
壊れてないから
だから
君も大丈夫
■坂ばかりの町で「すくい屋」という人助けを始めた、花小野にしき。幼なじみの蒼馬の心配をよそに、放課後、自転車を走らせては大切な思い出のカケラを集める毎日。そんなある日、とても不思議な兄妹・紺と朱と出会い、カケラ達がきらめいて…!?PEACH-PITが描く新しく懐かしい物語、第1巻。
「しゅごキャラ!」のPEACH-PIT先生の新作でございます。今回もなかよしかと思いきや、デザートに移っての作品というからちょっとびっくり。あんまりデザートって感じがしないじゃないですか、PEACH-PIT先生って。なんだかデザートの連載陣がどんどん豪華に…。ちなみになかよしでも連載をしていて(「クギ子ちゃん」)、そちらの単行本も同時発売になっています。こちらは無駄話さんがレビューをしていたと思いますので、どうぞ。
さて、本作ですが、表紙やタイトルからもわかるように、実に“和”テイストな作品になっています。物語の舞台となるのは、どこか大正・昭和の匂いが残る坂ばかりの町・深郷町。この町で祖母と2人きりで暮らす花小野にしきは、地元の高校に通う女子高生。転校でこの町にやってきて間もない彼女は、この町で「すくい屋」という無償の便利屋さんを始めます。祖母のつてから、様々な依頼を受ける彼女は、坂道ばかりのこの町を自転車で行ったり来たり。この町の端々に思い出のカケラを見つけ、またすくい屋でつながった人から受け取った覚え書きの折り紙を集める毎日。そんなある日、小学生の少女・朱の面倒を見てほしいという頼み事をされ、下宿「葛葉荘」を訪れるのですが……というお話。

物語の舞台は坂が多いというだけでなく、紙もの屋があったり、金魚問屋があったりと、実に風情ある場所となっています。ヒロイン自身がそんな町を愛でていることもあり、ただ町を描いているだけのシーンであっても、味わい深さを感じられるから不思議ですね。
正直ファンタジーなのか、そうでないのかもよくわからないラインを進んで行くので、説明が難しいのです。物語の出発点は現実ベースで、登場人物たちの不可解な発言も「不思議」の一言で片付けられそうだったのですが、物語が進むにつれてそうではなさそうな匂いが。朱は自らを「きつね」だと言い放ち、また兄の紺は、ヒロインのにしきが幼い頃に会っていたような感覚を覚えるのですが、この二人と出逢った事で何が始まるのかも、よくわからず。ひとまず、小さな出来事は起こりつつも、日々は淡々と過ぎて行きます。
この二人との存在とにしきとの関係がまず伏線としてあって、さらににしき自身が抱える秘密があるみたい。1巻ではそれぞれつながり無く点在しているだけの状態ですが、これが物語が進むと共に段々とその関係性が明らかになってくるようです。こういった序盤不可思議で全体を捉えにくいような物語は、さすが実績のある先生だからこそ出来るもの。ゆっくり時間をかけて仕込む分、物語も大きくなりそうです。なかなかついて行くのが大変だったのですが、物語ラストでは続きを読まずにはいられないような切り方。ネームバリューだけでなく、ちゃんと手法として食いつかせるあたり、さすがです。
【男性へのガイド】
→PEACH-PIT先生ですから、もう。
【感想まとめ】
→この先生の作品ってそんなに深追いして読んだ事がないので、今回はちょっと追いつくのに必死という感じでした。とはいえ続きが気になるラストで、普通に2巻以降も追いかけてしまうかも…。
作品DATA
■著者:PEACH-PIT
■出版社:講談社
■レーベル:KC デザート
■掲載誌:デザート
■既刊1巻
■価格:457円+税
■購入する→Amazon