高山しのぶ「あまつき」(1)
そりゃ帰りたいけど
でもその前に
やりたいことがある■9巻発売です。
日本史のテストで赤点を取った六合鴇時は、補習として大江戸幕末巡回展という、ハイテク技術が駆使された幕末期を体験できる博物館に連れてこられた。その技術に感心しながら巡る鴇時だったが、奥にある橋を渡ろうとした時に突然、妖怪である鵺に襲われる。間一髪というところで謎の女に助けられるが、なんだか周りの様子がおかしい。そこは、自分のいた世界とは全く異なる異世界だった…!?
送られた先は雨夜の月、通称"あまつき"という世界。鴇時が鵺に襲われる直前、姿が見えなくなっていた篠乃女も飛ばされていた。しかし現実世界(彼岸)ではたった数分差で飛ばされたというのに、あまつきでは実に2年のタイムラグが。異世界にとばされ訳が分からなくなっている鴇時の先導役を、篠乃女が務めます。そんな二人と行動を共にするのが、鵺を退治してくれた朽葉。犬神が憑いた剣士で、周囲から疎まれて育ってきた。3人ともあまつきでは異端の存在であり、そこからの結束が生まれたり生まれなかったり…。

とにかく朽葉が大好きです。何から何まで愛らしい。
本筋は鴇時と篠乃女が現実世界(彼岸)に戻れるかということなのですが、それ以上に大きな設定が物語には仕掛けが。あまつきの様相は江戸時代そのものなのですが、明らかに現実とは異なる要素が見受けられます。あまつきとはいったい何なのか、時折挟まれる現実世界での動きや、あまつきで特殊な力を持つ者達と関わっていくことで、徐々に明らかに。まぁ序盤から何となく予想はつくのですが、「謎を明らかに」って所はこの物語の売りではないと思うので、問題ありません。その辺が明らかであろうとなかろうと、その場のみの設定・展開だけで十分読者を引きつけられる面白さがあります。
謎解きというわけではなく、その時その時で鴇時が進む方向決め、その結果として謎が明らかになっていくという構図。良く練られた設定だからこそ、こういう進め方ができるのでしょう。コメディ要素も上手く組み込み、メリハリを付けて飽きさせずに話を進行。上手いです。
【オトコ向け度:☆☆☆☆☆】→アニメ視聴者はどの層が多かったのでしょうか?男性でも十分楽しめると思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】→なんだかんだでやっぱり面白いですね、ココは素直にいきます。ん、これはどうなのよ?なんて考えたりするのも、好きだからこそなんだろうなぁ、と。
作品DATA■著者:高山しのぶ
■出版社:一迅社
■レーベル:ZERO-SUMコミックス
■掲載誌:ZERO-SUM(平成16年9月号~連載中)
■既刊9巻