
行くよ
そこまで
■烏丸和歌は囲碁が大好きな13歳!プロ棋士だった祖父から囲碁の楽しさを教わるが、母親には反対されていて…。そんなある日、和歌は、若手天才棋士としてメキメキ頭角を現している青年・鷺坂総司に出会う。軽薄でオレ様気質な鷺坂を避けようとする和歌だが、彼の身も魂も削る対局を見て…!?
「白磁」(→レビュー)などを描かれているモリエサトシ先生の新連載です。1巻発売は今年の2月頃なのですが、最近やっと読んで、とても面白かったのでご紹介。少女漫画で囲碁漫画、という珍しいアプローチの本作、ヒロインはモリエサトシ先生のキャラらしい、黒髪ロングが映える美少女です。プロ棋士の祖父と碁を打つことで囲碁を覚え、いつしか大好きになっていた和歌。毎日囲碁のことばかり考えて、囲碁ばかり打っている彼女は、ある日若手天才棋士として話題の16歳・鷺坂総司に出会います。ひょんなことから彼の対局を目にすることになった和歌は、その普段の軽薄な態度とは全く異なる、魂を削るような戦いぶりに圧倒されることに。いつかこの人と同じレベルで戦いたい…そう感じた和歌は一層囲碁に力を入れるのですが…というお話。

この表情、この熱量。囲碁では非常にエネルギッシュなヒロインが、物語に勢いを与え続けます。
囲碁がテーマというのはこと少女漫画に於いては非常に珍しいですが、漫画の題材としては「ヒカルの碁」という金字塔があるため、未踏・不毛の題材というわけではありません。少女漫画ですから当然恋愛要素も…と言いたい所なのですが、ヒロインはこう見えてまだ13歳という年齢設定。そのため、今時点では恋愛要素は一切なく、もしあるとしても、もう少し物語(時間)が進んだ段階で、となるでしょう。目下物語の軸に据えられるのは、ヒロインが囲碁でどんどん強くなっていくという、成長物語。そのテンプレは完全にスポ魂もの、バトルもので、少年漫画的な空気感が漂う作品となっています。
ヒロインの目下の目標は、天才棋士・鷺坂総司と同じステージで対局をすること。そのためには、棋力を磨いてプロになるしかありません。しかし彼女の母親は、折り合いの悪かったプロ棋士の祖父のイメージが良くなかったことから、娘が囲碁をすることには大反対。「大きい大会で優勝できなかったら囲碁を辞める」という約束の元、最強の相手を送り込むという鬼畜ぶりを発揮します。負けたら終わり、徐々に強くなる敵、そして最後に立ちはだかる最強の刺客と、その文法は完全にバトルもののそれで、読んでいて非常に熱くなれます。
囲碁のルールは殆ど知らないのですが、それでも全然楽しめる内容となっています。というか、あまり詳しいルールや戦略については解説されません。囲碁のスタイルが、「とにかく石を取る」「なるべく生かそうとする」といったような違いがあることは描かれるものの、“この一手がものすごい”的な、戦略的な盛り上げは殆どなし。少女漫画なのでメイン読者は女性…ということを考えると、そこまで細かく解説してしまうと、敷居が高く感じられたり、間延びしてしまったりすることから、食いつきが弱くなってしまうことを懸念してなのかもしれません。これぐらいだからこそ、食いつきやすいし楽しみやすい。監修も入っている事からわかるように、決して囲碁の描写を疎かにしているわけではないので、囲碁に興味を持ってもらうきっかけにも充分成り得るかと思います。一方で、経験者が「ディテールにまで拘った囲碁漫画」という先入観を持って読みはじめると、若干面食らう部分はあるかも。

囲碁はその人の生き様を表す。囲碁のテクニックを押し出した作品というよりも、その人自身を映す鏡としての役割が強いかも。
ちょうど2巻も発売されたところ(まだ読めていないです…)。今年はあまり新作を読めていませんが、本作はそんな中かなり印象に残った1冊でした。ちょいと熱いスポ魂系マンガを所望している方には、ぴったりのタイトル。面白いと思うので、是非チェックしてみてください。
【男性へのガイド】
→モリエサトシ先生の作品は割と男性にも読みやすいんじゃないかと思っているのですが、どうでしょうか。
【感想まとめ】
→面白かったです。こういう作品は大好き。既に話題になっている感じもありますが、遅ればせながらおすすめで。
作品DATA
■著者:モリエサトシ
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:花とゆめ
■既刊2巻
■価格:400円+税
■購入する→A,azpm