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Tag [新作レビュー] 2013.08.08
1106299158.jpg木内たつや「男水!」(1)


シンプルなことほど
その人の人格が滲み出てくる気がする



■現在部員3名、同好会オチ寸前の男子水泳部。面倒見良い部長・秀平、無口天然のイイ身体・大樹、男前ハートのオネエ・ハルミの2年生3人は、部員確保を目指す新年度を迎える!そんな男水に入部届けを持ってきたのは、水泳初心者と、スポーツ万能カナヅチで…!?男子水泳部、ゆるっとガチっと活動開始!

 木内たつや先生のWeb連載作でございます。表紙とタイトルを見てもわかる通り、水泳部のお話でございます。描かれるのは、とある高校の男子水泳部。上級生達が抜け、部員は3名。新入生2人が入部しないと、同好会落ちという危機的状況にある小規模な部活です。「女子部の水着が見れる」「筋肉ムキムキになれる」などはしたない部活紹介でドタバタした結果、気弱な水泳初心者と、ナルシストでスポーツ万能なカナヅチの新入生2名を確保!晴れて「部活」として残れた中、新男子水泳部の活動がはじまります!というお話。


男水
学校のプール、夕暮れ、部員達。これからはじまる水泳の季節。懐かしい青春の匂いをギュッと詰め込んだ風景が、度々登場してきます。水泳は苦手でしたが、プールのある風景は好きなんですよねー。すごくノスタルジックな気持ちになると言うか。


 同好会落ちの危機にある小規模な部活ではあるのですが、部長の秀平はそこそこ早く、エースの大樹は関東大会出場も狙える選手であったりと、初心者揃いの弱小部というわけではないようです。またスタートは部員集めではあるのですが、一から部を作って行くようなお話ではなく、小規模な中でそれぞれに目標を持ちながら、和気あいあい・切磋琢磨するという類いのお話。スポ魂というほど熱くもないですが、ゆったり日常系かと言われるとそうでもない。個人競技がベースにあるので、一つの大きな目標ではなく、それぞれの能力に見合った目標設定となるあたりが、その要因なのかもしれません。経験値のある先輩に導かれながら、初心者が部に溶け込み、自分なりの目標を持って青春を送るというそのスタンスは、ヤマシタトモコ先生の「BUTTER!」が近いでしょうか。もしかしたらこれから恋愛要素も絡んでくるのかもしれませんが、現時点では内輪の男子の日常が送られていきます。
 
 部員それぞれが同程度スポットが当てられるバランスの良い話運び。メンバーそれぞれが、しっかりとキャラ立ちしている部分が大きいと思われます。部長は典型的なお人好しの優しい長男タイプ。エースの大樹は思考が読めない奇人・変人タイプ。メニュー考案等サポートに回るハルミはオネエ(けれど熱い)。新入部員の裕太は気弱な面倒見てあげたくなっちゃう弟タイプ。そしてもう一人の新入部員は勘違い系ナルシストだけど根はいいヤツという完全なネタ要員。それぞれが主張しすぎることなく、各話のテーマの中でのびのびと個性を発揮しており、キャラの不自然さすら自然に感じられるバランス感は絶妙の一言。


男水1
一番のお気に入りはハルミ先輩でしょうか。オネエながら一番アツい。このスポ魂感が好きです。


 Web連載でペース遅め(大体1年で1冊出れば良い方?)、かつこの雰囲気ということから、物語がスポ魂ものとして大きいところを狙ったりするような路線には向かわないと思われます。着地点がどの辺になるのか、そもそも花とゆめでサイド連載なので完結するのかという不安もあったりするのですが、本作であれば完結せずともそこまでストレス感じなさそうなので、その辺はあまり気にしないでおきましょう。男子高校生たちのやりとりを微笑ましく見守りたい、そんなあなたにお勧めの一作です。


【男性へのガイド】
→ちょいとキャラ強めですが、男子部の雰囲気って確かにこんな感じだったかな、という気もしなくもないです。ホモ臭さはまぁネタ的にはありますけれど、そこまで気になるものでもなく、読みやすい部類だと思っております。
【感想まとめ】
→木内たつや先生の作品の中ではこれまでで一番好みかもしれないです。続刊出ることには本編忘れていそうな感もありますが、追いかけたいですね。



作品DATA
■著者:木内たつや
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:花とゆめonline
■既刊1巻
■価格:429円+税


■購入する→Amazon

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