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Tag [新作レビュー] 2009.03.28
07217981.jpg上田信舟「彩の神」(1)


障というのはな
悪縁悪霊
諸々の悪しきものを障え断ち塞ぐ力
またその力を持つ存在をいう
お前のことだ



■16歳になった日の朝、不思議な夢を見て目を覚ました彩。その日、学校は行方不明のクラスメイトの話題でもちきりだった。どうやら出会い系サイトが原因らしいのだが、そのことに、友達のヒナが興味を持ち、サイトに登録してしまう。そしてひっかかった、怪しげな男。おとり捜査だ!と、なぜか彩がヒナのかわりに。そして連れ込まれた部屋で現れたのは、人間とは思えない異形の何か。このままではまずい。必死になって取り出したのは、誕生日プレゼントとしてもらった小刀。その小刀で、敵を斬りつけた瞬間、何者かが現れる。その男は、朝に見た夢に現れた男で…!?

 現れた男・九十九が言うには、彩は「障」という存在で、悪縁悪霊を退治する力を持っているのだという。しかし、彩には何のことだかよくわからない。ただ、周囲の人間は何か知っている。それには、彩の住む神社の古い伝承が関係しているのですが、彩視点で物語が展開されるので全体像は見えてきません。とりあえずはオカルティックファンタジーで、妖怪退治的なことが中心になっており、以降段々と話が明らかになっていくのでしょう。


神の彩
"巻き込まれ"ではあるものの、最終的には自分の意思でこの騒動に飛び込んでいく。

 
 古い伝承というのは、神主に育てられた狼が、怪物から一人娘を守って死んだというもの。これに直接関わっていたのが、謎の男・九十九で、そのことについて詳しく知っていると思われるのが、彩の姉・小夜と、学校の友人・篠田。さらに双子の兄・清も関わってくる気がする。あくまでこれは予想ですが。とにかく現時点では、お話を展開させる土台を作っただけという感じで、伏線がいくつか張られています。また、単なる悪霊退治ではなく、過去の伝承に基づいた因縁から起こる事件に、彩と九十九が関わり、徐々に真実が明らかになっていくという形を取るので、目的は明らかでなくとも引っぱりはあります。
 
 完全な巻き込まれ型のお話ですが、彩自身も巻き込まれたなりに興味はあるようで、前向きに物語は進行。明らかになっていない部分だけでなく、伏線も多々仕掛けられているので、長期連載の構え?かなり展開は忙しいのですけど、それに関連する事件は少なく長めにひっぱってくれるので、読みにくいということはありません。ただ状況整理ができないよってだけで。ま、これも2巻以降は解消されるんでしょうね。

 
【オトコ向け度:☆☆☆  】
→題材的には男向け。ただ女性ならではだなぁと思われる描写・ストーリーも見られるので。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→1巻だけでは如何ともし難いです。とりあえず次巻も買ってみようかな、とは思ってます。判断はそれから。


作品DATA
■著者:上田信舟
■出版社:一迅社
■レーベル:ZERO-SUM
■掲載誌:ZERO-SUM
■既刊1巻
■価格:552円+税

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