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Tag [新作レビュー] 2013.07.31
1106299006.jpgわたなべ志穂「童貞教師のふまじめな日常」(1)


先生の童貞
あたしがちゃんともらってあげるからね



■桐島慶一郎、26歳、生物教師。ニックネームは“氷の桐島”。校内で接吻、および性行為などという風紀の乱れは全く以て許しがたく、厳罰を以て処すべきなのであ……わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!広瀬!!やめなさい!!校内で…そんな…いかがわしい…っ!!!っちょっっベルトに手をかけるのはやめなさいっっっっっ!!!!初めてなのですから!!!!!!桐島慶一郎、26歳、童貞教師。経験豊富なJKからのアプローチを拒みきれるのか!?

 なんだこの紹介文(のっけからツッコミ)。Cheese!って「僕達は知ってしまった」の裏表紙の謎ポエムとか、裏表紙が全体的にフリーダム過ぎてビビります。ちなみにエントリータイトルの「桐島、童貞捨てるってよ」は帯より拝借致しました。もう悪ふざけが過ぎますね(褒め言葉)。Cheese!らしい、節操のなさが素敵です。
 
 さて、本作ですが、童貞教師が経験豊富な女子高生からあれやこれやとアプローチを受けて、慌てたり抗ったり流されたりするというラブコメディでございます。主人公は、学校で生徒指導も担当する生物教師・桐島慶一郎。その無表情さ・厳しさから、生徒達から“氷の桐島”と呼ばれている彼ですが、実は女性経験がなく、生徒に近寄られたり触れられたりすると、途端に赤面してしまうという一面が(そのため人一倍冷たくしてバリアを張っている)。そんな一面を、ひょんなことから生徒である広瀬和奏に知られてしまい、そんな彼に興味を持った和奏は、あれこれとアプローチをしはじめるのですが…というお話。


童貞教師のふまじめな日常
 高校までは男子校、大学で恋愛に期待を抱くものの、経験のなさと理系ならではの鈍感さで尽く失敗、結果現在まで童貞。女性は苦手ではあるものの、女性には興味があるという草食系。どちらかというとチャンスを逸していた人なので、据え膳は、場合によっては食えてしまうタイプ。そのため生徒からのアプローチに対しても、怒濤のパワープレイでゴリゴリ押し込まれて、ついつい失点…というわけで、1話目で早々にカップル成立してしまいます。もちろんお互いに、お互いの魅力を認め合っての成立ですから、性欲先行ではございません(念のため)。
 

 本作はタイトル通り“童貞”であることが肝になるので、カップル成立しても、あくまでキス止まり(元々は「嘘つきジキルとハイド」というタイトルだったみたいなので、結果論かも…)。一線(エッチ)を越えないレベルで、ギリギリのラインを狙ってのエロネタを数多く投入してきます。そのためけっこうキスとかもねちっこい感じだったり。この辺はCheese!の得意とする所でしょう。同じレーベルでも肉体関係の軽々ラインを超えてしまう作品が多い中、その手前で工夫を重ねて見せるその意気や良し。
 

童貞教師のふまじめな日常1-2
暴走するヒロイン、守る童貞。ヒロイン・和奏がコミカルに場をかきまわしてくれるので、常にアップテンポで楽しい雰囲気で物語は進んでいきます。


 なんて、ここまでで、なんだかエロネタばっかりかと思われるかもしれませんが、エロネタ多めとはいえしっかりと学園ラブコメしております。主人公が非常に弄りやすいキャラであるのもそうなのですが、何よりヒロイン・和奏が魅力的。基本的には好意を前面に押し出して甘えてくるタイプなのですが、変な所我慢して一歩引いたりする場面があったりと、「良い性格」が前面に出たキャラクター。単にコミカルだけでなく、シリアスで締めるところはビシッと決めると言いますか。個人的にはこういう子はドンピシャでして(笑)
 
 上記の通り、和奏がコミカルとシリアスで緩急を使い分けることが出来るキャラのため、物語が一本調子にならず、メリハリが利いています。それに加え、生徒と教師という力関係の中に、童貞という恋愛でのウィークポイントが投入されることで、場面に応じて互いの力関係が入れ違いに。この使い分けが上手いのか、一見出落ちっぽい設定でありながら、全く飽きの来ない内容となっています。


【男性へのガイド】
→Cheese!ですから、アレルギーある方はちょいとハードル高いかも。ただ同レーベル比ではクセ無く読みやすい作品だと思います。
【感想まとめ】
→個人的にはヒロインに持って行かれた感あるのですが。やるやらないでイチャイチャモヤモヤするコメディ、ということで割と楽な気持ちで読めるスタンダードな恋愛ものだと思います。こういう設定、お好きな方は是非。


作品DATA
■著者:わたなべ志穂
■出版社:小学館
■レーベル:Cheese!フラワーコミックス
■掲載誌:Cheese!
■既刊1巻
■価格:429円+税


■購入する→Amazon

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