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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2013.07.16
1106288787.jpgアキヤマ香「ぼくらの17-ON!」(1)


けどお前の句は
自由でみずみずしくて
悔しいけど好きだ



■日々をただ「なんとなく」生きて怠惰な生活を送っていた高校生の久保田莉央。彼は片想いの錦織彩ちゃんが俳句好きだから、という不純な理由で俳句愛好会に入部する。部長の山本春樹と切磋琢磨しながら、やがて莉央は“俳句甲子園”出場を目指す!!

 「JOUR素敵な主婦たち」連載の、俳句に懸ける青春…なお話。何気にJOURの作品は取り上げることが多いような気が。気になる作品多いんです。これも、俳句ですしね。ここ最近、様々な文化系部活マンガが登場していますが、俳句漫画はあんまり見た事がないです。たぶん先駆者はいるかと思うのですが、こと女性向けで俳句部ってのは、ないんじゃないだろうか。
 
 物語の主人公は、特に何にも情熱を傾けていない帰宅部の男の子。しいて言えば恋愛に興味はありますが、そんな彼がある日一目惚れしたのが、俳句を嗜む女の子。彼女は女子校ですが、どうやら知り合いが同じ学校にいるらしく、それをきっかけに俳句愛好会に入る事に。きっかけは実に不純な動機。俳句なんて爺臭いし、よくわからないし、もちろんやる気なんてありませんでした。けれども初めて俳句に触れ、ふと味わえる気持ちの良い瞬間に惹かれ、いつしか俳句も好きになるように。まずは愛好会を部活に、そして俳句甲子園を目指すのですが…というお話。


ぼくらの17-ON1
はじめての俳句ですから、人前で詠むのがまず恥ずかしいっていう。


 作者のアキヤマ香先生ですが、ドラマ化もされた「アスコーマーチ!」(→レビュー)の人と言えば分かる人も多いのではないでしょうか。「アスコーマーチ!」も工業高校に女子が入学するという一風変わったテーマの作品でしたが、今回も負けず劣らず。アプローチは似ており、最初は乗り気でないものの、徐々にその魅力にのめり込んでいくというもの。主人公の莉央は絵に描いたような「今どきの若者」という感じで、俳句とはどうしてもリンクしないような人物像なのですが、それゆえに斬新な視点から詠む句もあり、周囲からは一目置かれたりします。素人ゆえの斬新さ、的な。

 俳句といっても、ただ句を詠むのではなく、描かれるのは俳句甲子園のルールに従った競技俳句的なもの。ルールも初めて知ったのですが、5人1組のチーム戦で、1対1の3勝先取で勝ち上がり。また句を詠んだ後に、質疑応答(ディベート)の時間が設けられ、そこでの受け答えも勝敗に関わって来るという。そのため、意外にも競技のシーンは結構熱いんですよ。句を詠んで先制攻撃をした後に、ディベートで熱い応酬という。正直ディベートメインなんじゃねーかとか思ってしまうくらい、ここのパートが熱い(笑)句のレベルは経験とセンスの差が出ますが、組み合わせとディベート次第で逆転の目もあるという競技性が、物語の盛り上がりに一役買っています。この熱さゆえに、「ちはやふる」的な雰囲気もあるというか。

 ただ「ちはやふる」になりきれないのは、俳句の敷居の高さゆえでしょうか。私は全くの俳句の素人であるため、良い句と普通の句とイマイチな句のそれぞれの違いがあまりわかりません。なので作中に登場して「すごい」と評される句も、他の句に比べてどこが凄いのかちょっとわからず(切り口が奇抜とかはわかるけれど)、少し乗り切れない部分があるというか。とりあえず「良い句なんだ」と思って読み進めていますが、この辺の良さがわかったら、またきっとこの物語がもっと違って見えるのかも。


ぼくらの17-on1-2
 甲子園を目指すといっても、所詮は素人の集まりで、また青春の全てを懸けるというような熱さが全員にあるわけでもありません。とはいえそれぞれに、この部活、俳句に懸ける想いというものがあって、その背景を知るとなかなか感動的。特に莉央の友達2人が、戦力にならずとも色々考えて部活に参加して、少しでも戦力になろうと努力する姿は、結構泣けます。アキヤマ先生の作品って、すごく人間臭いというか、なんだかすごく温かみがあるんですよね。レーベル的にもあまり目立たなそうなのですが、面白い作品だと思いますので、気になった方はチェックしてみてください。
 

【男性へのガイド】
→主人公は男の子。ということで、あまり違和感なく詠めるかと思います。
【感想まとめ】
→意外に熱くて、そして感動的。面白かったです。物語の進み的にはイージー感ありますが、掲載誌ゆえにそう長引かせることもできないのか。ちょっとおすすめしてみたい1冊です。


作品DATA
■著者:アキヤマ香
■出版社:双葉社
■レーベル:JOURCOMICS
■掲載誌:JOUR素敵な主婦たち
■既刊1巻
■価格:619円+税


■購入する→Amazon

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