尾崎あきら「太田川純情ラバーズ」
「緒方なんて全然追いつかないくらいはりきっちゃうよ?
それでもいいの?」
「のぞむところじゃ」■野球部のエース・緒方くんに一目惚れした山田ひろの。告白するも玉砕すること十数回。野球一筋の緒方くんは、何をしても一向に振り向いてくれる気配なし。それどころか、「つきまとうのをやめて」とまで言われる始末…。それでもひろのは懲りずにアタックし続けるけど…。どこまでも真っ直ぐな、青春ストーリー!!
尾崎あきら先生の新作でございます。広島の高校を舞台にした、野球少年とそんな彼に恋をしてしまった女の子のお話。物語のヒロイン山田ひろのは、野球部の緒方くんに一目惚れをして以来、何度となくアタックをし続け、玉砕すること十数回…。それでも諦められない彼女は、少しでも振り向いてもらおうと、お弁当を作ったり、お守りのぬいぐるみを作ったりと、あの手この手でアプローチ。けれども野球一筋の緒方くんからしたら、「付き合うってどんなのかわからん」し、何より野球に集中できなくなるのは迷惑…。けれどもひろのの熱い想いに、少しずつ態度を軟化していって…?

「君に届け」の龍といい、「青空エール」の山田くんといい、坊主の野球部員が恋愛対象のキャラとして登場する下地のある集英社別冊マーガレット。本作もレーベルは別マでございます。さすが。相手役の緒方くんは見ためも性格もどちらかというと龍に似たタイプで、寡黙な努力家タイプ。ただ恋愛はちょっと縁遠いというか興味がなく、ただただ野球のことだけを考えているような子。ちなみに野球部の緒方というとあだち充の「ラフ」を思い出しますが、被っているのは才能溢れるピッチャー(ラフの方をピッチャーに分類して良いものか…)というだけで、性格は全然別。
好きすぎて猛アタックを繰り返すヒロインの想いがやがて報われるという、少女漫画の色モノヒロインが登場するテンプレとしてはよく使われるパターン。とはいえ大抵それらは読切りであったりするので、本作のように1巻まるごとって形は結構珍しいかもしれません。ヒロインのひろのはとにかく一本気な性格で、相手のことを想って相手のことにならないことをしてしまう(頼まれてないのに弁当作ったりとか)、ありがた迷惑系の女の子。フラれ続けても決して諦めないその性格は、タチの悪い人とも松岡修造とも受け取れるような…。いや、たぶん自分だったらめっちゃ迷惑でやめて欲しいって思ってしまうのでしょうが、お相手の緒方くんはあんまり動じない性格で、そんな彼女の奇行もある程度受け入れてしまう懐の深さがあったりします(イヤだとは思っている)。

尾崎先生は「武士道シックスティーン」(→
レビュー)でもそうだったのですが、自制出来ない系のヒロインのエネルギーが前面に押し出るタイプの作風で、とにかく勢いよく物語が進んでいって、それがとっても心地よい。いい感じにコミカルで、それが勢い余ってシリアスな場面にも食い込んでしまって感動の涙が薄れるってこともままあるのですが、そこはご愛嬌。噛み合いつつも、噛み合ない慌ただしい二人の関係は実に微笑ましく、読んでいて非常に元気を貰えます。
物語の舞台は広島で、ヒロインは広島東洋カープのファン。そして登場人物もヒロインを除いてカープに所属する(した)選手の名前がついています。相手役の緒方くんをはじめ、堂林に金丸と、カープっぽい名前が。芸が細かいです。キャラクターも広島弁、郷土愛ですねぇ。
単行本には表題作のほか、読切りが一作収録されています。こちらは中学受験に失敗した男の子が、引きこもりのクラスメイトと触れあうことで変化して行くという学園ものなのですが、恋愛色薄めながらこちらも青春の匂いを感じて非常に良かった。尾崎あきら先生の作品は押し並べて好きなのですが、本作も非常に楽しく読むことができました。もっと長期連載とかしてほしいなぁ…。
【男性へのガイド】→恋愛モードなヒロインですから、当然恋愛色は強いのですが、テンポ良く進むので甘さ控えめ。そのため恋愛主体の他作品に比べて読みやすさは出ているのではないかと思います。
【感想まとめ】→尾崎先生の作品はみんなお気に入りなのですが、本作も面白かったです。一気に読んで元気を貰えました。おすすめで!
作品DATA■著者:尾崎あきら
■出版社:集英社
■レーベル:別冊マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■全1巻
■価格:400円+税
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