
どうやら教会の抱える“救い”は
まやかしのようです
■異を唱えることは罪である…。
背を向けることは罪である…。
誓いを破ることは罪である…。
傲慢に屈することは罪である…。
全ては唯一無二の聖女の教え。神殿騎士たちは悪魔と呼ばれる者たちと戦う。国を覆う病を打ち祓うために…。信じる者すら救われない捻れた世界の物語。
「イザヤカク」(→レビュー)を描いていた酒巻先生の新連載になります。前回は和テイストのお話でしたが、今回は洋風の物語となっています。ゼロサムらしい、ファンタジックな物語で、もちろん少年が主人公。今回の舞台となるのは、聖女様を崇めるキリスト教チックなとある宗教が信仰されている国。主人公・ミュレーはそんな国に孤児として生まれ、教会で育ち、神殿騎士として日々を過ごしています。神殿騎士の役目は、流行病で死の病である「血屍病」の発生源となる“悪魔”の討伐。念願叶って初めて悪魔討伐に出ることになったミュレーでしたが、そこで目の当たりにした「悪魔」は、どう見ても人間の姿をしていて…。

「血屍病」を唯一治す力を持っているのが、教会の聖女様。ミュレーは彼女に心酔。教えの元、忠実に行動する。
教会が規定している「悪魔」とは、宗教を冒涜する宗脱者、異端者のこと。それら異端者を殺すのが、主人公の役目。聖女様に心酔しきっているミュレーは、そのことに何の疑問を持つこともなく、殺しにのめり込んで行きますが、果たしてこの行動が物語の正義に基づいた正しい行動であるかどうかは、まだ明らかではありません。ここだけ見ると、「血屍病」なんていうものは存在しないように思われますが、「血屍病」というものは確かに存在しており、日々人々の命を奪っています。一方で異端者との因果関係は不明で、この後明らかになってくる模様。そんな絶対的な存在として君臨する神殿ですが、彼らの不穏な動きに気づき調査を始めるのが、王宮の存在。「血屍病」という死の病の存在を前提に、教会と王宮の二つが対峙しあうという構図で、物語の黒幕はさらに上に居そうな感じ。展開次第では、裾野の広い大きな物語になってくるかもしれません。
どうも私は酒巻先生の作品にはまってしまう傾向があるようで、今回も割と夢中で読んでいました。しかし一方で「イザヤカク」(全4巻)の1〜2巻の期待感からの、後半2巻の落ちっぷり(特に最終巻)はちょっと驚くほどで、今回も素直に追いかけて良いのか未だに躊躇しているというのが正直なところです。いや普通に行ってくれれば「+C sword and cornett」とか「07-GHOST」とか、同じゼロサムの売れ線作品を追いかけるような所に行けると思うんですが…。なんて先のことを考えても意味がないので、私は引き続き追いかけようと思います。とりあえず先立つ気になる要素は、ちょっと暗い雰囲気を纏いすぎているという所でしょうか。お話のまとまりは1巻時点ではしっかりしていて、ここからの展開と折り畳み方がポイントとなりそうです。
【男性へのガイド】
→女性向けファンタジーの要素が強いかと思われます。物語に厚みが出てくるのも、これからでしょうか。
【感想まとめ】
→1巻のワクワク感は引き続き本作も。さて今回はどうなるのか…。
作品DATA
■著者:酒巻行里
■出版社:一迅社
■レーベル:ゼロサムコミックス
■掲載誌:ゼロサム
■既刊1巻
■価格:552円+税
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