
体中くすぐられているようだった
つま先から
てっぺんまで
■高校に入学したばかりの卯多子は、身長が172センチあって、外見は目立つけど性格はひかえめ。照れたり恥ずかしくなったりすると、大きな耳がすぐ赤くなる。隣の席になった人なつっこい性格の原田のことが気になっている。「仲よくしたい」とストレートに言ってくる原田のペースに少し戸惑うけど、ドキドキする毎日が楽しくて……。
「やじろべえ」(→レビュー)の山川あいじ先生の新連載です。前作では血のつながらない父娘の絆を描いたファミリーテイストの強い作品でしたが、今回はド直球での青春恋愛ものですよ。ヒロインは、172センチと非常に長身の卯多子。となり町の高校に入学したばかりで、同じ中学の子もおらず、大人しくて恥ずかしがりな卯多子は不安強めで新生活を迎えます。そんな中、隣の席になったのは、人懐っこい性格の持ち主である原田。お昼に購買にパンを買いに行くとき、教科書を忘れたとき、触れあう時間が増えると共に、彼のことがどんどん気になるように。「勘違いしちゃうから」そう牽制しても、「勘違いと思わなくていいから」なんて返されて…!?
何気に山川あいじ先生の恋愛ものを読むのは初めてかもしれないです。こんな赤面真っ盛りでくすぐったいお話を描く方だったのですね。物語の筋書きは今のところ非常にシンプル。女の子が高校に入学して男の子に出会い、恋をして、付き合うようになり…というガールミーツボーイなお話。ただそんなシンプルな筋書きを、独特の情景描写で丁寧に描き出し、なんともニマニマできるお話へと昇華させているんですよ。

次々訪れる赤面パート。お互い赤面しがちなところが余計にニヤニヤ感を増しています。自転車で二人乗りとか、鉄板のシーンもあったり。
物語を特徴付けているのは、ヒロイン・卯多子のその容姿・性格に依るものが大きいと思います。卯多子は172センチという高い身長に加え、耳が大きく(なので髪を伸ばして隠している)、恥ずかしいとすぐに赤くなるという特徴が。つまるところ、外見的なコンプレックスを2つ抱えており、自分に自信がないという典型的なヒロインなんですよね。この内気な性格ゆえか、特に男の子相手での口数が少なく、喋ったとしても言葉選びがたどたどしいという。台詞が結構細切れで、読んでいて要旨がわかりにくいのですが、それが初々しさを助長しており、非常に微笑ましいのです。走るのは速いのですが、思考もどちらかというとスローなため、結構同じ段階で行ったり来たり悩んだり。そんな様子もまた微笑ましい。
相手役の原田くん。考えたことをそのまま言っちゃいがちな性格らしいのですが、結構物腰柔らかで、優しく穏やかな性格。本当に言っちゃいけないことはわきまえていて、相手の話をちゃんと聞く余裕もあり、見た感じかなりスペック高めですよ!ヒロインとの相性も良く、穏やかな雰囲気の中、微笑ましい光景を作り出します。さらに印象で言うと、本心で何考えているのかよくわからない部分もあるのですが、山川あいじ作品の主人公以外のキャラって基本的にそんな感じでしたね。

また山川あいじ先生の作品といえば、友情も切っては切れない要素の一つ。今回は原田と同じ中学だった小さな女の子が、元気いっぱい親友的なポジションで動き回ります。内気な子が恋愛を上手くすすめるには、友達の協力が不可欠だったりするのですが、まさにその役目を一身に背負ってくれているのが彼女。原田と卯多子の関係も微笑ましいのですが、こちらもまた楽しげで癒されるんですよねー。今はまだ子供っぽい表情ばかりの彼女ですが、いつか恋に落ちて大人っぽいもの鬱げな表情とか見せたりするんだろうか…とワケのわからん想像を働かせてしまったり。
さて、物語は今のところ大きな障壁もなく、イージーモードでの進展。いや、リアルでの学生男女の恋愛って本当はこういう感じであるはずなんですけれど。恐らくこれから様々な出来事が起こり、時に二人の仲に楔を打ちかねないこともあるのでしょう。が、そんな中二人がどうやって対話し切り抜けていくのか。なんだかとても安心感のある二人の行く末を、この先も微笑ましく見守っていきたいと思いました。オススメです。
【男性へのガイド】
→くすぐったくて瑞々しい恋愛ものをご所望の方は、うってつけだと思います。
【感想まとめ】
→こういう恋愛方面の感情豊かな物語も描けるのですねー。独特の雰囲気の中にも、普遍的な感情・展開が落とし込まれており、他ではなかなか味わえない感覚を楽しむことができました。2巻も楽しみです。
作品DATA
■著者:山川あいじ
■出版社:集英社
■レーベル:別冊マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■既刊1巻
■価格:400円+税
■試し読み(第1話)