
叶うなら私は
彼のランプになりたかった
■「ランプを持たずに暗がりに行ってはいけない。暗闇の精霊に魂を取られてしまうから」。
そんな言い伝えがある「ランプ街」にやって来た少女・オレガノ。ランプ屋で働く兄から強く言い聞かせられたものの、好奇心から暗闇でランプを消してしまう。そこで出会ったのは、暗闇の精霊・レイヴン。その場で命は取られなかったものの、それ以来レイヴンに懐かれてしまい…!?
中てい先生のデビュー単行本です。本作が初コミックス、初連載と、初物づくし。それではあらすじをご紹介しましょう。物語の舞台は、住民みんながランプを持って街に出歩く「ランプ街」。そんな不思議な場所にやって来たのは、たった一人の肉親である兄がランプ屋で働いているという女の子・オレガノ。「ランプを持たずに暗がりに出てはいけない」そんな兄の忠告も聞かず、恐いもの見たさに暗がりでランプを消した所、遭遇したのは暗闇の精霊。暗闇の精霊は人間の魂を抜き取ってしまうのですが、オレガノの前に現れた精霊は、不思議な力に跳ね返され、魂を抜き取るのに失敗。しかしそれが彼・レイヴンの興味を惹いたのか、以来オレガノについて回るようになってしまい…というお話。

おっちょこちょいで慌てん坊なオレガノと、マイペースなレイヴン。オレガノはレイヴンに対して敬語というところも萌えポイント高し。
好奇心たっぷりのランプ屋見習いと、気まぐれな暗闇の精霊との心の交流を描いたファンタジー作品です。この街で「ランプ」とは、ただの明かりを現すのではなく、命を抜き取る暗闇の精霊を防ぐ道具としての役割があります。ランプを持っている以上、暗闇の精霊は現れません。一方の暗闇の精霊は、人の魂を源とするランプを持たなくては行きてはいけません。お互いに生きるため、ランプを持つのです。
普通であれば自分の魂を狙う者とは一緒にいたくありません。けれどもオレガノは人一倍好奇心旺盛で、またあまり恐怖心がないような向こう見ず(バカ)な女の子であるため、レイヴンを側に置くことに反発はあまりありません。またレイヴンも、とにかく魂が欲しいという感じではなく、ランプなしでもとりあえず大丈夫というスタンスを取るため、お互い不思議な関係に。そんな中、いつしか互いに感情が芽生え始める…という定番の展開。とにかくメインの二人が緩いというか淡々としているので、狙い狙われているという感はあまりないという。それが売りであり、どこか温かく安心感のある雰囲気を作り出している源泉となっているのでしょう。あとちょっとおバカなオレガノちゃんかわいいです。
アヴァルスやゼロサムといった媒体のデビュー単行本って、割と分かり辛くてこだわりすぎた内容が多いイメージなのですが、本作はベーシックな物語展開に加えて、絵も尖りすぎずで、非常に親しみやすい内容でした。背景もしっかりしていて、設定はしっかりと地に足ついていた印象。今後の作品も楽しみですね。
【男性へのガイド】
→レイヴンがオタク女子向け作品の相手役の典型という感じの風貌ではあるのですが、鼻につく感じはなく、受け入れやすさはあるのかも。オレガノもかわいいし、物語も人を選ぶような内容ではありません。
【感想まとめ】
→安心感と温かみのある親しみやすいお話でした。まとめ方は不思議さが残るものでしたが、枠内にしっかりと収まり、キャラも可愛い。うん、満足満足。
作品DATA
■著者:中てい
■出版社:マッグガーデン
■レーベル:avarus
■掲載誌:アヴァルス
■全1巻
■価格:571円+税
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