作品紹介→星空に浮かぶ、淡く切ない恋物語。:小森羊仔「シリウスと繭」1巻
小森羊仔「シリウスと繭」(2)
進みが遅く感じるのは
上り坂だからか
気持ちだけが
先走っているからなのか
■2巻発売、完結しました。
高校を卒業し、東京の大学に進んだハル。上京当日、繭子は列車の発車間際に、彼に気持ちを伝えた。“手紙を書くから”とハルは告げ、ふたりは別れた…。離ればなれになっても恋い焦がれるこの想い、あなたに届くでしょうか…。ピュアラブストーリーのゆくえは?
〜完結しました〜
2巻で完結致しました。なんとなく2〜3巻で完結するような気配はしていたので、この短さでのエンディングも至極納得。相変わらずシンプルにオーソドックスに恋愛模様を描き、しっかり完結しました。個人的にはものすごくツボであったのと、このマンガがすごい!にもランクインしていたりと、2巻は結構話題になるかと思ったのですが、思いの外静かに売られているようですね。近所の書店では平積みではなく、棚差しで陳列されていました。うーん、もったいない。もうこの先なかなか紹介する機会もないでしょうから、このタイミングでしっかりとレビューしておきたいものです。
〜2軸で進む新生活〜
2巻は二人が高校を卒業し、ハルは東京の大学、繭子は地元の専門学校に進学してからが描かれます。繭子は専門学校で、男の子と女の子、それぞれ一人ずつと仲良くなります。一方のハルは、これといった仲の良い友達は描かれず、ある夜繭子のライバルであるメグと再会。登場人物はたったこれだけと、2巻になっても相変わらずシンプル。そして当然のように、それぞれ恋愛の矢印が伸びあっているわけですよ。

今回初登場の二人、櫻井君と保坂さん。なんて、櫻井くんは前回ちょこっと登場しているわけですが…。櫻井君は繭子のことが好きで、そして保坂さんはそんな櫻井君のことが好き。
自分も思い返せばこの頃が一番楽しかったというか、色々と恋愛をするチャンスが転がっていたんだな、としみじみ思います。高校時代の友達との関係は未だ保たれ、むしろ卒業きっかけに益々連絡取ってしまったり、また一方では大学の新しい友達とどんどん仲良くなっていくという。恋愛漫画ではこの辺の移り変わりは割と人間関係が広がり複雑になりがちなのか、どちらかに重きを置いて描かれるわけですが、本作はしっかりと両方を描いてくれました。たぶんハル側の交友関係が広がりを見せなかった分、上手く納まったのかな、と。
〜切なさ多めで〜
1巻も割とそうだったのかもしれませんが、2巻も切なさ成分が強め。10代の恋愛という瑞々しさはあるものの、そこからの展開はどちらかというと想い通りに進まないもどかしさや辛さみたいなものが大半で、喜びよりも悩みの方が多いです。その辺もリアルというか、絶妙なバランス感なんですよね。それでもって、心情を表す言葉がごくごくシンプルで、かつツボを押さえているというか。アドレス交換のシーンでも
ちょっと立ち止まってみて、考えるこんなこと。男の子の知り合い少ないってツッコミはさておき、こんな形でポイントポイントで一拍置くようなスローな進み方が、私には合っていました。

そんな物語で一番の見所は、なんと言っても告白シーン。幸せが募るから告白するのではなく、むしろもどかしさや焦りが募った結果、告白するような、そんなシチュエーションが多かった気がします。それぞれみんな、抑えきれない想いを抱えていて、ついに留めようがなくなり、溢れてしまう。思わず言ってしまうシーンも、「言うぞ!」と決意して言ったシーンも、どれも非常に印象的でした。
〜保坂さんが素敵でした〜
今回それぞれに様々な恋愛模様を見せてくれたわけですが、個人的に一番素敵だったのは、保坂さんでしょうか。脇役女子にありがちな勘の良さに加えて、出過ぎない控えめさと、ここぞで踏み出せる勇気と、ちょっとの強かさを持っているのです。櫻井君を好きだと自覚し、また彼が繭子のことを好きだと見抜くと、

牽制
「好きだ」と明かすこと自体は牽制ではないのですが、この後に、過去に好きなことを打ち明けて好きな人を取られたという過去を暴露し、それとなくクギをさすような格好に。被害者的過去を明かして、下手から先手を打ってライバルになりそうな相手を制する、この逞しさが素敵。あと、自分の気持ちは明かさずに、櫻井君に恋の協力を請われたらそれを受けるという。これって自分を苦しめているようでいて、一方で好きな人に一番近い位置に居られるわけですから、むしろ櫻井君が振られて次に…ってなった時に一番有利なポジションなんですよね。

そしてそのアクションのかけ方も素晴らしい。告白までは何もせず、その後行くべきタイミングで行く。彼女はきっと、この先恋愛に関しては殆ど失敗せずに自分の想い通りに進めるんだろうなぁ。泣きぼくろのあるキャラは、やっぱりしたたかでないと。
〜やっぱり最後は坂道で〜
物語はもちろんみなさんが想像するような結末を迎えるわけですが、そこまでの過程を存分に楽しんでくださいませませ。雰囲気的に、誰がどう好きになるというのがわかりやすく、また決して逆転劇は起こらないのだろう、と簡単に読み取れるような物語であるのですが、だからこそ心情描写(情景描写)のみで魅せるしかないわけで。
本作で都度、大事な場所として描かれていたあの坂道も、最後きっちり描かれましたとも。ほんとうにキレイなまとめ。どの人物にも救いが見えるような。最初から最後まで、実にキレイに納まった物語でした。シリウスが連星、なんてネタも交えつつ、誰かに薦めてみたくなる素敵な恋愛漫画です。読んだことのない人は、是非この機会に一度手に取ってみてください。
■購入する→Amazon

進みが遅く感じるのは
上り坂だからか
気持ちだけが
先走っているからなのか
■2巻発売、完結しました。
高校を卒業し、東京の大学に進んだハル。上京当日、繭子は列車の発車間際に、彼に気持ちを伝えた。“手紙を書くから”とハルは告げ、ふたりは別れた…。離ればなれになっても恋い焦がれるこの想い、あなたに届くでしょうか…。ピュアラブストーリーのゆくえは?
〜完結しました〜
2巻で完結致しました。なんとなく2〜3巻で完結するような気配はしていたので、この短さでのエンディングも至極納得。相変わらずシンプルにオーソドックスに恋愛模様を描き、しっかり完結しました。個人的にはものすごくツボであったのと、このマンガがすごい!にもランクインしていたりと、2巻は結構話題になるかと思ったのですが、思いの外静かに売られているようですね。近所の書店では平積みではなく、棚差しで陳列されていました。うーん、もったいない。もうこの先なかなか紹介する機会もないでしょうから、このタイミングでしっかりとレビューしておきたいものです。
〜2軸で進む新生活〜
2巻は二人が高校を卒業し、ハルは東京の大学、繭子は地元の専門学校に進学してからが描かれます。繭子は専門学校で、男の子と女の子、それぞれ一人ずつと仲良くなります。一方のハルは、これといった仲の良い友達は描かれず、ある夜繭子のライバルであるメグと再会。登場人物はたったこれだけと、2巻になっても相変わらずシンプル。そして当然のように、それぞれ恋愛の矢印が伸びあっているわけですよ。

今回初登場の二人、櫻井君と保坂さん。なんて、櫻井くんは前回ちょこっと登場しているわけですが…。櫻井君は繭子のことが好きで、そして保坂さんはそんな櫻井君のことが好き。
自分も思い返せばこの頃が一番楽しかったというか、色々と恋愛をするチャンスが転がっていたんだな、としみじみ思います。高校時代の友達との関係は未だ保たれ、むしろ卒業きっかけに益々連絡取ってしまったり、また一方では大学の新しい友達とどんどん仲良くなっていくという。恋愛漫画ではこの辺の移り変わりは割と人間関係が広がり複雑になりがちなのか、どちらかに重きを置いて描かれるわけですが、本作はしっかりと両方を描いてくれました。たぶんハル側の交友関係が広がりを見せなかった分、上手く納まったのかな、と。
〜切なさ多めで〜
1巻も割とそうだったのかもしれませんが、2巻も切なさ成分が強め。10代の恋愛という瑞々しさはあるものの、そこからの展開はどちらかというと想い通りに進まないもどかしさや辛さみたいなものが大半で、喜びよりも悩みの方が多いです。その辺もリアルというか、絶妙なバランス感なんですよね。それでもって、心情を表す言葉がごくごくシンプルで、かつツボを押さえているというか。アドレス交換のシーンでも
わたしの携帯に
はじめて登録された男の子の名前は
ハルの名前ではありませんでした
はじめて登録された男の子の名前は
ハルの名前ではありませんでした
ちょっと立ち止まってみて、考えるこんなこと。男の子の知り合い少ないってツッコミはさておき、こんな形でポイントポイントで一拍置くようなスローな進み方が、私には合っていました。

そんな物語で一番の見所は、なんと言っても告白シーン。幸せが募るから告白するのではなく、むしろもどかしさや焦りが募った結果、告白するような、そんなシチュエーションが多かった気がします。それぞれみんな、抑えきれない想いを抱えていて、ついに留めようがなくなり、溢れてしまう。思わず言ってしまうシーンも、「言うぞ!」と決意して言ったシーンも、どれも非常に印象的でした。
〜保坂さんが素敵でした〜
今回それぞれに様々な恋愛模様を見せてくれたわけですが、個人的に一番素敵だったのは、保坂さんでしょうか。脇役女子にありがちな勘の良さに加えて、出過ぎない控えめさと、ここぞで踏み出せる勇気と、ちょっとの強かさを持っているのです。櫻井君を好きだと自覚し、また彼が繭子のことを好きだと見抜くと、

牽制
「好きだ」と明かすこと自体は牽制ではないのですが、この後に、過去に好きなことを打ち明けて好きな人を取られたという過去を暴露し、それとなくクギをさすような格好に。被害者的過去を明かして、下手から先手を打ってライバルになりそうな相手を制する、この逞しさが素敵。あと、自分の気持ちは明かさずに、櫻井君に恋の協力を請われたらそれを受けるという。これって自分を苦しめているようでいて、一方で好きな人に一番近い位置に居られるわけですから、むしろ櫻井君が振られて次に…ってなった時に一番有利なポジションなんですよね。

そしてそのアクションのかけ方も素晴らしい。告白までは何もせず、その後行くべきタイミングで行く。彼女はきっと、この先恋愛に関しては殆ど失敗せずに自分の想い通りに進めるんだろうなぁ。泣きぼくろのあるキャラは、やっぱりしたたかでないと。
〜やっぱり最後は坂道で〜
物語はもちろんみなさんが想像するような結末を迎えるわけですが、そこまでの過程を存分に楽しんでくださいませませ。雰囲気的に、誰がどう好きになるというのがわかりやすく、また決して逆転劇は起こらないのだろう、と簡単に読み取れるような物語であるのですが、だからこそ心情描写(情景描写)のみで魅せるしかないわけで。
本作で都度、大事な場所として描かれていたあの坂道も、最後きっちり描かれましたとも。ほんとうにキレイなまとめ。どの人物にも救いが見えるような。最初から最後まで、実にキレイに納まった物語でした。シリウスが連星、なんてネタも交えつつ、誰かに薦めてみたくなる素敵な恋愛漫画です。読んだことのない人は、是非この機会に一度手に取ってみてください。
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