
人がせっかく前向きに生こうとしてんのに
こんなん
ぜんっっぜん ちがう…
■同棲していた恋人に振られた大前有香、29歳。25歳の妹・すみ香と母親の住む地元・大阪に帰省するも、癒されるどころか鞭打たれ、ついには“母親命令”により妹と東京で同居することに。「さらぴんの生活、はじめよーやあ!」姉妹と母親、“おんなだけ”の家族物語、いざ開幕!!
先日2巻が発売されました。私は2巻が出たタイミングでようやっと読んだのですが、非常に面白かったので、今さらながらご紹介です。物語は、ヒロインである大前有香が同棲している恋人に振られる所から始まります。29歳、結婚し共に歩んでいくことを疑いもせず、自分の夢は諦めて、恋人の夢に懸けた。そんなさなかの、まさかの破局でした。どん底の状態で大阪の実家に戻りますが、母親は慰めるどころかむしろ檄を飛ばしてくる始末。「アンタはちゃんと東京で仕事せなアカン」…母親命令で、なぜか妹を連れる形で東京に戻された有香は、妹と同居して新生活をはじめるのですが…というお話。

30目前。恋人を失った時、自分自身の軸になるものが何もないことに気づかされる。襲いかかるのは、寂しさと不安感、そして焦燥感。
私の嗜好の問題なのかもしれないのですが、さいきんアラサー女子が恋人にフラれるなどして、辛い中再起をかけるみたいなお話が多いような気がしています。そんな主人公達に年齢が近づいていてきたからか、そのテのお話がやたら染みるようになってきまして。本作もそんなお話のひとつ。ヒロインは新生活をはじめるわけですが、目の前に恋人候補がいるわけでもなく、恋も仕事も引く手数多というわけでもなく、また簡単に再び夢を追いかけ始めるような年齢でもなく…と、すぐに何か新しいものに向かって動けるような状態ではありません。けれども「これじゃアカン」という焦りがあるから、しんどいながらもあれこれ取っ掛かりを探すわけで。この過程が不格好で、痛い。
ただそんな痛みの中で、ヒロインがひとりもがくばかりではありません。スパイスとなるのは、同居している妹の存在。25歳という若さに加え、あまり物怖じせずに飛び込んでいける心の強さを持っているので、割と自分の想い通りに事が運ぶタイプ。正反対の姉は、そんな彼女にときに苛ついたりもするわけですが、根底ではお互いを想い合っており、温かにつながります。常に仲良しでベッタベタというわけではなく、時にぶつかり合いながら、それなりの距離を保つ。このリアルさというか、関係性が良いのです。
てかねぇ、妹のすみ香が良い妹なんですよ。自由に振る舞っているようで、結構物わかりがよくて、引く時にしっかり引けるし、自分が守るべきものというものがちゃんとわかっている。どういう関係であっても、こういう子が近くにいてくれたらきっと色々助けられるんだろうなぁと思うのですよ。感情移入しがちなのは、どちらかというとヒロインの有香なんですが、どの子が好きかで言ったらやっぱりすみ香ですかねぇ。

物語の中心はもちろんヒロインなのですが、大阪に一人で住む母親にも、同居している妹にもそれぞれストーリーはあります。それぞれが物語を持っている中、おがたいに干渉し合いながら、それぞれの物語を進める。ストーリーがヒロインよがりになっていないから、物語に広がりもできて、よりリアルに映ります。あと大阪人なので、大阪弁なんですよね、当たり前ですが。この大阪弁というのが何やら親近感が湧くというか、心情が吐露されている感が伝わってきて、個人的にプラスポイントでした。
別に明るい話題のある話でも、大事件のある話でもないのですが、キャラ達の一挙手一投足がみなみなリアルで、終始目が離せませんでした。1巻を読んだ時点では、「ん、もしかしたらこれ面白いかも…」ぐらいの感触だったのですが、2巻読み終わった頃には「面白い!」となったので、是非2巻一気読みをオススメします。恋愛もちょいと複雑に動いてくるんじゃないかという予感もあり、3巻が今から楽しみですね。
【男性へのガイド】
→文字通り女性メインの物語なのですが、個人的にはストライク。無駄話の管理人の人も面白いって言っていたのですが、正直二人が良いからって男性皆々良いかと言われると正直わからんです。
【感想まとめ】
→面白かったです。個人的に、今年結構上位かもしれません。派手さもなく、埋もれてしまいがちな印象のある作品ですが、是非ともサルベージしたいところです。オススメ。
作品DATA
■著者:鳥飼茜
■出版社:講談社
■レーベル:BE LOVEコミックス
■掲載誌:BE LOVE
■既刊2巻
■価格:581円+税
■購入する→Amazon