このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [オススメ] [新作レビュー] 2009.03.27
32223809.jpg御徒町鳩「みどりのまきば」1


   
心は迷信だと思う?」
「……思わない!」



■女の子の若葉と男の子の青葉。二人は双子の小学5年生。そんな二人と仲が良いのが、最近モテだした男子の千尋に、しっかり者で背が一番高い「でかまり」こと小鞠、そして一番背が小さいまっちん。笑って、悩んで、ケンカして   小学生だって、色々大変なのです。

 仲良し小学生5人組の日常を描いたお話です。小学生ならではの悩みや楽しみを、優しく楽しく温かく描いた作品になっています。小学校高学年ということで、恋をしたり性について悩んだり、進路について考えてみたりと、変わりたくないけど変わっていかざるを得ない子供達の様子が描き出されます。その時なりのモンダイを話に絡めてくるのですが、登場人物それぞれに対し、上手い具合に距離を取って話を展開。その空気感が良いんですよね。モテ男子が自分より背の高い女の子に恋をしていたり、しっかり者の女の子が、一丁前に大人の男の人に恋をして悩んだり、一番小さく頼り無さげな男の子が、最も核心をついた考えをしていたり。キャラの配置と動かし方が絶妙に上手い。小学生の日常を描いた作品はたくさんあるのですが、自分達が実際に経験した小学校生活のエッセンスを抜き取って、生かしている感じはこれが一番強い。リアルとは違うんですがね。


みどりのまきば
仲良し5人組の中でも双子は一番ヤンチャ。


 後半には、進学校からの転校生や、保健室登校をしている女子などを投入し、話を動かします。特に後半はほとんどエリート転校生・速水くん絡みで話が展開。家庭問題や転入前の学校での問題など、様々な要因から若干ひねくれてしまった彼。2巻以降では彼の変化が描かれていくのでしょう。
 
 しかしなんだかそのくだりを読んでいる時、自分が試されているような気がしてなりませんでした。その性格からやけに反抗的な態度をとる速水くんなのですが、どういう気持ちで読んでいるかでその人のオトナ度が判るんじゃないかなぁ、と。読み方としては大体、「こいつは嫌なヤツだ!」か、「ふむ、正してあげんとなぁ」か、「うんうん、こんな子もいるよね」の3通りだと思うのですが、後ろになるにつれてオトナ度が増えるように思います。「この子はダメだなぁ、ちゃんと正してあげないと」なんて思った自分はまだまだだなぁ、と。ありのままを受け入れてあげて、無理に正そうしない。そんな大人になりたいものです。皆さんはどうなのかわかりませんが、私は小学生の日常を描いた作品では、いつも大人との関わりあいに注目して読んでいます。だからこんなコト考えたのかもしれません。


【オトコ向け度:☆☆☆☆ 】
→読みやすいと思います。日常ものが好きな方は。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→日常ものは好きです。小学生視点でなく、全体を包み込むように話が展開されるので、良い感じ。面白いと思います。


作品DATA
■著者:御徒町鳩
■出版社:新書館
■レーベル:WIGSコミックス
■掲載誌:Wings('08年2月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:552円+税

カテゴリ「Wings」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。