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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2013.07.27
1106301444.jpg小畑友紀「春巡る」(1)


オレは
生き続けるよ
誰がなんと言おうと



■イジメに遭い自殺を図った梅乃。入院先の病院で出会った悠聖に惹かれ、彼と約束を交わす。彼が背負った苛酷な運命を知らず…。一方、悠聖は空手のために生まれてきたような男の子。才能に恵まれ伸び盛りだったが、ある日、稽古中に突然倒れ…!命の灯火が揺らぐ病棟を舞台に魂を震わす命と希望の物語。

 「僕等がいた」(→レビュー)の小畑友紀先生の新作。今度の連載先は、ベツコミではなく集英社のCookieになります。それではあらすじをご紹介しましょう。物語は、高校でいじめに遭っている少女・梅乃が、川に飛び込んで自殺を図る所から始まります。目を覚ましたら、そこは病室。彼女を覗き込むのは、看護士や家族の他に、同い年や年下の子供達がちらほら。肋骨を折っただけではあるものの、心に深く傷を負っている梅乃は、入院生活で出会った歳の近い友達たちとのやりとりを通して、自分の居場所を見出し、少しずつ傷を癒していきます。中でも一番心通わせることができたのが、同い年の男の子・悠聖。彼が入院しているのは、骨肉腫だから。彼が仮退院する時になって初めてその病名を知った梅乃。彼女が入院するここは、全国有数の小児がんの治療施設だったのです。
 


春巡る1−1
 小児がん病棟を舞台に繰り広げられる、命の灯火の物語。しかし導入は、癌ではなく自ら死を選ぼうとした、癌とは無関係の少女が主人公となります(ここに入院したのは、父が病院の先生だから、そのツテで)。自分達なりに病気と死に向き合い、命を燃やしている少年少女がいる中で、この導入の仕方がなかなか斬新。確かに導入としては印象的で、またそれでも明るく前向きに生きる悠聖の魅力もしっかり描き出されていました。
 
 以降、この病院に入院している子や、その近くにいる同世代の少年少女達の視点から、1話完結の形でストーリーは進んで行きます。Cookieは視点の切り替えで読ませる作品が多く、この方式は読者にも馴染みやすいのでしょう。ここ最近では「潔く柔く」「愛しの可愛い子ちゃん」など、「女の子の食卓」なんかもそうか。都度視点が切り替わるので、現時点では、このまま収束して一つの大きな物語を形成するのか、切り替わりながら話の裾が広がっていくのかはちょっと分からないのですが、小畑先生はエピソードを重ねてこそ旨味が出て来る先生だと思うので、多分前者になるのではないかなぁ。

 さて、表紙を見て「あれ、これ矢野じゃね?」っと思った方もおられるのではないでしょうか?って私が思っただけなんですが、やっぱり似てません?ちなみに性格というか、キャラクターも結構似ております。運動神経抜群で、女子にモテる。性格は割とゴーイングマイウェイでイタズラっぽいけれど、面倒見が良く根はいい人。そしてどこか遠いところを見ている。ただ一つ、違う事があるとすれば、矢野は一人の女性のことばかり考えていたのに対して、悠聖は、色恋には目もくれず空手一筋であることでしょうか。これが結果的に物語に大きな違いを生んで来ると思われるのですが、今のところはそこまで動いておらず。なんとなく、矢野も悠聖も根本は一緒のような感じがすると言いますか。こう、役名は違えど結果的に似てるという意味で、キムタク的な存在なのかな、とか思いました。
 

春巡る1−2
悠聖を支えるのは、同じ道場に通う黒髪の女の子・菜のは。こちらはどこか千見寺さんの立ち位置と被るものがあります。この子、良い子なんですよ(早くも心奪われた)。
 
 
 話は変わりますが、この話を読んでいて「小畑先生の実体験か何かが起因になっているのかな」という感じがすごくしたんですよね。病院・医療ものって凄く多いんですが、エンターテインメント的に描かれるのって、治す側が多くて、逆に患者側って自分自身の体験だったり身内だったりといった実体験が発信になっている場合が凄く多い印象でして。で、あとがきにまさにそのことが書いてあったのですが、本作は小畑先生のお母さんが肺がんで亡くなったことがきっかけで描かれているようです。だからこそなのか、重いところはとことん重い。
 
 収録されている最後の物語で、まさに癌で亡くならんとしている子のモノローグが流れるのですが、そこで強調される「喉が渇いた」というフレーズが個人的に結構くるものがありまして。私は祖父祖母を癌で亡くしているのですが、弱ってくると物も飲み込む力が無くなって、水すら飲ませてもらえなくなるんですよね。唇を湿らす程度で。で、いつも祖母が「喉が渇いた。喉が渇いた。水を飲ませて欲しい。」なんて悲しんでいるのを見て、父は「殺してもいいから、水をガブガブ飲ませてやりたい。」なんて言っていたのを思い出したり。別に本編全く関係ないのですが、少なからず自分にとっては、死別の体験を想起させる装置になっているのだな、と。
 
 さて、本作ですが、落としどころがどうなるのか現時点では全く想像がつきません。恐らく恋愛を絡めて進行していくのではと思っているのですが、テーマがテーマだけにそう簡単には行かなそう。恋愛の純度が高いものではなく、それ以上に命の重みがかかって来るため、複雑。これは前作でも見られた傾向ですが、バランス次第で耐えられない程に重くなり、同時に物語に厚みをもたらしてもくれる。本作はこと重い方向に倒れる頻度が高そうですので、前作よりも読み手を選んできそうな印象があります。間口の広い、「命を大事に」的な感動物語とも、ちょっと雰囲気違う感じなんですよね。前作からファンであった身としては、何も見ずに「凄いっす!」とか言ってしまいそうな勢いなのですが、一旦冷静になったとき、本作がどのような評価を世間で受けるのか、非常に気になる所でもあります。


【男性へのガイド】
→悠聖は男性読者受けそこまで良いほうではないような気が。とはいえ既に一定層読者いそうですから、その人達に訴求できればOKなのかな、と。正直知らない人がどう受け取るのかとか、想像つかないです。
【感想まとめ】
→正直背景とか過去作とか一切知らずに読んだら、おすすめするかはわかりませんが(なんかゆっくりだし重いし)、やっぱり小畑先生なんで。


作品DATA
■著者:小畑友紀
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックスCookie
■掲載誌:Cookie
■既刊1巻
■価格:419円+税


■購入する→Amazon

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