
お菓子みたいに甘い気持ち
ずっと
そばにいたいです
■砂糖を吸収して成長する「シュガーイーター」。なかでも人型のものを「シュガードール」と言いました。六菓は、研究者の嵐が作った“感情を持ち、恋するドール”である六菓。彼女は、いくら嵐を慕っても、やがて商品として売られていく運命にあるが…。たくさんのお菓子と恋を贈る、甘く可愛いラブストーリー!!
榎木りか先生が贈る、甘くて可愛いシュガードールの恋物語です。砂糖を吸収して成長するシュガーイーターという物質から作られた"シュガードール”の六菓。彼女の仕事は、マスターに恋をすること。ドールに感情を持たせることは禁止されていますが、アンダーグラウンドで高値で取引されるため、秘密裏に彼女のようなドールが作られています。商品PRのため、製作者の嵐に恋するようにインプットされている六菓は、日々嵐を慕ってじゃれつくのですが、嵐はいつも冷たい態度…。嵐に抱くこの感情は、とても甘くて、そして苦しい。今日も今日とて、嵐にじゃれつく六菓ですが…というお話。

シュガードールに特殊な糖分(職業糖)を与えることで、ドールは感情を持つようになる。摂取する糖分によって、その性格は様々に変わります。中でも、この恋をさせる職業糖は特殊。
表紙からお菓子作りのお話と思いきや、砂糖で出来た恋するお人形さんのお話でした。「異質な材料から出来た愛玩人形」というと、「観葉少女」を思い出しますが、あちらは殆ど動きがなかったのに対し、こちらは主食が糖分という以外はもう完全に人間で、非常に活発に動き回ります。摂取させる糖分によってその行動パターンや性格は御することができるのですが、完全というわけではなく、時折変な行動を起こしたり。ロボット的でありながら、ロボットでないような。というか…ロボットなんて言葉で片付けるには、あまりに可愛すぎる!普段はご主人に戯れ付きまくりで可愛らしいし、見知らぬことに興味津々でアホっぽいし、そして感極まれば泣いてしまう…そしてアホ子にありがちな「ですます」デフォ!はい、もうドストライクです。愛するよりも愛されたい人には絶好ですとも。

アホな子にありがちな、無駄な行動力。後先考えずに行動すしちゃうので、主人も割とそれに振り回されがち。
とはいえこの物語は、愛される側よりも、愛する側の視点でこそ成り立つものなのでしょう。ヒロインである六菓の感情は、自然発生的なものではなく、製作者によって仕込まれたもの。つまり“ニセモノ”であると同時に、ゆるがない“絶対的”な感情なんですよね。物語は、好きだ好きだと伝えてもなかなか相手にしてくれないマスターに、はたして想いが届くのか、という軸で語られていくわけですが、六菓視点で見れば健全なこのお話も、製作者の嵐側から見るとなかなか歪んでいるな、と。だって絶対に愛されているという後ろ盾のもと、傍若無人に振る舞って、かと思えばちょっと他人にちょっかい出されるとムキになって守っちゃうという。もちろんそういう素直に感情を発露できない所に萌える、というわけなのですが、同じ男目線で行くとなかなかな変態さんに見えるわけです。ただ最初から相思相愛だったら、この物語は成り立たないわけで。普段冷たいからこそ六菓が頑張り、その愛らしさが発揮されるという、何気に良い組み合わせなんですよね。
物語はこれから、六菓の感情が本物に成って行くであろう過程と、製作者である嵐の気持ちがだんだんと恋に変わって行くであろう過程が描かれていくと思います(どちらも推測)。この手の物語は物珍しいものではありませんが、コメディの中に恋愛の切なさを落とし込むバランス感や、ひと際人間らしいヒロインの無垢な姿が、個人的にツボで、これからも是非とも追いかけたい所。
【男性へのガイド】
→相手役は鼻につきますが、六菓は非常に男性受けしそう。可愛らしい容姿に、可愛らしい行動。守ってあげたい感じです。
【感想まとめ】
→物語設定もファンタジックながらシンプルなので、ややこしい方向に行かず読みやすいです。久々、“キャラ推し”の形でおすすめしたい一作です。
作品DATA
■著者:榎木りか
■出版社:アスキーメディアワークス
■レーベル:シルフコミックス
■掲載誌:シルフ
■既刊1巻
■価格:580円+税
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