
あの能力が覚醒めるんじゃ…!
■超ツッコミ体質の高校2年生・小雪芹。彼は、かまってちゃん系にツッこむことだけはとても屈辱。そんな小雪に妙に絡んでくるのは、「暗黒破壊神」を勝手に名乗る、中二病男・花鳥兜。こいつにだけはツッコまないと固く誓う小雪だが、花鳥の想像を超えるふるまいに、思わず…。笑って笑ってときどきカワイイ。男子高校生コメディ!!
「フェティッシュベリー」(→レビュー)などを描かれている、亜樹新先生の、ジーンでの連載作でございます。タイトルはちょいと長い「ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます。」というもの。暗黒破壊神というちょいとベタな中二ワードが入っていることから想像つくかと思いますが、ファンタジーではなく、中二病を扱った学園コメディでございます。
主人公はタイトルの一人称になっている“ぼく”:小雪。かなりのツッコミ体質の持ち主である彼は、ツッコミ体質を拗らせてしまったのか、ツッコミ待ち・イジられ待ちな構ってちゃんが大嫌い。そんな小雪が最近頭を悩ませているのは、高校に入っても中二病が治らない・花鳥兜。自称・暗黒破壊神ミゲルの花鳥は、小雪のツッコミ体質に目をつけたのか、“ゲシュテーバー”と小雪を呼び、何かにつけて絡んでくるのです。何とかして花鳥を避けたい小雪ですが、想像以上の振る舞いに、どうしたって突っ込まざるを得ない…!というようなお話。

本人の中にゆるい設定はあるものの、世界観が広すぎて、細かい所は場当たり的&可変。そんな所にも、主人公は苛つく。
高校生の中二病患者を相手にしたコメディということで思い出されるのは「中二病でも恋がしたい!」でしょうか。あちらは恋愛メインでしたが、こちらは男の子ばかり登場するので、完全に学園コメディにフォーカスを絞った形での展開となります。変な格好(眼帯とか手袋とか普通にしてる)に変な言動(とりあえずわけわからんカタカナとか漢字とか出てくる)で、ミゲルくんはなかなかの中二っぷり。基本的に常に中二病は発動されているのですが、特に自分の分が悪くなった時は目を覆いたくなるような痛さ(苦しさ)でして、別に何もしていないのにこっちまでガリガリとライフを削られるような感じがします。
物語の登場人物は主に3人。主人公と暗黒破壊神・花鳥と、クラスメイトでゆるドSの月宮くん。基本的に花鳥が主人公を巻き込んで、そんな二人を月宮がニヤニヤしながら眺め、時に裏で操ったりするという構図。主人公の真面目な反撃に、花鳥は一切動じることがなく、さらに二人は月宮には絶対に敵わないという力関係であるため、主人公に降りかかる理不尽さの具合がすごいです。最初主人公視点で物語を読んでいたのですが、花鳥相手のコントロールできない感と、月宮相手に理不尽にコントロールされている感のダブルパンチで、結構イライラが(笑)よくよく考えてみると女性向け雑誌ですし、これは主人公視点で見るのではなく、第三者視点で男の子たちが絡んでいるのをニコニコと眺める作品なんだな、と。

この作品で面白いのは、花鳥くんの典型的中二病が痛いというだけでなく、主人公に対しても月宮経由で思春期独特の恥ずかしい部分をグサグサと攻撃されるところにあります。例えば女の子とメアド交換して、メール来ないかドキドキして待ってたりするところを、まんま突っ込まれたりとか。むしろ中二病よりこっちのがツラい感が。いや、ほんとに主人公に優しくないマンガですよこれは(褒め言葉)。
またオタク系のコメディ作品の特徴の一つであるパロディが満載。スラダンとか、まどマギとか、自分でもわかるネタがちらほらあったのですが、たぶん私が気づけていないだけで、他にもかなりのネタ数が散りばめられていると思われます。そもそも暗黒破壊神ってワードも、何かのパロディだったりするんですかね?それらに気づけたら、さらにこの作品が楽しくなるかも。
【男性へのガイド】
→可愛い女の子描けるのを知っているので、それが出てこない本作はちょいと男性への推し具合は弱くなってしまうものの、コメディなので基本読みやすいと思いますです。
【感想まとめ】
→亜樹新先生の作品って楽な気持ちで読めるかと思いきや全然そうじゃないっていう(笑)一歩引いたところから見ると楽しい学園コメディなのですが、一歩踏み入って読んじゃうとダメージ食らいますよ、ってな感覚のある作品でした。ネタ投入のペースはお見事。
作品DATA
■著者:亜樹新
■出版社:メディアファクトリー
■レーベル:コミックジーン
■掲載誌:ジーン
■既刊1巻
■価格:533円+税
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