
姫子
また恋におちちゃった
■最近2巻が発売しました。
日本有数の財閥・恋ケ窪家のご令嬢の姫子。姫子のそばにいる後輩で、彼女の唯一の友人の修二。ロリータファッションのウザガールと、クールドS眼鏡の高校生は、とある特殊な関係で結ばれていて…。恋人でもなく、主従でもなく、そんな二人の秘密とは…。
ジーンで連載されている作品でございます。最近2巻が発売されました。2巻が平積みされていて、表紙に目をひかれたので手に取ってみたところ、結構面白い。ということで、ご紹介です。
物語の主人公は、とある高校に通っている男の子・修二。一見普通の眼鏡の高校生なのですが、彼にはちょっと特殊なお友達が…。それが、日本有数の財閥の令嬢である、恋ケ窪姫子。ロリータファッションに身を包むゴーイングマイウェイな彼女の唯一の友達が、修二なのです。そんな二人が抱える秘密…それは、姫子が殺人鬼に恋してしまう「狂人偏愛(マッドフリーク)」であること。修二は、姫子の友人であると同時に、姫子が引き寄せられた殺人鬼から彼女の身を守るボディーガードの役目も務めているのでした。今日も今日とて、どこから嗅ぎ付けてくるのか、姫子は殺人鬼に恋をするのですが…というお話。

この勢い。恋する女の子は誰にも止められない。ちなみに姫子には、自分がマッドフリークであるという自覚はありません。そのため、修二に“守られている”という自覚も当然なく、あくまで修二は友人であり、恋愛相談の相手として認知されています。だから緊張の場面もこんな感じに。
高校生のボディーガードが、シリアルキラーと対峙して戦うというお話。こういうのって得てして警察が絡んでいたりするものなのですが、本作の場合そういう組織は絡まず、財閥というバックがそれに取って代わる形になります。また逮捕だ成敗だなんて勧善懲悪的感覚はあまりなくて、主人公の修二がただただ破壊衝動を持つ悪者をぶちのめしたいという原理の元に行動するという。それを効率よく行うには、本能的にシリアルキラーを探し出して惹かれてしまうという、姫子のそばにいるというのが、うってつけになるわけです。しかもお誂え向きに、姫子はいったんスイッチが入ったら、止められないほどに妄想・暴走するという困ったちゃん。姫子が恋におちる→修二が成敗する→姫子が別の人に恋におちる…というサイクルで、物語は回っていきます。
元々スタートが、狂人偏愛のヒロインとその恋愛相談&ボディーガードという関係性なわけですが、そういう特殊なつながりが続く中で、それぞれの感情にも変化が見られていくと思われます。匂い的には恋愛の方面に発展することはあまりなさそうなのですが、正直どうなるか想像つかず。またシリアルキラーを倒して行く中で、とある大きな殺人組織の存在が明らかになるという、ちょいと中二的な設定も登場して、物語は広がりを見せていきます。
正直細かいところで色々と突っ込み所はあるお話なんですよ。けれどもこういうレーベルのこういう作品って、そういうの突っ込んだら野暮でしょう?むしろ個人的には、物語を大きな枠(壮大に)で描こうとして、回収しきれない(もしくは浅い)まま終わっちゃうのかどうかの方が重要でして。本作はそういう意味では大きすぎず浅くもなく、ちょうどいい枠組みの中でそれぞれのキャラが良い塩梅で収まっていて、現時点で非常に安心感があるのです。背景には大きな意思というものが働いているのかもしれないのですが、少なくとも表面的には、各個人が所属する組織・役割の中で、自分の信念の元に行動していて、かつそれが意外にも整然と物語に組み込まれている、そういったすっきり感があります。

さて、また個人的にオススメしておきたいのが、1巻ラストにて登場し、レギュラー化するキャラクター・黒瀬小夜ちゃん。何かにつけて死にたがる、“死にたガール”。ヒロインの姫子もかわいいのですが、この子も見ため非常にかわいい。元々とある殺人鬼に殺されたいと願っていたのですが、それが叶わず、何故か最終的に「修二からの愛によって死にたい」という歪んだ結論に達し、以来修二につきまとうようになるという、こちらも姫子に負けず劣らずの残念女子。ちなみに本気で死にたいとは思っておらず、いざ身の危険が降りかかると、全力で逃げようとする模様。
というか、2人の女の子に限らず、自己顕示欲の強い執事だったり、スピリチュアルにはまっている執事だったり、ガスマスクの女がいたりと、主人公の周囲は基本変な人だらけ。そんでもって、普段は一般人として社会に溶け込んでいる殺人鬼が一番まともに見えるという、不思議な現象を味わえることができます。というわけで、本作をどういう位置付けの作品として捉えるかというときには、基本的に変人巻き込まれ系のコメディだと思っておけばOKなんじゃないかと思うようになりました。
妙にポップで、ホラーになりきれていないアンバランスさ。どちらかに突き抜けたらかなりキャッチーになりそうなのですが、そうするとただのラノベ的作品に落ち着いちゃって色がなくなるのか。可愛らしさと不気味さが共存するという意味では、本作自体がゴスロリっぽい感覚があります。また絵柄は美麗で、カラーページなんかは結構見入ってしまいます。女子二人の巻き込み具合と可愛らしさからすると、男性向けの感も非常に強い(ただ、主人公が女性向け作品っぽい資質の持ち主というだけで)。なんだかとっても気になる作品に出会いました。オススメです。
【男性へのガイド】
→先述の通り、主人公以外の配置は男性向けだとしても違和感ない内容です。
【感想まとめ】
→自分のアンテナに合ったのか、妙に気になって、読んでみたら「やっぱり面白かった」となった作品。こういうお話が好きな方は是非ともチェックを。
作品DATA
■著者:成田駿、おそら
■出版社:メディアファクトリー
■レーベル:ジーンシリーズ
■掲載誌:コミックジーン
■既刊2巻
■価格:533円+税
■試し読み:第1話