一つ描き上げているところ。完成度が低ければ、ありきたり・駄作と言われるようなベタなストーリーであっても、面白ければそれは王道と言われます。この作品はまさに後者。とにかく少女マンガの魅力が目一杯つまったストーリーになっています。やはり少女マンガは恋してナンボ。たとえベタな展開でも、登場人物たちの心情をセンシティブに描き出せれば、十分面白くなる。

"恋心"の全てがこの作品には詰まっています。
叶わぬ想いで始まる仁菜子の恋ですが、それで「諦めて次!」とはならず、自分の気持ちに素直になってちゃんと向き合っていこうと決めます。やがて蓮は仁菜子のことが気になってくるのですが、彼女を想って葛藤。そこに脇役たちが絡んできて話を展開させます。登場人物がみな優しく良い人間で、決して悪者を作らない話の進め方はとっても好印象。その分展開は遅くなるのですが、心を丁寧に描き出せるので、逆にそれが良い方向に。5巻では、滞りがちだった関係についに動きが出ます。さて6巻以降どうなってくるのやら…。
去年最もハマった少女漫画を選べと言われたら、これか「恋ブル」(→
レビュー)のどちらかで迷うと思います。別マ連載なので、「
君に届け
」と「
高校デビュー
」という2大巨頭の影に隠れがちでしたが、作品の出来はこちらだって負けてない。むしろ"恋心"の描写だけならばこちらの方が上…なんていうと何言ってんだよって思われそうですが、「君に届け」の場合は恋心以前の承認の部分に加え、女同士の友情が物語のスパイスとして利いているわけであって、また「高校デビュー」も、恋を描いてはいるのですが、付き合って以降、「どうやって相手に尽くすか」みたいな一歩先に進んだ部分が中心に描かれているので、純粋に"恋心"だけを描いたものであるとするならば、「ストロボエッジ」が一番なんじゃないかな、と。えーと、とにかくオススメですよ、ということです。
【オトコ向け度:☆☆☆ 】→王道少女マンガ。少女マンガの良さを知るにはちょうど良い作品だと思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】→前述したように個人的に大ヒット。やはり少女マンガは恋してナンボですよね。オススメです。
作品DATA■著者:咲坂伊緒
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット(平成19年7月号~連載中)
■既刊5巻